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2023年12月8日金曜日

海洋地形学の物語 50周年

大名作「Close to the Edge ~ 危機」に続く6枚目のスタジオ作品が、12月7日にリリース50周年を迎えました。

この作品はいまだに物議を醸すというか議論を呼ぶというか、話題が尽きないですね・笑

私は…どちらかというと…今は殆ど聴く事がありません。
ただ、聴かないといえば3rdから「トーマト」まで同様に、今はどれも殆ど聴きません。

1st, 2ndは気軽に聴けるので、「オールディーズ」括りのプレイリストにけっこうな曲数を入れていました😊

3rdからトーマトは、十代の頃にそれこそレコードが擦り切れるほど聴いてきたので、今敢えて聴く気にならないという感じでしょうか。

その中で敢えて格付けしてしまうと、本作はやはり下の方になってしまいます。
繰り返しますが、「若い時に擦り切れるほど聴いてきて」の、個人的評価ですよ。

もしライヴのセトリに本作から2曲以上含まれていたら、たぶん行かないと思います。
貴重なライヴの時間を、40~80分も本作に費やされてしまったら、と思うとゾッとします。
「神の啓示」か「儀式」どちらか1曲だったら、或いは抜粋で「Leaves of Green」あたりを演ってくれたら嬉しいですけどね。

3rd~危機までは、絶対的存在として脳内記録されていて、Relayerと究極はそれに次ぐプライオリティがあります。正直に言えば海洋もトーマトも、めちゃめちゃ記憶・記録されています。
この辺りが複雑なファン心理とでも言うんでしょうかね~😅

上記までで「ドラマ」を外したのは、クラシック・イエスの中で今も聴く機会が多くあるからです。
私のリアルタイム初作品は「90125」なのですが、ドラマは私の中でとても不思議な存在です。


話を海洋に戻すと、ジョン&スティーヴのアイディアの源泉となったパラマハンサ・ヨガナンダ「あるヨギの自叙伝」を数年前に5千円近い価格で買いましたが、途中で面倒になって読了できていません…。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」ジャケにもひょっこりコラされているグルなんですよね。
リックのカレー事件は、このコンセプトに対するブラック・ジョーク的な意味もあったのかなぁと邪推してしまいます・笑


「こわれもの」時代のアウトテイク「All Fighters Past」

最近知ったのですが「こわれもの」時代に、既に一部の元曲となったものを作っていたんですね。「神の啓示」の終盤近く、ジョンのゆったりした歌が聴きどころのパート。
その原曲はビルの硬質なドラムがステキな疾走感溢れるロックで、海洋の一部となったバージョンとは全く異なる印象ですが、メロディと歌詞はそのまま転用されています。
そしてリックのオルガンによるバッキングは、リズムをほんのちょっと変えて「シベリアン・カートゥル」で再利用されています。
ライノ・リマスター以降の再発は全く手にしていないのですが、スティーヴン・ウィルソン・リミックス・バージョンのBTらしいですね。


2024年のツアー・スケジュールが続々発表されていますが、日本はまだ出ていません。
Classic Tales~と銘打たれているので、海洋演っちゃうのかなー予感もしますが、2024年はRelayer 50周年だから、コロナで中止になったRelayer再現でお願いします!

2023年5月20日土曜日

Yes新作 Mirror to the Skyを聴いた

アルバムのリードトラック2曲「Cut from the Stars」「All Connected」を事前に何度か聴いて、イメージはできていました。2021年の前作「The Quest」に近い、なんとなく良いんだけど、全体的に印象が薄い、そしてSteve Howeのソロ作に近い、良くも悪くもアットホームな感じ、とでも言うんでしょうか…。

前作のリードトラック「The Ice Bridge」は、イントロがELPぽいとか、作者の一人Geoff Downesが、ライブラリ上の手違いで他者の作品を誤用してしまったとかあったけれど、非常にフックの強い、期待感のある1曲ではありました。

その所為で、アルバムを通して聴いた時に、肩透かしを食らってしまったというのはありましたが。

本作はそんな事もなく「ああ、こんな感じね」と、変な意味で『安心できる』仕上がりです。
トピックとしては…
・前作に続き、オーケストラ導入
・プロデュースも前作に続きSteve Howe
・リード・トラック2曲はBilly SherwoodとJDの共作(All~ではSteveもクレジット)
・Geoffは作曲に殆ど関わらず、演奏面でも目立たず
・作詞・作曲にJon Davison大活躍
・CDの2枚目に相当する3曲含め、Steve Howe作の割合高い

個人的にはあまり歓迎できない要素も少なくありません。これまで現ラインナップに批判的なSNSコメント(ほぼ海外)に対して否定的だった私ですが、今さら彼らの主張が分かる気がしてきました。ジョーーーーン(A)、カームバーック!!!

Billyと新メンバーJay Schellenについては好意的に見られますが、Steveがイニシアティブを持ち続ける事と、JDにクリエイティブ面を任せる比率が高い事、Geoffが働かない事が、今のYesをつまらなくしている大きな要素に思えてなりません。

Steveは1970年代黄金期のYesにおいて、重要なソングライターだった筈なんですが、作曲にプロデュースにと活躍している「The Quest」「Mirror to the Sky」の2作に関しては、微妙な気持ちにさせられます。彼のソロ作を聴いているような、ちょっと欠伸が出そうな感じ。
やはりJon Andersonという相棒がいたからこそ、当時はSteveの素材がより輝いたのかもしれませんね。
最近読んだJon Andersonのインタビューで、記者が「私にとって、あなたとSteveはProg界のジャガー&リチャーズ。コンビ復活を望みます」と懇願するように伝えていたのが心に残っています。

70年代もギター弾きまくりだったけれど、同時にベースもキーボードもドラムも同じくらい主張が強かったから、出来上がった音楽がスリリングだったのだと気付かされます。今のメンバーじゃキャリア差もあり、そうはできんのでしょう。

通算23作目のスタジオ・アルバムという事ですが、数えてみると合わない…。
ABWH、スタジオ作とライヴ混合のKeys to Ascension 1&2、Buggles Yesを再現するために理不尽に追い出されたOliver Wakemanが編纂したミニ・アルバム「From a Page」なんかも含めるのかな??

1. Yes(1969)
2 Time and a Word(1970)
3.The Yes Album(1971)
4. Fragile(1971)
5.Close to the Edge(1972)
6.Tales from Topographic Oceans(1973)
7. Relayer(1974)
8. Going for the One(1977)
9. Tormato(1978)
10. Drama(1980)
11. 90125(1983)
12. Big Generator(1987)
13. Union(1991)
14. Talk(1994)
15. Open Your Eyes(1997)
16. The Ladder(1999)
17. Magnification(2001)
18. Fly from Here(2011)
19. Heaven and Earth(2014)
20. The Quest(2021)
21. Mirror to the Sky(2023)

23作目とするための候補…(何だコリャ・笑)
・Anderson Bruford Wakeman Howe(1989)
・Keys to Ascension 1(1996)
・Keys to Ascension 2(1997)
・keystudio(2001)
・Fly From Here - Return Trip(2018)
・From a Page(2019)

2023年3月11日土曜日

ほっこりできる「究極~Going for the One」セッション1976


YouTubeにアップされているフル・バージョンは、なんと6時間58分という長さで、流石にそれを開くのは躊躇ってしまいました。

上に貼ったのはその冒頭、約1時間分のPt1。
彼らの幸せな時間を垣間見られて、とてもほっこり、そして爆笑させて貰いました。

とにかくRick Wakemanが最高です。
現在もイギリス本国では、コメディアン要素の強いタレントとしてTV出演しているというだけあって、若かりし頃からセンス・オブ・ヒューモア炸裂です!

めちゃめちゃシリアスな名曲「Awaken~悟りの境地」のクライマックス(上記映像の16:50あたり)、パイプオルガンとクワイアの荘厳な響きに合わせ、肉の塊(ビーフジャーキー?)を無表情で頬張り、口に押し込んだり。
これは当時Rick以外のメンバーが菜食主義だった事に対しての、いたずら心(皮肉、嫌味と言うには、カワイイ)だったのでしょうか(笑)。

ケッサクなのは、最後の約5分(50:22あたりから)。「Going for the One~究極」のイントロに合わせ、Steve, Chris, Alanが揃ってピアニカを吹き、Rickがその指揮者をやっている場面。4人とも真面目にふざけているのが、とても微笑ましく、サイコーに面白い!
レコードにはピアニカの音なんて入ってませんでしたよね??(笑)

その直前の場面(43:34あたり)では、とても珍しいSteveとChris二人による、息抜きアコースティック・デュオも!
Bob DylanとEverly Brothersのメドレーを、よれよれコーラスで弾き語っています。
途中でSteveがギターをChrisに任せ、本に目を落とし、ページをめくりながらテキトーに唄ったりと、リラックスしたじゃれ合いのようで、とてもレアな一幕を楽しめました。

