前作「The Quest」が2021年10月でしたので、約1年半ぶりというハイペースです。
最後に残るSteve Howeは、70年代から続けている菜食主義のおかげでしょうか、その容貌に反して(失礼!)バリバリ健康そうですが、元気に頑張って欲しいものです。
もはやクラシックの楽団のように、ブランドとして続けていっても良い気がしてきています。
高額に加え、タイミング的にも大枚叩いてまで入手するモチベーションではないので、一旦は見送りますが、実に魅力的なボックスです…。
過去のエントリーで書いたと思いますが、私の人生初のライヴ体験は1988年春、代々木体育館で行われたYes~Big Generator Tourでした。
1982年にASIAを経由して知ったYes。その当時Yesは解散状態だったので、ロックを知ったばかりの中学生の憧れは盲目的に強くなりました。そして程なくすると、ドラマティックに再結成。斬新な変身を遂げての大ブレイクを、思春期真っ只中の感性で目の当たりにしてきたので、正に待望のライヴ体験だったのですが、ハイティーンになっていた1988年頃には、既に往年のYesと当時のYesのギャップを知ってしまった後。いわゆる90125Yes(当時はまだ、そんなあだ名はありませんでした)もリアルタイムで大いに楽しんでいましたが、「だが、コレじゃない」感が芽生えていたのも事実です。
「Close to the Edge」直後の全盛期、滞在時にJon&Steveで「Tales from Topographic Oceans」の構想を練ったという1973年の初来日時、私はまだ3歳の幼児。それから実に15年もの時を隔てた2度目の来日公演が、私にとっては人生初のライヴ体験となったわけですが、残念な事にかなり記憶が薄れてしまっています。
その初めての生Yesメモリーを完膚なきまでに上書きしたのが、Anderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)の結成と、1990年春の来日公演でした。
人生2度目となったこのライヴ体験、東京と横浜の全公演に足を運び、忘れようもないほどに記憶に刻み込みました。
90125Yesは、アルバムのリリース間隔こそ長かったものの、珍しくメンバーチェンジもせずに80年代を駆け抜けたので、このラインナップは盤石で、黄金期メンバーの再集結は見果てぬ夢に終わるのだろうと、当時の私は諦めていました。
そして私が、Yesに興味を持つきっかけとなったギター・ヒーローSteve Howeが、ASIA、GTRの商業的成功とは裏腹に、バンドのリレーションシップに失敗しているのを繰り返し見てきて、いたたまれない気持ちでいた80年代終盤。正に起死回生の一発に思えたのが、ABWHでした。
なんといっても全盛期メンバーの4/5が揃った事、特に「Close to the Edge」をレコードに残したものの、一度もライヴ演奏せずに去ったBill Brufordが戻ってきたのは、私のような若輩ファンにとっても奇跡の出来事に思えました。
Billは正に字義通りのProgressiveを体現するドラマーでしたので、彼が連れてきたTony Levinのサポート含め『ただの懐メロで終わるワケがない』という期待感もありました。
当時はまだ、Chris Squireの重要性は今ほど言われておらず、時には「目立たない」「静かな」メンバーとして紹介するメディアもあるほどでした。故に私も、彼の不在を殆ど気にしていませんでした。なんなら「生意気な若造」Trevor Rabinを擁護してYesの看板を譲らない巨漢のヒール、くらいにしか思っていませんでした(ただBig Generatorでの私のお気に入りは、彼のベースが大活躍するI'm Runningでした)。
今は勿論、ChrisがYesで果たした役割の重要性(音楽、運営どちらも)と当時の正当性、Trevorの並外れた才能も理解しています。
ABWHの既発ライヴ作品「An Evening of Yes Music Plus」は、既知のとおり病欠したTony Levinに替わって、Billのもう一人の盟友Jeff Berlinが参加しています。そのため、フルタイムでサポートしていたTony参加音源の方がレアになってしまっています。
指に長い「とんがりコーン」を装着したり、チャップマン・スティックを駆使した先進的な演奏には、本当に痺れましたし、シモンズのデジタル・ドラム要塞を縦横無尽に操るBillとのコンビネーションも最高でした。
本作の国内盤は、NHKホールでのオンボード音源も収録との事。Tonyの演奏が聴けます!
でも、高いんだよなあ…。
余談ですが、未だにBill Brufordの日本語表記には揺れがありますね。
私も世代的には「ブラッフォード/ブラフォード」で覚えたクチですが、自伝が出版された辺りからは意識して「ブルーフォード/ブルフォード」と記述するようにしています。過去のエントリーではブレの名残があって「ブルッフォード」とか書いちゃったりしていますが(笑)
私にとって1970年代のプログレ全盛期は、全て1980年代以降の後追いです。80年代の私はほぼ学生期。小遣いを貯めたりバイトをしてレコードを買っていました。当時は貸しレコード屋なんていう店も流行っていましたが、16歳くらいまで家にはヘボいラジカセしか無かったので、殆ど利用しませんでした。それに、同時代の話題作、ヒットチャートも欠かせなかったので、旧作は2~3ヶ月に1枚程度、所謂名盤と呼ばれる作品を買うのがやっとでした。ただ、当時はテレビもFMラジオも洋楽番組が沢山放送されていて、古い音や映像に触れる事ができたので、それらから受けた影響も大きなものでした。
そんな私が後追いターゲットとして最優先したのはYes。次いでKing Crimson, Led Zeppelinでした。その当時から音楽雑誌では、10年~15年前の作品を「名盤」として紹介してくれるコーナーもあったので、Pink Floyd, Genesis, Rushなどは、そんな感じでピックアップされたものだけを買って聴いていました。
こうして歳を取ると10~20年前、ヘタすりゃ30年前ですら、つい最近のように感じますが、10代にとってのその差は、とてつもなく大きな隔たりに感じられたものです。だって、物心もついていないガキンチョ、もしくは生まれてすらいない時代の話ですからね。
でELPなのですが、結局レコード時代には1枚も買う事がありませんでした。TV放送されたいくつかの映像には感動しましたし、FMエアチェックした曲も少なからずありました。その当時は、Keith Emersonが音楽を担当した映画「幻魔大戦」のテーマ曲も、ラジオでよくかかっていた記憶があります。ともあれ、ELPをしっかり聴いたのは、CD化された90年代にようやく、という感じです。
これはDeep Purpleにも通じるものがあって、特に背伸びしたい10代男子にとっては、ELPとDeep Purpleはちょっとおバカに感じられたのです(笑)。私は結局いまに至るまで、どのバンドでも歌詞を深堀りする事など殆どしないおバカのままなのですが、若かりし頃はちょっと賢くニヒルに感じられる雰囲気が好きだったのだと思います。だから、この偉大な2バンドに関しては、後にCDを買ったものの、1枚もレコードを持たず仕舞いで終わってしまいました。
それでも、10代の頃からの、ELPのお気に入りの曲は幾つかありました。
コレとか
後に出たビデオは高額で買えず(ほぼ同じ年代に出たYes / 9012Liveを選んでしまいました!どちらも¥10,000以上!学生には厳しい価格設定でした)、レーザーディスクは再生ハードさえ買えず、高校に上がってから懐かしのレンタルビデオで1度だけ観て、そこから悠久の時を経て、最近になってやっとYoutubeで再会できたライヴ。
これに行けなかった事で、私の初コンサートはこの5年後のYes ~ Big Generator Tourとなり、その後もYesの来日には何度も足を運びましたが、ASIAは結局ただの一度も観ないまま、John Wettonが他界してしまいました。この時だけスポット参加したGreg Lakeも既に鬼籍入り...