Steveの自伝を読みましたが、2017年ロックの殿堂入りの際のお下劣&長尺スピーチ含め、Rickに対してかなり攻撃していましたし、Chris, Jon, Alanに対してもところどころでチクチク言っていたのは、なんとも寂しい限り…。
離婚する夫婦も沢山いるわけですし、こんな蜜月が永く続くのは逆に稀なのかもしれませんね。

この頃はまだ、Jon以外は20代だったんですよね。
私はYesのYも知らない、小学1年生でした。

2023年3月10日金曜日

Yes / Cut from the Stars 20230310新曲ですよ


うーん…。
Billy SherwoodがChrisらしさを一生懸命再現しているのかな。
ファースト・インプレッションはそんな感じです。

2023年3月9日木曜日

Yes New Album / Mirror To The Sky


5月19日に新作リリースのアナウンス!
前作「The Quest」が2021年10月でしたので、約1年半ぶりというハイペースです。

少し前に専属画家(とか言っちゃって😅)のRoger Deanが、FaceBookで新作用アートを動画で公表し、一気に盛り上がりを見せたのですが、こんなに早くアナウンスされるとは。
定番のロゴは70年代のようなシンプルなグラデーション、タイトルはClose to the Edgeを彷彿とさせながらも、よりシンプルに整理されたバブルフォントでデザインされています。

そして明日3月10日には、先行トラックの配信が。
(現時点で、曲名は未発表のままです)

ライヴをメインに長年サポートを務めていたJay Schellenを、正式メンバーに迎えての初の作品となります。

スタジオ・アルバムとしては2014年の「Heaven and Earth」がChris Squire、2021年の「The Quest」がAlan Whiteと、続けてクラシック・メンバー達の遺作となってしまいました。
最後に残るSteve Howeは、70年代から続けている菜食主義のおかげでしょうか、その容貌に反して(失礼!)バリバリ健康そうですが、元気に頑張って欲しいものです。

オリジナル・メンバー不在のラインナップに、各SNSのオフィシャル・アカウントには、未だ否定的コメントが多いですが、私は現在のラインナップに不満はありません。強いて言えば、スタジオ盤の魅力は弱まっていると感じますが、最近足を運んだライヴはとても満足できるものでした。
もはやクラシックの楽団のように、ブランドとして続けていっても良い気がしてきています。

2023年2月28日火曜日

実はそのままでは弾けないRoundabout(スタジオ・ヴァージョンのお話し)

 Roundabout、良いですよね~。
もう聞き飽きたなんて人もいるかもしれませんが、私は初めて聴いた約40年前から、Yesナンバーではイチバン回しているかもしれません。

Yesファンの多くは、フェイヴァリット・ナンバーに「危機~Close to the Edge」「悟りの境地~Awaken」「燃える朝焼け~Heart of the Sunrise」などを挙げ、もしかしたら私くらいの世代(アラフィフ)だと「ロンリー・ハート~Owner of a Lonely Heart」という人も少なからずいるかもしれません。
私も全部好きです!

「Roundabout」は、Yesのアンセムとも言える名曲ですが、どういうワケかフェイヴァリットに推すのが少し気恥ずかしい風潮もある気がしています。
ですが、私は声を大にしてRoundaboutが大好きだと言いたい(笑)。

その理由は…

1)見事なまでの起承転結。

2)その後、数々の名曲を世に送り出したAnderson / Howeコンビの初出曲。

3)アコギが基盤の曲なのに、Chris Squireのブリブリ・ベース名演。

4)スネアとバスドラムの、タイミングをずらしたトリッキーな演奏。

5)Rick Wakemanが参加して初めて制作セッションに携わった1曲。
 (もう1曲はHeart of the Sunrise)

6)コーラスワークが素晴らしい!(ラストの多重録音もステキ)

特に(4)のBill Brufordのドラミングの魅力は抗い難く、甲高いスネアが「そこは入れへんのかい!そこは入れるんかい!」となって、いつ聴いても新鮮な気持ちにさせてくれます。
中間部では性急なサンバ的展開を繰り広げ、ポリリズムのような複雑さをサラッとこなしているのもアツい!
世に出ているライヴ・バージョンの殆どはAlan Whiteなので、Billを堪能できるRoundaboutのライヴ版は本当に少ないです。


短命に終わったスピンオフ、ABWH。Billが奏でるFragileとCTTEに涙。

さて、タイトルについてなのですが、スパニッシュなイントロ後の最初のギター・リフは、全てアコースティック・ギターのハーモニクス音(倍音)によって奏でられています。
問題のコード進行は以下2パターン

1)メインリフ
Em / F#m / G / F#m / G / F#m / Em

2)ブリッジ(Gメジャーのサビ前)
Am / Bm / C / Bm / C / Bm / Am


上記どちらも全てのコード(3音)がナチュラル・ハーモニクスで鳴らされているのですが、1本のギターでそのまま演奏するのは不可能なんです。
Emは普通のチューニングで12フレットで出せますが、他のコードは全てチューニングを変えないと出せません。
(1)のGもハーモニクスで出せますが、3音の高低配列で言うと、正確ではありません)

50年以上前、現代のようにデスクトップでパパッとできるような事ではありません。
おそらくSteve Howeが1ストロークごとにチューニングを変えて鳴らしたのを録って、後で編集したのではないでしょうか??
テープの切り貼り職人とも言われた Eddie Offord (Engineer / Producer)の成せる技だったのかもしれませんね。

Steveはライヴにおいてメインリフのみ、12フレットの123弦、7フレットの234弦、12フレットの234弦(または5フレットの234弦)で代用していますが、音の配列が異なるし、7フレットのハーモニクス音はF#mではなくDなので、スタジオ・バージョンとは異なる響きになってしまっています。
(2)に至ってはレギュラーチューニングでは全く出せないので、普通のストロークで弾いていますね。


Steve Howe本人によるレクチャー。かなり昔の映像ですが、やっつけ感(笑)

後のヴァースでは普通のコードストロークで弾いていますが、どういうワケかコードを変えています。

Em / F#m / G / F#m / G / F#m / Em

が本来の進行で、特に変調している訳でもないのに、響きが似ている下記で弾いています。

Em / A / Bm / A / Bm / A / Em

Trevor Rabinは、通してEm / F#m / Gで弾いていて、音としてはそれでも違和感はありません。(彼の場合は、Steveのスタイル自体を壊すので、それが違和感ですが…)

この辺りはきっと、Steveが練りに練って作ったんでしょうね。
ギター・コードにちょっと耳を澄ませるだけでも、奥が深いRoundabout。

最近は各楽器の音だけを抽出したYoutubeコンテンツもいろいろアップされているので、時間がある時に改めて向き合ってみようと思います。

Bill(ds)→Chris(B)→Steve(G)→Rick(Key)→Jon, Chris, Steve(Vo&Cho)
の順番で各パートだけ聴けます♫

2023年1月8日日曜日

リアルタイムと後追い~中編(1990年代)

 1980年代の中~後期は、私も十代後半に差し掛かり、音楽の趣味がかなり固まった時期でした。アルバイトをしてコンポを揃え、ブリティッシュ・ロックの旧譜を集めるようになりました。フェルナンデスの安いギターを買って、耳コピを始めたり、少しするとパーツを買い集めて改造したりもしました。その時期の「後追い」は後編で纏めますので、先に少し飛んで1990年代のお話しをします。


先ず私はロック聴き始めにASIAファンになり、1983年の再結成以降、ガリゴリのYesファンになりました。両バンドのファンになったという事は自然と「Steve, Yesに戻らないかなぁ」となるわけです。コツコツとレコードで揃えたYes名作群には、全てSteve Howeがいましたから、その思いは強くなるばかり。ふたつ前のエントリーで書いた通り、1990年のAnderson Bruford Wakeman Howe来日公演は、東京と横浜の全てに行ったほどです。

その直後のUnion事変で大きく失望し、「Yesはもういいかな…」と思うようになっていました。(とはいえそう簡単に離れる事も出来ず、Union@武道館には行きましたし、アルバムもずっとフォローし続けていますが)
せっかくFragileとClose to the Edgeのメンツ80%が揃って、その上Tony Levinもパーマネントでサポートしていて、次作「Dialogue」も完成間近というのに、

ナニしてくれちゃってるの、Anderson君⁉

てなモンで、当時のRick Wakemanの心境そのまま、Unionは正しくOnionだったのです。

というワケで、90年代はプログレ後追いのプライオリティが自ずと低くなり、同時代の音楽を意識高めに聴くようにした10年間でした。後追いも、ちょっと趣向を変えた時期でもありました。


Ride / Seagull(1990)
UKインディーズはパンクが勃興した1970年代後半からあったそうですが、私が意識して向き合ったのは、Rideが初めてだったと思います。英インディーレーベルでは大手のCreationからデビューしたバンドです。自分の靴を見るように下を向いたパフォーマンスからShoegazerという1ジャンルの呼称までできました。
このビデオは再結成後の最近のものらしく、皆いいオジサンになっています。私も同世代なので、同じくオジサンになりました。