そして約40年の時を経て、ようやく手にしたこのボックスセット、我が家のBlu-rayレコーダーが故障したままなので、画も音もレストアされたという映像はまだ観る事ができていません…
しかし、です‼
MTVが総力を結集し世界中に衛星生中継した12/7、その前日の12/6のオンボード音源が2枚のCDとして収められ、その音質、演奏ともに最高すぎて、それだけで既に『刻への浪漫(敢えて中二っぽい当て字・笑)』を味わう事となりました。この数年、YouTubeで観られるライヴ映像に、ハマりにハマったのが、このGenesis Piano Projectです。
Angelo Di LoretoとAdam Kromelow, 二人のピアニストによるユニットで、これまではライヴとYouTube配信で活動してきました。
そんな彼らですが、遂にフル・アルバムがリリースされました。
収録曲はもちろん全曲Genesisのカヴァー。2nd「侵入」から7th「静寂の嵐」までの楽曲から選曲されています。
Apple Musicでは10/10にフル・アルバムの配信がスタート。その少し前には「サルマシスの泉」が先行配信されていました。
レコーディング場所はなんと!
Genesisのオリジナル・メンバーが、学び育った寄宿制学校「Charterhouse」にて実施されたとの事です。YouTubeで数曲、その様子を観る事ができます。
なんだかんだ言って、めちゃめちゃ楽しみにしていた7年ぶりの新譜です。
10/1 に日付が変わった0時、直ぐにApple Musicにアクセス。4時近くまでリピートして聴き込みました。そして3日経つ今も、時間があれば聴いています。とはいえ、まだ印象が固まりません。スルメ・タイプの作品かもしれません。オリジナル・メンバーは3人生存していますが、現ラインナップには含まれません。
残念には思いますが、個人的には現メンバーに不満はありません。
Jon Anderson復帰を望む声は絶えませんが、いろいろ無理なのでしょう。
Bill Bruford & Tony Kayeも、本人たちの状況や意思としても無しです。
ギターのSteve Howeがプロデュース。Geoff DownesやBilly Sherwoodという、プロデュース業に長けたメンバーがいる中、遂に最長老がYes作品の総監督を務めました。
全11曲中、Steve作が6曲(Jon Davisonとの共作1曲含む)。そのためか、彼のギターはかなり楽しめます。時としてライヴで感じるようなヒヤヒヤもなく、名演を聴けます。エレクトリックは70年代中期を想起させるような緊張感や抒情性がありますし、幾つもあるSteveのトレードマーク「ペダルスティール」「ポルトガル・ギター」なども随所で印象的に響き渡っています。
アコースティック・ギターも冴えていて、澄んだ音色が響くさまは、かつてのWindom Hill作品のようです。
通して聴いた印象として、先行配信の「The ice Bridge」は、結果として他人の曲を転用したモノ、という事もあって異質だったという事。エッジが効いていて、キーボードも大活躍で、リードトラックとして否が応にも「Yes復活(何度目のコピーだ)」の期待感を煽る佳曲でした。
ですが、配信第二弾「Dare to Know」で「ん?」となり、アルバム全体としては、そちら側の印象が強い、とても穏やかな作品として世に出ました。
そういう意味では前作「Heaven and Earth」の延長線上にあると言えるかもしれません。また、Billyがいる影響か(良い意味です)「Open Your Eyes」「The Ladder」、はたまた彼のバンドWorld Tradeとの近似性を感じる箇所も少しあります(The Western Edgeが顕著です)。
個人的に印象的だった曲を下記に綴ります。
- The Ice Bridge:
作者問題も含め、過去のエントリーで書きましたので、今回は別の切り口で。
Cパート「Interaction」で繰り広げられるギターとキーボードのインタープレイは、本作一番の聴きどころではないでしょうか。
うろ覚えですが、2003年頃のライヴで繰り広げられた「South Side of the Sky」での、Steve & Rickの応酬を思い出します。
また、曲の骨組となったキーボード・パートは丸っきりFrancis Monkman / The Dawn of an Eraですが、JonDが作った歌メロは完全なオリジナリティがあり、そのクオリティも歌唱も最高です。
- Leave Well Alone:
琴のような弦楽器のイントロはGTR「Here I Wait」を思い出します。
SteveはASIA「Heat of The Moment」で琴を実際に使用していたので、この曲でも使っているのかもしれません。
SteveとJonDが低いテンションで、ダーク&トラディショナルなメロディをユニゾンで歌うさまはミステリアス(笑)。
そしてCパートの"Wheels"は、Würm (Starship Trooper) 再び!という曲でした。もっとスロウ&メロウ、そして三拍子のワルツですが、3コードのギターインスト・パートという点で「Würm pt.2」と言ってもよさそうです。
- Mystery Tour:
曲名の通りThe Beatlesに言及しており、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの名や彼らの曲名だけでなく、ブライアン・エプスタイン、ニール・アスピノール、マル・エヴァンズといった重鎮関係者の名前まで出てきて、音の方では「Strawberry Fields Forever」でお馴染みのメロトロン(フルート音)も出てきます。
この曲と次曲「Damaged World(Steve 作/歌)」を聴いたとき、単なるイメージなのですが、かつてのスーパー・グループ「Traveling Wilburys」が頭に浮かびました。気の抜けた軽快さというか、Yesもそういう季節に来ているんだなぁ、というか…。2曲ともSteveの曲です。
Yesは初期メンバーは特に、The Beatlesの影響下にありました。1stアルバムでは「Every Little Thing」を、後のライヴでは「I'm Down」のカヴァーが演奏されてきました。Alan WhiteはJhon Lennonのソロ作で仕事をしています。Steveも過去のインタビューで、何度もThe Beatlesに言及していたのを読んだ記憶があります。
CD2は3曲全てSteve作(1曲はJonDとの共作)という情報があったので、リリース前はいつものSteveのギター・ソロ的な「おまけ」かなと思っていましたが、蓋を開けてみると本作では意外にもギター・インスト曲がなく、全曲がバンド・アンサンブルでした。
SteveとJonDが、単独、共作合わせてそれぞれ6曲提供。GeoffとBillyはJonDとの共作でそれぞれ2曲だけ。この2人は作曲面/演奏面ともに、もっとしゃしゃり出ても良かったんじゃないか、とも思います。Alan Whiteもそうです。在籍歴は誰よりも長いのだから…。
ドラムに関しては、Alanはどれだけ叩けているのか、Jay Schellenとの割合など気になるところですが、正直分かりません。
総評としては、Steveのカラーが強く、彼のソロ・アルバムをYesとして仕上げた、という印象が少なからずあります。ただ、Yesは過去にもそういった経緯の作品があるグループなので、それでも良いのかもしれません。
新バンドだった筈の「Cinema」を、Yes再結成に寄り切った「90125」。
Billyと作っていたChrisのソロ・プロジェクトを転用した「Open Your Eyes」。
Bugglesの積年の恨みを晴らした(笑)「Fly From Here」(および ~Return Trip)。
今回はコロナ禍で、英米に分かれているメンバーの行き来も難しい中、作品として昇華させたSteveが頑張ったという事ですね!