Blur / Bang(1991)
彼らもインディーズのFood Recordsからデビューしましたが、後にブリットポップの雄としてOasisと覇権を争い(というかメディア側の勝手な印象操作でしたが)、更には米オルタナティブ・ロックに接近したりと、音楽性を柔軟に変化させていきました。
1st「Leasure」の頃は、シューゲイザーのノイズと、ダンサブルなマンチェスター・サウンド(Happy Mondays, Stone Rosesなど)を合わせたような、ウマい音を出していました。
次作「Modern Life is Rubbish」から始まった彼らのブリットポップ期に、Peter Gabriel時代のGenesisと重ね合わせて見る事が多くありました。
中産階級のお坊ちゃまで、賢くヒネていて、意識的に英国臭くしているところとか。フロントマンがイケメンなのにかなりハッチャけてるトコとか、ギタリストが黒縁メガネで演奏がトリッキーなトコとかも(笑)。

My Bloody Valentine / Only Shallow(1991)
シューゲイザーのラスボスが彼らMBVでした(The Jesus and Mery Chainと双頭ですね)。このアルバム「Loveless」は、もはや説明不要の90年代の超名盤。私も発売日に買って、何度も何度も繰り返し聴きました。敢えて一言で説明すると「ギターノイズのウォール・オブ・サウンド」でしょうか。ダビングしたテープを車でかけていたら、同乗していた当時の彼女に「このテープ伸びてるの?」と言われました(笑)。


Nirvana / Smells Like Teen Spilit(1991)
この頃は購読する音楽誌も変わって、ロキノン、クロスビート、ミュージックマガジンなどになっていました。「Nevermind」が新譜レビューに載った際「売れそうな殺伐」というサブタイトルで書かれていたのを思い出します。まだグランジという言葉が無かった、もしくは日本にまで届いてなかった頃で、Sonic YouthやDinasour Jr.など米インディーズの先輩たちと共に「殺伐ロック」とか呼ばれていました。当時私は埼玉の小さなCDチェーンの店員をやっていたのですが、洋楽を担当していた先輩が「Nevermind」を1枚も初回オーダーしておらず、こっそり(控えめに)3枚バック・オーダーしたのを覚えています。それもあっという間に完売してしまい、次回入荷まで相当時間を要してしまいました。


Faith No More / Midlife Crisis(1992)
ミクスチャー・ロックと言われた彼らも実は歴史が長いようで、バンドの始まりは1979年にまで遡るとか。1980年代、10代の頃にプログレを知り、70年代の音楽を漁り始めた私ですが「本当の意味でのProgressiveってなんだろう?」と素朴な疑問を感じ始めていました。
パンク、メタルから、ファンク、ヒップホップまで内包した彼らの音楽は、その一つの回答だったと思います。
「中年の危機」と題されたこの曲は、今も聴き続ける数少ない90’sナンバーのひとつです。

nomeansno / 0+2=1(1991)
本作は何故買ったのか全くもって解らないのですが、大当たりだった1枚です。
カナダのハードコア・パンク・バンド5作目。実は彼らも、70年代末から活動を始めています。音楽もビジネスも肥大化した恐竜バンドへのアンチテーゼであったUKパンク勢と異なり、彼らも上記のFaith No Moreも、プログレからの影響を受けているところが実に興味深いです。まぁ大体、見え隠れする要素はヘヴィー&ダークなKing Crimsonなんですけどね。


Chemical Brothers feat. Noel Gallagher / Let Forever Be(1999)
OasisはアルバムもEPも結構買っていた私ですが、実はそれほど好きではありませんでした。あまり、というか殆ど聴き込んだ覚えもないほどです。
ですが、ノエルとケミカル・ブラザーズのコラボは、いつも好きでした。不思議なものです。

David Bowie / Dead Man Walking(1997)
ドラムンベースを大々的に取り入れたアルバム「Earthring」、けっこう聴きました。というかTin Machineがポシャってソロ活動に復帰してからの作品は、どれも高クオリティだったボウイです。70年代のように時代を先導する気負いもなく、その時々の興味の赴くままに流行を取り込んでいく様もまた、カッコよかった。

Metallica / Enter Sandman(1991)
まさか自分がメタリカを聴く日が来るとは!そう思った1991年は洋楽が大豊作で、本当にリアルタイムで体験できたのが幸せな年でした。高校生の頃(80年代中~後期)、スラッシュメタルとしてのメタリカが大好きな友人がいて、遊びに行くと部屋で大音量でかけて直ぐにヘドバンするのを傍目に「バカだなー」と思っていただけに、この曲が入っている通称ブラック・アルバムは、アンチ・メタルも巻き込んだ大傑作だったと思います。
彼らはLou Reedの遺作となった「LuLu」でもコラボしていて、本当に底が知れないモンスターです。

Yes / Open Your Eyes(1997)
Yes好きの端くれとして、90年代の彼らも取り上げなくてはなりません。この曲を収録した同名アルバムは著しく評価が低く、多くのファンやライターからも一番の駄作扱いを受けています。「Drama(1980)」のように、低評価が覆る事も無さそうですが、私は好きな1枚です。
90年代の、その前の作品群「Union(1991)」「Talk(1994)」「Keys to Ascension 1&2(1996, 1997)」には、届けられるごとに彼らへのロイヤルティを削られていきました。
元々ベースのChrisと、長年YesをサポートをしていたWorld TradeのBilly Sherwoodのプロジェクトだった素材を、Yesとしてまとめ上げたのが本作ですが、タイトに若返って、コーラスワークはいつにも増して分厚く、サウンドプロダクションも90年代らしく、なかなか良い作品だと思います。
全くの余談…。このOpen Your Eyes、シングルカットもされていますが、Steve Howeが両方に関わっているというところで比較してしまうと、ASIAの同名異曲(1983)の方に軍配が上がりますかね~。

Steve Hackett / Rise Again(1999)
この少し前に出した、過去に在籍したGenesisをセルフカヴァーした「Genesis Revisited(1996)」が話題を呼び、オールスターを引き連れての初来日も果たしたSteve Hackett(元Genesis)の「Darktown(1999)」より。
緑がかったモノクロームの墓地がジャケットという、悪趣味なアートワークは、本作の重要な要素ではあるけれど一旦置いといて、見過ごしてはならない90年代の名盤の1枚だと思います。
初期のソロ作から一貫している幽玄的な曲、ダークでアグレッシヴな曲から、ブレイクビーツといった流行まで取り入れていました。
このRise Againは、最近の作品にも通じる、明るく疾走感のあるライヴ映えのする名曲。近年のライフワークとなっている「Genesis Revisited tour」でも披露されていました。

Genesis / Carpet Crawlers 1999(1999)
初期Genesisのライヴや未発表音源を編纂するにあたり、90年代まで活躍したTony Banks(key,g), Mike Rutherford(b,g), Phil Collins(vo, ds)に加え、1970年代にグループを去ったPeter Gabriel(vo)とSteve Hackett(g)も一堂に会しました。それがきっかけとなり、名作「The Lamb Lies Down On Broadway~眩惑のブロードウェイ(1974)」から、この1曲がリメイクされました。プロデュースはTrevor Horn。メインボーカルはPeterで、コーラスおよびクライマックスの1節をPhilが担当しています。Genesisはこの時をきっかけに、何度もプログレ期の5人で復活か!? と期待を持たせますが、結局はいつものトリオで2回、大規模コンサート・ツアーをやって終わりました(2007と2021~2022)。でもそれが彼ららしいし、5人で再結成して陳腐になってしまう事を避けているようにも思います。Philも健康問題を抱えて、ヴォーカルはともかく、もはやドラムは叩けないでしょうしね。


1990年代は、他にももっとたくさん紹介したいアーティストがいますが、それはまたの機会にします。CDバブルの時代でJ-POPがメチャクソ売れましたが、幸か不幸かそっち方面には全く興味が湧かなかったので、同世代とJ-POPベースで思い出話ができないのは仕方ありません。ただ、上記に上げた曲と、私自身の思い出は確実にリンクしていて、恋愛、仕事、ドライブ、地方への赴任など、良い思い出も悪い思い出もいろいろ蘇ってきました。

2023年1月6日金曜日

リアルタイムと後追い~前編(結果1983年が多い)

ちょっとした思い付きから「聴いてきた音楽を回顧してみよう」となったのですが、MVを貼り付けていたらめちゃめちゃ長くなってしまいました(笑)
自分の音楽遍歴を遡る旅、中編、後編と続ける…気持ちでいます。
初回の前編は、最初のリアルタイムにこだわってみました。
良かったらお付き合いください…。


最近ことさら、音楽は同時代性込みで楽しむのも大事だな、と思うようになりました。 
自分自身の人生イベントと紐づいて、よりインパクトのある記憶になったり、その時々の社会情勢、そのカウンターとしての曲(歌詞)であったり、リアルタイムで体験した方が、より正しく価値を理解できるのかな、という思いが強くなってきました。

私の音楽遍歴は、その多くが後追いでした。同時代のものも含めさまざま聴いてきた結果、1970年代の、特に英国プログレッシヴ・ロックが自分には一番合っている、しっくり自然に聴ける音楽だと分かりました。
ですが、後追いの音楽は、発表当時の空気感までは知る術がありません。こればかりはどうしようもありません。