良作と思いつつも、いまだ私なりの評価が定まらない本作をしっかり受け止めるために、過去作も少し聴き直しています。
・Heaven and Earth (2014)
・Tormato (1978)
雰囲気が似ているこの2作品を知り直す事で、何か見えるような気がしていますが、久しぶりにTormatoを引っ張り出したら、過去に見えなかった部分が色々見えてきて、改めてTormatoの良さを知る、という結果になりました(笑)。
コロナ禍も世界中でワクチン供給が進み、次のフェーズに移行できるか?というタイミングで、Yesニュー・アルバム発表(2021/10/1予定)のアナウンスがありました。純粋な新作としては2014年Chris Squireの遺作となったHeaven and Earth以来7年ぶりとなります。
間には2011年のFly from Hereを1980年DramaのラインナップでリニューアルしたFly from Here - Return Trip(2018年)、数年ツアーに帯同していたRick Wakemanの息子Oriver Wakeman在籍時のスタジオ・レア音源を再編したミニ・アルバムFrom a Page、他にも数々のライヴ・アルバムのリリースがありましたが、スタジオ・フル・アルバムとしては本当に久しぶりです。
Chris没後、ライヴでは長い事そうなっていますが、本作は遂にオリジナル・メンバー不在のYes作品に。
Steve Howe (G, bVo)
Alan White (Dr)
Geoff Downes (Key)
Billy Sherwood (B, bVo)
Jon Davison (Vo)
の五人に加え、長年体調が思わしくないAlanのサポートとしてJay Schellen (Dr)が参加しています。
そしてプロデューサーは、最古参で現Yesのリーダーと言えるSteveが担当。BillyやGeoffといった、プロダクションのキャリアがある二人を擁するラインナップにあって、これはかなり驚きでした。Steveはギター職人気質だし、自身のソロワークでのプロデュースしか知りませんので。
不安と期待(不安が先。笑)が入り交じる中、昨日7/23に、新曲The Ice Bridgeの配信が開始!早速YouTubeとApple Musicで聴きました!
作はJon Davison / Geoff Downes
7分を超える組曲形式で、ホーン系シンセのファンファーレで幕を開けるイントロは、ASIAっぽい、もしくはELP の庶民のファンファーレやTouch and Goを彷彿とさせます。曲の後半ではモーグの音色でギターとの応酬もあって、圧巻です。
Steveのギターは伸びやかで、ライヴ時のような不安を感じさせません(笑)。実にSteveらしい、クリアに近い、柔らかく歪ませたトーンが心地よいです。RelayerやAwakenのような、ひりひりした緊張感もあって、近年で一番良いプレイでは?と思わせてくれます。
JonDのヴォーカルは更に磨きがかかっています。これまでのTrevor HornやBenoit David以上にJonAの声質に近いですが、オリジナリティがしっかりあり、似ているかどうかなど気にする必要もないほど、今のYesにマッチしています。
BillyもChrisの申し子、とまで言えるかどうかは分かりませんが、頑張ってブリブリ言わせています。
ドラムはどちらが叩いているのでしょうね。AlanはYesブランドを保つための名前だけなのかどうなのか…
歌詞をざっと見たところ、コロナ禍の人類の危機を、原始時代の人の歩みになぞらえているのかな、と感じました。また、"scared fire" "All eyes to the east"といった歌詞は、五輪にも言及しているのかな?それともコロナ発生源であり、経済的にも軍事的にも急拡大している中国?どうなんでしょう。抽象的なところはYesismと言えそうです。
前作Heaven and Earthは、良くも悪くも牧歌的、良いメロディやフレーズもありましたが、緊張感が皆無で演奏もスカスカに軽く、私的には彼らのワーストでした。
今回はChris不在、バンドのプロデューサーとしては未知数のSteve制作、HaEとほぼオナメンという事もあって、アルバムのアナウンスを知った時は正直不安しかありませんでした。
しかし、先行曲The Ice Bridgeを繰り返し聴いて、アルバムが非常に楽しみになりました!
【追記】
新曲の反応を知ろうとtwitterを見ていたところ、思わぬ情報を見つけてしまいました。元Curved AirのFrancis Monkmanが1978年に発表したエレクトロニック作品「The Dawn of Man」が、この曲そのものだったのです!