逆に、洋楽を聴き始めた1980年代前半と、意識して同時代性を求めた1990年代の音楽は、その当時の自分自身のイベントや、音楽シーンの動向、リアタイならではの空気感を記憶に刻み込めたのかな、と感じます。

また、最初に聴いた当時は自分自身がまだ幼くて、その良さが解らなかった曲も、年齢を重ねて違う捉え方ができるようになったり、自分の感性の変化を感じ取れたりします。


The Police / Every Breath You Take(1983)
ポリスは少し前の1980年に知った好きなグループでしたが、1983年に大ヒットしたこの曲は嫌いでした。しかし今iPhoneのプレイリストには、しっかり入っています。
Sting作の曲を、より印象深くするAndy Summersのギター。速くても遅くても、めちゃくちゃ指を広げないと弾けない、厳しい運指のアルペジオは、ポリスのトレードマークのひとつです。
雰囲気だけで聴いていると切ないラヴソングのようですが、歌詞を読み込むとヤベー歌だと分かります(笑)

Genesis / Mama(1983)
この曲も当時は「暗くて気持ち悪い」という、身も蓋もない第一印象。リアルタイムでは、トリオのGenesisに殆ど魅力を感ませんでした。同時期のもう一つのヒット曲「That's All」を先に耳にしましたが、当時はとてもシックな音楽に聞こえて、13歳の私には響きませんでした。それから10年近く経過して、Peter Gabriel期の1970年代前半を知った時に、やっと「トリオになっても流石Genesis!」と思うように。
この曲のライヴで、下から顔を照らす「ハハッ!ハッ!アァァオゥ」のパートは、「The Musical Box(1971)」のセルフ・オマージュ(Peter Gabrielへの)だと思っています。

Culture Club / Church of the Poison Mind(1983)
大ヒットアルバム「Colour by Numbers」からの1stシングル。2ndシングル「カーマは気まぐれ」に完全に食われた印象ですが、私はこちらの方が好きでした。
最近気づいたのですが、このタイトル…「The Court of the Crimson King」と韻を踏んでませんかね?? CourtとChurch, of the, CrimsonとPoison, KingとMind。
曲調は全く違えど、「In the~♫」というサビの唄い出しまで同じです
それとは別に、この時期の彼らはモータウン・サウンドをリスペクトしていて楽しいです。


Kaja goo goo / Big Apple(1983)
一番人気だったヴォーカルのLimahlが脱退し、ベースのNick Beggsがフロントに立って作った2ndアルバムからの先行シングル。Nickはいまや、英Prog界きってのベースプレイヤーのひとりとなっています。
最近知ったのですが、彼はお家騒動の後でマネージャーに「チャップマン・スティックを買ってくれたらバンドを続けてフロントマンもやる」と駄々をこねたそう(笑)。1984年の次曲「Lion's Mouth」MVでは、スティックを演奏する姿が確認できますし、エレドラも導入していて、まるでディシプリン・クリムゾンのようです。
当然そんな知識もなくエピソードも知らなかった私は、単純にポップスとして楽しんでいました。


David Bowie / Let's Dance(1983)
初めて知ったのがこの曲だったので、Bowieはこういうオトナな音楽の人なんだ、と思っていました。のちにプログレと同じくらい過去の作品群にハマったのですが、この時期の作品にはリアルタイムで聴いた思い入れがあります。
部活の先輩(女の子)にアルバムをダビングしてもらいました。


Yes / Owner of a Lonely Heart(1983)
この曲を最初に聴いた時は、本当に衝撃でした。後にあらゆるポップミュージックで大流行したオケヒット音もさることながら、様々なサンプリング音が随所に鏤められていて、全てが異質で初めて耳にする音ばかりでした。
プロデュースを務めた前作ヴォーカルのTrevor Horn, 当時新加入のTrevor Rabin(g&vo)なくしては、この復活劇は無かったでしょう。産業ロックと揶揄されることも少なくないこの時期ですが、Trevor Hornの出自(Buggles~ラジオスターの悲劇)から考えても、ニューウェイヴの系譜で捉えた方がしっくりきます。
(産業ロックと括られたバンド群とは明らかに異質です)
そしてChris Squireのベースがめちゃくちゃ存在感を示していて、それが彼らをYesたらしめています。

STYX / Mr. Roboto(1983)
シアトリカルなコンセプト作をいくつか作っている彼らの、ちょっと可笑しな作品。
ロック・ミュージックが禁止された近未来の管理社会で、ロックの復権を目論むレジスタンスの物語。
アルバム原題「Kilroy Was Here」は、WW2時に米兵の間で流行した落書きに由来します。
劇中の重要キャラMr. Robotoは日本製の設定なので、敢えて日本語の発音ぽく、RobotではなくRobotoにしています。
ミュージカルのような作風のため、各メンバーをヒーロー側とヒール側にキャスティングした結果、バンド内の人間関係が最悪になったとか(笑)
ジャケット及びPVやライヴにも登場するミスター・ロボットの顔が、中学の同級生アシ〇イ君にそっくりで、今見ても笑ってしまいます(笑)

Vandenberg / Friday Night(1983)
MUSIC LIFEの新作レビューで星4.5とか付いてて、思わず買ってしまった作品。
もうず~っと聴いていませんでしたが、今回記憶を遡った時にパッと出てきました。当時は本当に節操なく聴いていたんだなぁ、と懐かしくなりました。
オランダのハードロック・バンドで、アガるギターリフと明るいコーラスワークが楽しい1曲ですが、「金曜の夜はロック、女にワイン」なんて、いま唄ったら世界的に怒られますね!

Night Ranger / Don't Tell Me You Love Me(1982)
この作品はほんのちょっと、1~2年だけ後追いで聴きました。
シブがき隊を好きでもなんでもなかったのですが、彼らの「Zokkon命」でパクられていると知り、野次馬根性で興味を持った1曲(笑)。当時は家にラジカセしかなかったので、カセットテープでアルバムを買うのが殆どでしたが、何故か本作はレコードで持っています。リアタイでは次作(1983年)からの「(You Can Still)Rock in America」「Sister Christian」の方が、より多く耳に入ってきたのを覚えていますが、その後ハードロックやLAメタルには全く興味が湧かなかった私でした。

The Cars / You Might Think(1984)
カーズはこの少し前の「Shake It Up(1981)」から知っていましたが、80年代を代表するのはやはりこの曲でしょう。凝りに凝って、しかもおバカなMVは当時かなり話題になりました。教室で友達同士でこのアルバム「Heartbeat City」を貸し回ししたのを思い出します。

Peter Gabriel / Sledge Hummer(1986)
彼もDavid Bowieと同様に、大人ポップとして最初に認識したので、古典とシュールを行き来する世界観、奇妙奇天烈な仮装ショウを繰り広げた1970年代のGenesis期を知った時は、本当に衝撃でした。そしてこの曲を含むアルバム「So」より前のソロワークでは、ニューウェイヴとワールドミュージックを融合した、カルトヒーロー的な立ち位置にいた事も後に知り、この頃のイメージとのギャップには驚かされるばかりでした。ただよくよく考えると、クレイアニメ手法で精緻に作り込んだこのビデオも、そんな彼の片鱗を見せつけた、大いなるヒントではあったんですよね。

King Crimson / Three of a Perfect Pair(1984)
一番最初にリアタイで聴いたクリムゾンは、80年代の活動のラスト・アルバムでした。
当時はラジオで「クリムゾン・キングの宮殿」「エピタフ」辺りをチラッと聴いた程度だったので、『伝説のバンド』という認識を除いては、殆ど先入観なく耳にする事ができました。
今では誤った通説だった事が明かされていますが、当時は「デビューアルバムがビートルズのアビーロードを全英No.1から蹴落とした」という口上が、クリムゾン紹介の際には必ず付いて回っていました(笑)
全ての楽器演奏が無機的で幾何学的で、「80年代のある側面を象徴する音」というイメージが、未だにあります。ディシプリン3部作は、ミニマルなデザインのジャケット・アートも印象的でした。Yesもそれに倣ったのか分かりませんが、80年代の2作品(90125とBig Generator)は似たようなジャケット・アートでした。
当時の情報源MUSIC LIFE誌のレビューでは星3.5程度だったと記憶していますが、寸評内に「太陽と戦慄パート3を収録」とあり、とても興味をそそられたのを覚えています。その時私は「太陽と戦慄」とやらを全くもって知らなかったのですが、「なんだか凄いもの」という事は感じ取り、ほどなくして遡っていく事となりました。


自発的に洋楽を聴き始めた頃のビデオクリップを何気なく調べていたら、1枚の80’sコンピレーションができるほど貼り付けてしまいました(笑)。
そして無意識だったのですが、1983年の作品がなんと多い事か。

洋楽を聴き始めたのはその少し前、1980年(10歳)なのですが、その頃はまだFMのTop10番組をなんとなく聴く程度の「洋楽赤ちゃん」でした。
1982年には「ASIA~時へのロマン」「TOTO~IV聖なる剣」という作品を入手していましたが、まだそれ以上の探求心は芽生えていなかったのかもしれません。小遣いでアルバムを買うのも大変でしたし、MTV番組もラジオ番組も、まだあまり知らない時期でした。それに当時はこの2枚をずっと繰り返し聴いていても、全く飽きませんでした。

中編(1990年代)に続く…

2023年1月4日水曜日

ABWH ~ An Evening of Yes Music Plus, Deluxe Box Setリリースに寄せて

高額に加え、タイミング的にも大枚叩いてまで入手するモチベーションではないので、一旦は見送りますが、実に魅力的なボックスです…。

過去のエントリーで書いたと思いますが、私の人生初のライヴ体験は1988年春、代々木体育館で行われたYes~Big Generator Tourでした。
1982年にASIAを経由して知ったYes。その当時Yesは解散状態だったので、ロックを知ったばかりの中学生の憧れは盲目的に強くなりました。そして程なくすると、ドラマティックに再結成。斬新な変身を遂げての大ブレイクを、思春期真っ只中の感性で目の当たりにしてきたので、正に待望のライヴ体験だったのですが、ハイティーンになっていた1988年頃には、既に往年のYesと当時のYesのギャップを知ってしまった後。いわゆる90125Yes(当時はまだ、そんなあだ名はありませんでした)もリアルタイムで大いに楽しんでいましたが、「だが、コレじゃない」感が芽生えていたのも事実です。

「Close to the Edge」直後の全盛期、滞在時にJon&Steveで「Tales from Topographic Oceans」の構想を練ったという1973年の初来日時、私はまだ3歳の幼児。それから実に15年もの時を隔てた2度目の来日公演が、私にとっては人生初のライヴ体験となったわけですが、残念な事にかなり記憶が薄れてしまっています。

その初めての生Yesメモリーを完膚なきまでに上書きしたのが、Anderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)の結成と、1990年春の来日公演でした。
人生2度目となったこのライヴ体験、東京と横浜の全公演に足を運び、忘れようもないほどに記憶に刻み込みました。

90125Yesは、アルバムのリリース間隔こそ長かったものの、珍しくメンバーチェンジもせずに80年代を駆け抜けたので、このラインナップは盤石で、黄金期メンバーの再集結は見果てぬ夢に終わるのだろうと、当時の私は諦めていました。
そして私が、Yesに興味を持つきっかけとなったギター・ヒーローSteve Howeが、ASIA、GTRの商業的成功とは裏腹に、バンドのリレーションシップに失敗しているのを繰り返し見てきて、いたたまれない気持ちでいた80年代終盤。正に起死回生の一発に思えたのが、ABWHでした。

なんといっても全盛期メンバーの4/5が揃った事、特に「Close to the Edge」をレコードに残したものの、一度もライヴ演奏せずに去ったBill Brufordが戻ってきたのは、私のような若輩ファンにとっても奇跡の出来事に思えました。
Billは正に字義通りのProgressiveを体現するドラマーでしたので、彼が連れてきたTony Levinのサポート含め『ただの懐メロで終わるワケがない』という期待感もありました。

当時はまだ、Chris Squireの重要性は今ほど言われておらず、時には「目立たない」「静かな」メンバーとして紹介するメディアもあるほどでした。故に私も、彼の不在を殆ど気にしていませんでした。なんなら「生意気な若造」Trevor Rabinを擁護してYesの看板を譲らない巨漢のヒール、くらいにしか思っていませんでした(ただBig Generatorでの私のお気に入りは、彼のベースが大活躍するI'm Runningでした)。
今は勿論、ChrisがYesで果たした役割の重要性(音楽、運営どちらも)と当時の正当性、Trevorの並外れた才能も理解しています。

ABWHの既発ライヴ作品「An Evening of Yes Music Plus」は、既知のとおり病欠したTony Levinに替わって、Billのもう一人の盟友Jeff Berlinが参加しています。そのため、フルタイムでサポートしていたTony参加音源の方がレアになってしまっています。
指に長い「とんがりコーン」を装着したり、チャップマン・スティックを駆使した先進的な演奏には、本当に痺れましたし、シモンズのデジタル・ドラム要塞を縦横無尽に操るBillとのコンビネーションも最高でした。

本作の国内盤は、NHKホールでのオンボード音源も収録との事。Tonyの演奏が聴けます!
でも、高いんだよなあ…。

余談ですが、未だにBill Brufordの日本語表記には揺れがありますね。
私も世代的には「ブラッフォード/ブラフォード」で覚えたクチですが、自伝が出版された辺りからは意識して「ブルーフォード/ブルフォード」と記述するようにしています。過去のエントリーではブレの名残があって「ブルッフォード」とか書いちゃったりしていますが(笑)

2021年10月3日日曜日

Yes / The Quest

なんだかんだ言って、めちゃめちゃ楽しみにしていた7年ぶりの新譜です。

10/1 に日付が変わった0時、直ぐにApple Musicにアクセス。4時近くまでリピートして聴き込みました。そして3日経つ今も、時間があれば聴いています。とはいえ、まだ印象が固まりません。スルメ・タイプの作品かもしれません。

オリジナル・メンバーは3人生存していますが、現ラインナップには含まれません。

残念には思いますが、個人的には現メンバーに不満はありません。

Jon Anderson復帰を望む声は絶えませんが、いろいろ無理なのでしょう。

Bill Bruford & Tony Kayeも、本人たちの状況や意思としても無しです。

ギターのSteve Howeがプロデュース。Geoff DownesやBilly Sherwoodという、プロデュース業に長けたメンバーがいる中、遂に最長老がYes作品の総監督を務めました。

全11曲中、Steve作が6曲(Jon Davisonとの共作1曲含む)。そのためか、彼のギターはかなり楽しめます。時としてライヴで感じるようなヒヤヒヤもなく、名演を聴けます。エレクトリックは70年代中期を想起させるような緊張感や抒情性がありますし、幾つもあるSteveのトレードマーク「ペダルスティール」「ポルトガル・ギター」なども随所で印象的に響き渡っています。

アコースティック・ギターも冴えていて、澄んだ音色が響くさまは、かつてのWindom Hill作品のようです。

通して聴いた印象として、先行配信の「The ice Bridge」は、結果として他人の曲を転用したモノ、という事もあって異質だったという事。エッジが効いていて、キーボードも大活躍で、リードトラックとして否が応にも「Yes復活(何度目のコピーだ)」の期待感を煽る佳曲でした。

ですが、配信第二弾「Dare  to Know」で「ん?」となり、アルバム全体としては、そちら側の印象が強い、とても穏やかな作品として世に出ました。

そういう意味では前作「Heaven and Earth」の延長線上にあると言えるかもしれません。また、Billyがいる影響か(良い意味です)「Open Your Eyes」「The Ladder」、はたまた彼のバンドWorld Tradeとの近似性を感じる箇所も少しあります(The Western Edgeが顕著です)。

個人的に印象的だった曲を下記に綴ります。

- The Ice Bridge: 

作者問題も含め、過去のエントリーで書きましたので、今回は別の切り口で。

Cパート「Interaction」で繰り広げられるギターとキーボードのインタープレイは、本作一番の聴きどころではないでしょうか。

うろ覚えですが、2003年頃のライヴで繰り広げられた「South Side of the Sky」での、Steve & Rickの応酬を思い出します。

また、曲の骨組となったキーボード・パートは丸っきりFrancis Monkman / The Dawn of an Eraですが、JonDが作った歌メロは完全なオリジナリティがあり、そのクオリティも歌唱も最高です。

- Leave Well Alone: 

琴のような弦楽器のイントロはGTR「Here I Wait」を思い出します。

SteveはASIA「Heat of The Moment」で琴を実際に使用していたので、この曲でも使っているのかもしれません。

SteveとJonDが低いテンションで、ダーク&トラディショナルなメロディをユニゾンで歌うさまはミステリアス(笑)。

そしてCパートの"Wheels"は、Würm (Starship Trooper) 再び!という曲でした。もっとスロウ&メロウ、そして三拍子のワルツですが、3コードのギターインスト・パートという点で「Würm pt.2」と言ってもよさそうです。

- Mystery Tour: 

曲名の通りThe Beatlesに言及しており、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの名や彼らの曲名だけでなく、ブライアン・エプスタイン、ニール・アスピノール、マル・エヴァンズといった重鎮関係者の名前まで出てきて、音の方では「Strawberry Fields Forever」でお馴染みのメロトロン(フルート音)も出てきます。

この曲と次曲「Damaged World(Steve 作/歌)」を聴いたとき、単なるイメージなのですが、かつてのスーパー・グループ「Traveling Wilburys」が頭に浮かびました。気の抜けた軽快さというか、Yesもそういう季節に来ているんだなぁ、というか…。2曲ともSteveの曲です。

Yesは初期メンバーは特に、The Beatlesの影響下にありました。1stアルバムでは「Every Little Thing」を、後のライヴでは「I'm Down」のカヴァーが演奏されてきました。Alan WhiteはJhon Lennonのソロ作で仕事をしています。Steveも過去のインタビューで、何度もThe Beatlesに言及していたのを読んだ記憶があります。

CD2は3曲全てSteve作(1曲はJonDとの共作)という情報があったので、リリース前はいつものSteveのギター・ソロ的な「おまけ」かなと思っていましたが、蓋を開けてみると本作では意外にもギター・インスト曲がなく、全曲がバンド・アンサンブルでした。

SteveとJonDが、単独、共作合わせてそれぞれ6曲提供。GeoffとBillyはJonDとの共作でそれぞれ2曲だけ。この2人は作曲面/演奏面ともに、もっとしゃしゃり出ても良かったんじゃないか、とも思います。Alan Whiteもそうです。在籍歴は誰よりも長いのだから…。

ドラムに関しては、Alanはどれだけ叩けているのか、Jay Schellenとの割合など気になるところですが、正直分かりません。


総評としては、Steveのカラーが強く、彼のソロ・アルバムをYesとして仕上げた、という印象が少なからずあります。ただ、Yesは過去にもそういった経緯の作品があるグループなので、それでも良いのかもしれません。

新バンドだった筈の「Cinema」を、Yes再結成に寄り切った「90125」。

Billyと作っていたChrisのソロ・プロジェクトを転用した「Open Your Eyes」。

Bugglesの積年の恨みを晴らした(笑)「Fly From Here」(および ~Return Trip)。

今回はコロナ禍で、英米に分かれているメンバーの行き来も難しい中、作品として昇華させたSteveが頑張ったという事ですね!


良作と思いつつも、いまだ私なりの評価が定まらない本作をしっかり受け止めるために、過去作も少し聴き直しています。

・Heaven and Earth (2014)

・Tormato (1978)

雰囲気が似ているこの2作品を知り直す事で、何か見えるような気がしていますが、久しぶりにTormatoを引っ張り出したら、過去に見えなかった部分が色々見えてきて、改めてTormatoの良さを知る、という結果になりました(笑)。

2021年9月1日水曜日

Yes / Dare to Know

 


まもなくリリース予定のNew Album「The Quest」から、9/1に2曲目「Dare to Know」が配信されました。

今回はSteve Howeひとりの作詞作曲。良くも悪くも実にSteveらしい、まろやかな曲です。オーケストラも導入されて、インスト部分だけ聴いているとムード音楽のようです。

ギター類はふんだんに使われています。エレクトリック、アコースティックは当然の事、ペダルスティール、マンドリンも聴こえてきます。
ただ、円熟味というかなんというか、前面に出る感じは全くなく、Steveによる弦楽器のオーケストレーションがベースにあって、そこにバンドの音と管弦楽を乗せた、そんな感じの曲です。

キーボードは先行曲「The Ice Bridge」と異なり、かなり控えめ。うっすらとオルガンの白玉が聞こえる程度です。

そして、Steveのヴォーカルもふんだんに(笑)入っています。
Jon Davisonとの、オクターブが違うユニゾンです。
彼のヴォーカルは誰かと一緒だと悪くはないのですが、あまり前面に出てしまうと、いただけません。今回はギリ良しとしましょう(笑)。

Steveは誰かとタッグを組んだ時やプロデューサーが他に居る時の方が、コンポーザーとしての才能が発揮されるように思います。ひとりでは起きえない化学反応とでも言うのでしょうか...
Yes初期、Jon Andersonと作ったRoundabout (こわれもの), Close to the Edge (危機), Awaken (究極) などは不朽の名曲となりました。John Wettonと作って一緒に歌ったOne Step Closerも、ASIAとしては地味な1曲かもしれませんが、実に良い曲です(元アイディアはSteveがYes前に在籍したBodast時に、既にありましたが)。
Steveひとりの作でも、Trevor HornプロデュースのHour of Need (フライ・フロム・ヒア)は、素朴ながらとても良い仕上がりだったと思います。

一方でAbilene (トーマト / Don't Kill the Whale, c/w)は、とてもユルユルで、アルバムから弾かれシングルB面が関の山、というような曲でした。彼のソロ・アルバムも特に歌モノは、同じような雰囲気が多いように感じます。
この新曲は…申し訳ないのですが、どうもコッチ寄りの気がしてなりません。
アレンジやプロダクションはとても頑張った跡が見られますが、曲がユルくて魅力に乏しい…。

The Ice Bridgeは、パクリ問題(解決済み)や、シンセ音の古臭さなどを差し引いても、エッジの効いた聴きごたえのある曲でしたので、Dare to Knowには、アルバム直前に少しがっかりさせられてしまいました。

2021年8月10日火曜日

Yes / From a Page

このミニアルバムは、すっかり見落としていました。リリースは2019年です。

2021年7月に配信された新曲「The Ice Bridge」をAppleMusicで探していた際、ジャケット・アートの色合いが似ていたために間違えて聴いたのが、きっかけでした。

2011年のFly From Hereに際し、原曲に携わったDramaラインナップに近づけるため、Geoff Downesが復帰。そのあおりを喰らって弾き出されてしまったRickの息子Oliver Wakeman(公式にはそんなアナウンスはありませんでしたが、どう考えてもそうとしか…)。

Oliver在籍時には残念ながらスタジオ・アルバムの発表はありませんでしたが、2015年のChris逝去に端を発し、お蔵入りだったChris存命時のスタジオ音源をOliverが仕上げてくれたようです。

2010年のFly From Hereセッションで作られた4曲という事ですが、殆どがOliver作曲だったからなのか、アルバムには収録されませんでした。しかしいずれも、実にYesらしい佳曲が並んでいます。何よりOliverの演奏がお父さん譲りで、それだけで「Yesだなぁ」と感じられます。ミニモーグやオルガンの音色も良いですし、リリカルなピアノが本当に素敵です。

作詞作曲の実績も残せず、声色のためだけに利用された感の強いBeoit Davidも、良い仕事をしています。「The Gift of Love」では作曲者の一人としてクレジットもされています。Jon Andersonにそっくりな声を出したかと思えば、少し太いオリジナリティのある歌声も披露しています。特にOliverが2013年にGordon Giltrapと共同名義でリリースしたアルバムにも収めた「From the Turn of a Card」での歌声は、JonAともFly From Hereで披露された声とも違い、Oliverのピアノとのデュエットがとても美しい名曲に仕上がっています。

僅か4曲のミニアルバムですが(抱き合わせのLive from Lyonは置いときます)、Yes本来の魅力のひとつ、「歌モノ」としても三声ハーモニー、リードとバッキングの掛け合いなどが随所に見られ、基本要素をしっかり取り込んでいるのが解ります。

Steveのギターも、スタジオでは良い意味で個性を発揮してYesらしさを演出していますし、Chrisのベースは控えめな印象ですが、バッキング・ヴォーカルの存在感でYes印をしっかり刻んでいます。

ここまで書いて、もはやYesに求める事はProgressではないなと、改めて思いました。ライヴだったら(期待できませんが)70年代のようなドライヴ感を、スタジオだったら良い楽曲、良いアレンジ、そしてYesらしさを再現して欲しいと思います。私が思うYesらしさとは、各楽器の高い演奏技術、ジャンルを超えた音楽性、美しいメロディと厚いハーモニー、トリッキーなのに自然に聴かせてしまう構成力、そして意味不明な歌詞(笑)

そういう意味でOliverは、(もしかしたら古参メンバーよりも)Yesらしさとは何かを理解した上で、この4曲を仕上げたのだろうな、というのがよく解る作品です。

因みに在籍していてもいなくても、よく絡んでくるBilly Sherwoodは本作では何処にもクレジットされていないようですが、そこはかとなく彼の香りを感じるのは私だけでしょうか…

2021年7月28日水曜日

Yes / The Ice Bridge 続報

 Curved Air / SkyのFrancis Monkmanが1978年にリリースした曲「The Dawn of Man(またはThe Dawn of an Era)」からの盗作が疑われ、一部で非難されていたYesの新曲。

私もそれを指摘するツイートを見た後、両曲を繰り返し聴き比べていました。

該当する全てはキーボード・パートで、歌メロやギター、ベース、ドラムには影響が見られません。

ELP / Touch and Goに似ているとも指摘のあるイントロのファンファーレ、Aメロのバックで流れるシークエンス、ブリッジやキメの幾つかのリフ、少なくとも5つ以上のパーツはThe Dawn of Manによって既に奏でられていました。このまま、盗作の疑惑と非難の的となったままアルバムリリースになってしまったら嫌だなぁと危惧していたのですが、昨夜(日本時間で7/27の夜)Geoff Downesの公式ツイッターで説明がありました。

要約すると、The Ice Bridgeの作者のひとりであるGeoffが、Francisとチャットでこの問題について話し、友好的かつ円満に解決した。作曲のクレジットにはFrancisも付け加えられる。との事でした。良かった良かった。

Geoffはこの曲を作るにあたり、テレビ番組、CM、商業施設用音楽などを手掛けていた職業作曲家時代のライブラリ素材を掘り起こしていたそうです。そしてそこに、誤って件の曲が紛れていたと。自作曲の山の中にあったので勘違いしてしまった、という事でしょうか。Francisの曲はテレビ番組「Invension:UFO」のテーマだったし、リリース元のBruton Musicはそういった音源を扱うレーベルだそうなので、辻褄は合いますね。

リリースから4日間、もやもやが晴れて本当に良かったです。これで安心して10月のアルバムを楽しみに待つことができます!


2021年7月24日土曜日

Yes / The Ice Bridge (2021/07/23の新曲)

コロナ禍も世界中でワクチン供給が進み、次のフェーズに移行できるか?というタイミングで、Yesニュー・アルバム発表(2021/10/1予定)のアナウンスがありました。純粋な新作としては2014年Chris Squireの遺作となったHeaven and Earth以来7年ぶりとなります。

間には2011年のFly from Hereを1980年DramaのラインナップでリニューアルしたFly from Here - Return Trip(2018年)、数年ツアーに帯同していたRick Wakemanの息子Oriver Wakeman在籍時のスタジオ・レア音源を再編したミニ・アルバムFrom a Page、他にも数々のライヴ・アルバムのリリースがありましたが、スタジオ・フル・アルバムとしては本当に久しぶりです。

Chris没後、ライヴでは長い事そうなっていますが、本作は遂にオリジナル・メンバー不在のYes作品に。

Steve Howe (G, bVo)

Alan White (Dr)

Geoff Downes (Key)

Billy Sherwood (B, bVo)

Jon Davison (Vo)

の五人に加え、長年体調が思わしくないAlanのサポートとしてJay Schellen (Dr)が参加しています。

そしてプロデューサーは、最古参で現Yesのリーダーと言えるSteveが担当。BillyやGeoffといった、プロダクションのキャリアがある二人を擁するラインナップにあって、これはかなり驚きでした。Steveはギター職人気質だし、自身のソロワークでのプロデュースしか知りませんので。

不安と期待(不安が先。笑)が入り交じる中、昨日7/23に、新曲The Ice Bridgeの配信が開始!早速YouTubeとApple Musicで聴きました!

作はJon Davison / Geoff Downes

7分を超える組曲形式で、ホーン系シンセのファンファーレで幕を開けるイントロは、ASIAっぽい、もしくはELP の庶民のファンファーレやTouch and Goを彷彿とさせます。曲の後半ではモーグの音色でギターとの応酬もあって、圧巻です。

Steveのギターは伸びやかで、ライヴ時のような不安を感じさせません(笑)。実にSteveらしい、クリアに近い、柔らかく歪ませたトーンが心地よいです。RelayerやAwakenのような、ひりひりした緊張感もあって、近年で一番良いプレイでは?と思わせてくれます。

JonDのヴォーカルは更に磨きがかかっています。これまでのTrevor HornやBenoit David以上にJonAの声質に近いですが、オリジナリティがしっかりあり、似ているかどうかなど気にする必要もないほど、今のYesにマッチしています。

BillyもChrisの申し子、とまで言えるかどうかは分かりませんが、頑張ってブリブリ言わせています。

ドラムはどちらが叩いているのでしょうね。AlanはYesブランドを保つための名前だけなのかどうなのか…

歌詞をざっと見たところ、コロナ禍の人類の危機を、原始時代の人の歩みになぞらえているのかな、と感じました。また、"scared fire" "All eyes to the east"といった歌詞は、五輪にも言及しているのかな?それともコロナ発生源であり、経済的にも軍事的にも急拡大している中国?どうなんでしょう。抽象的なところはYesismと言えそうです。

前作Heaven and Earthは、良くも悪くも牧歌的、良いメロディやフレーズもありましたが、緊張感が皆無で演奏もスカスカに軽く、私的には彼らのワーストでした。

今回はChris不在、バンドのプロデューサーとしては未知数のSteve制作、HaEとほぼオナメンという事もあって、アルバムのアナウンスを知った時は正直不安しかありませんでした。

しかし、先行曲The Ice Bridgeを繰り返し聴いて、アルバムが非常に楽しみになりました!


【追記】

新曲の反応を知ろうとtwitterを見ていたところ、思わぬ情報を見つけてしまいました。元Curved AirのFrancis Monkmanが1978年に発表したエレクトロニック作品「The Dawn of Man」が、この曲そのものだったのです!


もちろんYesならではのアレンジは為されている訳ですが、イントロからAメロのバックで流れるシークエンス、ブリッジのシンセなど、まんま使われています…。キーもコード進行も同じ…。
時代的にはBugglesの少し前で、あの時代特有の同じ匂いが…Geoffよ、やっちまったな⁉

2016年7月24日日曜日

YES ft. Peter Gabriel - Watcher Of The Skies


【2021年追記:こちらはタンジェントというバンドのFake! 悪ふざけと判明しました💦】 

Yes & Peter Gabriel!!しかも1970年のWatcher Of The Skies!!
いやー、こんなコラボ・セッションがあったなんて知りませんでした!
Musical Brick という、Genesisのメンバーや時期ごとのコスプレをLegoで再現(!)するという、ステキすぎる集団がいるのですが、そのFacebookに投稿されたYoutube音源で初めて知りました!!
おそらく、Yes, Genesisの両バンドを知り尽くしていらっしゃる方からすると、「何を今更」なんでしょうけれど、私はどちらのバンドも30年以上好きなのに、恥ずかしながら知りませんでした。

Musical Brickの投稿と、Youtubeにアップされていたテキストから読み解くと、幾つかの貴重な情報を得られました。

1)フランスのTVでのスタジオ・ライヴ。

2)ジェネシスの学校の先輩で、1stのプロデュースをしたジョナサン・キングの計らい。

3)1970年のセッション!
 ゆえにWatcher Of The  Skiesが収録される「Foxtrot」より2年も早く出来ていた。
 Genesisは「Trespass」前後? 
 Yesは「Time And A Word」直前くらい?

5)Yesはオリジナル・メンバー期!
終演後のアナウンスで「Jon Anderson, Chris Squire, Peter Banks, Tony Kaye and Bill Bruford〜」と紹介されていますね〜。

音は正に1st〜2nd時のYesそのものです。
クリスのベースがぐいぐい前に出て、トニーのオルガンがキラッと光る。そして、黄金期に比べると、稚拙な勿体づけがちょっと目立つ(笑)。
Jon Andersonは紹介されているけど、何にもしていないような気がします。
もしかしたら、軽くコーラスでも付けているのでしょうか...

意外すぎる取り合わせに、本当に驚きました。
歴史に埋もれた奇跡って、思わぬところで知ることになるんですね!




2016年7月5日火曜日

2016年11月 Yes 来日決定!

噂は立っていましたが2年ぶり、Chris Squireが亡くなって初めての来日公演が決定しました。前回も11月末でしたから、本当に丸々2年ぶりの来日ですね。

(特に海外の)Yesファンの間では、Jon Andersonお得意の謀反ユニットARW、(Anderson Rabin Wakeman)が話題を呼んでいますが、私はChrisに託されたこちらのYesを断然支持したいと思います。誰がトリビュート・バンドじゃい!
かといって、もしもARWが来日となれば、それはそれで行ってしまいますが(笑)。

今回のセットリストは、欧米ツアーの「海洋〜」からのA&D面と「DRAMA」...だったらなお良かったのですが、「DRAMA」が外れて「Yessongs」からの抜粋ときたもんです。
「海洋」は個人的にはアルバム・ジャケット(LP)のアートワーク以外は失敗作だと思っているので、コンセプトを主導したJon Andersonがいるならまだしも、このラインナップでは演る意味がないように感じます(当時、創作の片腕だったSteve Howeはいますけど...)。特に「神の啓示」のイントロ、読経のようなポエトリー・リーディングの部分、あれはAndersonじゃないと、と思うワケです。
そして他がYessongsからとなると、いつものクラシックセットじゃん、と。
「DRAMA」と「Yessongs」だったら最高なんですけどね。

今回の参戦は、ちょっと静観しようかなという気分でいます。
追加公演が出たら、最終日だけ狙ってみたいと思います。

やっぱり仙台から毎回、東京に帰って宿泊して、というライヴの見方は、経済的にも精神的にもキツいです。それ自体はとても楽しいのですが、仙台にいる嫁さんや義父母の目が...

家とローンがなければ、今すぐにでも北国を出たいと切に感じている今日この頃です( ´Д⊂ヽ

2016年6月27日月曜日

Christopher Russell Squire Passed away, One year ago...



6月27日はChris Squireの命日。早いもので一周忌です。
Yesのベーシストにしてリーダー。リッケンバッカーの硬質で、そして高音域を多用したベースの音色で、楽曲をぐいぐい牽引し、バッキング・ヴォーカルでもJon Andersonとの絶妙のハーモニーを聴かせてくれる、Yesというバンドにとっては欠かせない魅力を持った人でした。

90年代くらいまではYes一筋、結成から一貫してYes関連以外の活動はありませんでした。
1975年のソロ・アルバムもメンバー全員がリリースする企画モノでしたし、「DRAMA」解散後のXYZ(JimmyPageとのプロジェクト)も、Cinema(90125Yes再結成の前身)も、それ自体として具現化はしませんでした。
あ、同時期にAlan Whiteとの共同名義でクリスマス・シングル「Run With the Fox」を出しましたね。あの曲は私の中では、一番のクリスマス・ソングです。


以前も書かせて頂きましたが、ChrisのYesでの最後の作品「Heaven and Earth」は、残念ながら非常に残念な出来なので、今夜はSteve Hackettとのコラボ「Squackett」を聴こうと思います。

それにしてもSteve Hackettは優しい人だなぁ。
最近ではKeith Emersonの死にもすぐにコメントを出し、トリビュート・コンサートにも出演していました。
John Wettonが病床にいれば、快方に向かった際にわざわざ自分のFBで報告してくれました。
今日もChrisの一周忌であることをFBでお知らせしていました。

ChrisはYes一筋でありながらも、同世代、後輩たち多くに慕われ、Steve Hackettはそんな人たちに惜しみなく敬意を払い、友情を築く。また、後世代との共演や起用も積極的に行動し続けています。
Squackettの絶たれてしまった将来、楽しみでした。


2016年6月14日火曜日

ARW...? 頑張れAlan White & Steve Howe組


Anderson Rabin Wakeman...
既にそんなに新しくない情報ですが、触れないわけにはいきません。
これは本家Yesとはどういう関係性を持っているんでしょう?
Roger Deanがイラストを描いているということは、Yes公認なのかな?
まぁ、そんなことはなさそうな気がしますが...

1989年のABWHは当時、とても素晴らしい再結成に思えましたが、結局は短命に終わり、Yes本体もその後ごちゃごちゃした挙句に90125のラインナップに戻るという、身も蓋もない収束を見せ、私個人としてはとてもがっかりした記憶があります。

その際、次作では90125のメンバーにRick Wakemanも加わるという情報がありましたが、結局それは実現せずに「TALK」が完成。
当時はTrevor RabinとRick Wakemanが意気投合して...という話でしたが、スケジュールだか契約上の問題だかで、かつてないラインナップでの始動は夢と消えました。

今のYesが一部でトリビュート・バンドと呼ばれてしまうようになったのは、やはりChris Squireの死が大きいと思います。Jon Andersonは確かにVoice of Yesと呼ばれていますし、それに異論は全くありませんが、Chrisの存命中はJonの不在で評判が悪かろうが、彼さえいればそれでYesだったのですから。

今のYesでChrisの遺志を継いでいるのはAlan Whiteでしょう。Steve HoweはYesというバンドには愛があるのでしょうが、長年の仲間である筈のこのリズム隊との友情は、正直あまり感じられませんし、気を許しているのはおそらくGeoff Downesくらいなんじゃないでしょうか。

AlanはChrisにYesを続けるように言われたという趣旨の言葉を、Chrisの死後にコメントしていました。彼は今の状況に苦しんでいるような気がします。
彼はどちらかといえば現バンド・メイトのSteve HoweよりTrever Rabinに、友情やChrisへの想いという部分でもシンパシーを感じている筈です。
でもChrisの遺志を尊重し「このYes」を存続させなければならない。

正直なところ、Chris Squireへの想いという点でYesを再編するなら、今回の新しいARWに、Alan White、Billy Sherwoodが加わるのが、妥当な気がします。

本来であれば、現YesにJon Anderson, Rick Wakemanがそのまま再加入さえすれば、それでスッキリしますが、Steve Howeの存在が実に厄介な気がします。
Alanと一緒にYesをやりながら、直接じゃないにしても「Bill Brufordの方が良い」と言ったり、Chris逝去時のコメントも少しの友情も感じられないようなアッサリ感がモロに出ていたり。
これは単なる余談ですが、Keith Emersonが亡くなった際にも、同世代、影響を受けた後の世代かかわらず多くのコメントが寄せられましたが、過去に一瞬にしろバンドを組もうとした相手に何のコメントも出さなかったSteve...

私はSteveのファンとして、最近とみに感じられるこのような人格や(勿論、表に出ていることが全てとは思いませんが)、Yesにしろ脱退したASIAにしろ、バンドメイトとの関係性に、不安と落胆を禁じえません。

Yesのマネージャーは今もブライアン・レーンなのか知りませんが、Steveはかなり前からメンバーとの関係性よりも、マネジメントの言いなりのような気がします。(DRAMA解散からASIA, GTR, ABWH, UNIONまでの流れも含め)

Chris最後の作品となった「Heaven & Earth」は正直、退屈極まりない作品でした。
ARWという強力な刺客がYesをどう引っ掻き回してくれるのか、Chrisへの想いを強く持つJon AndersonとTrever Rabin, そしてRick Wakemanの作る音楽、またはライヴ...私自身はそれもまた複雑な思いではありますが、楽しみにしたいと思います。

私の本心は、トリビュート・バンドと揶揄される本家には、Jon Andersonお得意のお家騒動に惑わされずに頑張って欲しいですし、可能であれば「Heaven & Earth」という駄作を忘れさせるくらいの新作を創って欲しいです。
AlanとSteveが結束を強められることを、心から願います。

2015年9月4日金曜日

Yes Live 11th Dec 1974 Boston King Biscuit Flower Hour Broadcast



クリス・スクワイアが亡くなり、当初は闘病中の代役として擁立する予定だったビリー・シャーウッドが正式にベーシストとして加入、TOTOとのジョイントツアーを進めている模様のYes。
クリスへのトリビュートとして、このツアーを無事に成功させて欲しいものです。

音楽というものは、やはり原初の体験が強烈なインパクトをもたらし、脳ミソにビターンッと記憶されますね。
今回YouTubeから引っ張ってきたLive音源は、私が中学生時代FMエアチェックしたものと同音源。オンエアされたのは'82〜'84年頃の事だったと思います。
残念な事にこれまでの複数回の転居で、録音したカセットテープは紛失してしまいましたが、当時本当に聴きこんだので、演奏の細部にわたる記憶が甦るように呼び起こされてきました。

オープニング「火の鳥」のテープに合わせてドラム、パーカッションがド派手に入り、ベース、メロトロン、エレピ、そして「タッターッター、タッタッ!」というコーラス(これもテープかな?)と華麗に繋がっていく「Sound Chaser」。
私が初めて聴いた「火の鳥」オープニングがコレでしたので、その後で知る事になる定番の「Siberian Khatru」オープニングに馴染むまで、けっこう時間がかかってしまいました(笑)。

パトリック・モラーツ期は'74〜'76年と長く、ライヴ音源が豊富にあるので(スタジオ作が1作なのが残念!)、YouTubeでいくつか聴き比べてみましたが、現時点でこのオープニング・アレンジは「King Biscuit Flower Hour」の音源でしか見つけられないので、私が中学生の頃に聴いたのはこれで間違いないでしょう。

これを耳にした当時の私は、リアルタイムで大ヒットしていたASIAを入口に70'sに興味を持ち始めたばかりで、Yesは解散状態か「90125」を出して華々しく復活を遂げた直後、そんなタイミングでした。
彼らの音楽はラジオで数曲聴いただけ、アルバムはまだ1枚も持っていませんでした。

オープニングの「火の鳥」から、次々と繰り出される超絶な構成と演奏の楽曲の数々に、とてつもない衝撃を受けました。
ある意味このライヴ音源が、私にとっての「Yessongs」かもしれません。

Yesのギタリストって、その時代時代のイニシアティヴを掌握して「音楽の中心」になっているのがダイレクトに伝わりますが、「バンドの中心」ではない事は、これだけの時を経ると分かりますね。
スティーヴ・ハウ、トレヴァー・ラビン、それぞれ大きな原動力でバンドを動かし、存在感も抜群でしたが、それは全てYesという器の中でのこと。その器はジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアだったんでしょうね。

2015年7月25日土曜日

Yes- Trevor Horn Concert 2004 (HQ)

もう11年も前の出来事ですが、プロデューサーとして大成したトレヴァー・ホーン(以下トレヴァーH)のデビュー25周年記念コンサートで集ったこのYes、よくよく考えると超貴重なラインナップですね!

Chris Squire
Steve Howe
Alan White
Trevor Rabin
Geoff Downes

最初に観た時は「スティーヴもトレヴァー・ラビン(以下トレヴァーR)時代の曲をトレヴァーRと一緒に、しかもほぼバック・メンバー扱いでも、演れるようになったんだねぇ」と目を細めただけでした。
しかしこれ、Yesが混沌とし分裂した時の、1981〜2年当時のメンバーが揃い踏みです!
スティーヴとジェフはASIAを結成、クリスとアランはトレヴァーRとCinemaを結成→Yes再結成へと進み、袂を別った二組が、二十数年の時を経て一夜限りの融合を果たしていたんですね。
ジョン・アンダーソンがいないことも、当時を思い起こさせる大きな要素です。

トレヴァーHのお祝いなので、彼が絡んでいないASIAの楽曲が演奏されないのは致し方ないとしても、バグルスががっつり取り込まれたYes「DRAMA」から、1曲くらいやっても良かったんじゃないかなぁ。
でもトレヴァーHの、後の大メジャーぶりから考えたらDRAMA自体がマイナーでしょうから、ここにいる客にとってはなんじゃコリャですかね(笑)。
DRAMA好きですけど!