若かりし頃にFMで聴いて以来、実に35年を経て判明した、私にとっては奇跡の1曲です。
以下は既に記憶が曖昧な部分が多々あり、Youtubeにアップされていたラジオ番組の音源を頼りに記憶と合致した内容が多く含まれます。
1985年、洋楽を聴き始めて数年が経ち、十代も半ばに差し掛かった頃、MTVでは飽き足らず昔の音楽にハマり始めた私は、難波弘之さん、渋谷陽一さんがDJを務めるラジオ番組をよくエアチェックしていました。
特に当時の私的ロックスター、ASIAやYES(90125)がきっかけで、プログレに引っ張られていました。
1985年5月放送のFM東京「マツダ・ザ・ミュージック(プログレ今昔物語)」を、いつものようにエアチェック。テープが勿体ないのでトークは録らず、音楽のスタート/エンドをタイミングよくボタン操作するのがルーティンになっていました。
アーティスト名、曲名はその場でメモったり、新聞やFM雑誌で確認したりしてインデックス・カードに書き込んでいたので、聞き間違いや聞き落としも頻発していました(笑)
そのカセットテープは転居を繰り返す中で処分してしまい、音源を失って既に長いのですが、上に貼ったYoutubeを見つけて鮮明に思い出しました。
松原みき / 真夏のゲーム
Jethro Tull / Bouree
ジェラルド / 今宵使者は来たりぬ
ELP / Abandon's bolero
Aviary / Soaring
Kansas / How My Soul Cries Out
U.K. / Thirty Years
ジェスロ・タル、ELP、U.K.辺りはその後 自力で該当する音源を見つけましたが、この放送回で一番に感動した曲がつい先日まで分からず終いで、心の隅に引っ掛かりつつも殆ど諦めていました。
曲前のトークがELP(パウエル)再結成の話からFocus再結成に展開した事もあって、そこだけ私の中でおかしな結び付けができてしまい、長い事Focusの曲と思い込み、彼らのアルバムを虱潰しに聴いた事もありました。
曲名もトークからのうろ覚えで「ソーリー(sorry)」と聞き間違えていたので、そりゃ見つかる筈もありません(笑)
よくよく考えればFocusとは似ても似つかない音楽性なんですが、泣きのギターはもしやヤン・アッカーマン?、ヨーデルの超絶ヴォーカルだから後期はポップに寄せてファルセットコーラスも?でも音は全然似てないよなぁ、と迷いながらもFocusはFocusで楽しんだ時期がありました。
この6月末から、両親の介護で実家帰省した事がきっかけで、もはや家財などは跡形もない元自室で過ごしているうちに、このラジオ番組の事を思い出しました。
過去にも何度か検索はしていたのですが、ヒットした事が一度もなく。
今回、実家でたまたまyoutubeでサーチしてみたら、まさかの番組音源がまるっとアップされているではありませんか!
しかもyoutube上の情報を見るとアップされたのは、ほんの一カ月前!
35年を要したとは言え、なんというタイミングでしょう!
やっと分かったAviaryというバンド。この35年間、私の音楽人生に全くカスりもしませんでした(笑)
1979年に公式アルバムを1枚だけリリースして散った薄幸のバンド。
LAメタル前夜ともいうべきブロンド・ロン毛にヒョウ柄ジャケット、革パンというダサいルックス。ジャケット・アートもジャンボ旅客機の両翼が猛禽類の翼という超絶ダサ・ジャケ(笑)。
なんですが!
音楽性の高さはなかなかではないでしょうか!
当時から今に至るまで、Queen,Sparks, 10ccなどが引き合いに出されていたようですが、ただの模倣には終わらずオリジナリティもしっかりあります。
売れなかったのは、音楽性と相容れないヴィジュアル/イメージ戦略の失敗としか思えません。
当時15歳の私が感銘を受けた曲「Soaring」は、長年得られなかった情報にノスタルジーなどのバイアスがかかって美化されただけかも、という杞憂がありましたが全くそんな事はなく、当時と同じ感動がありました。
戦争のパイロット哀歌かつ、緊張が続いた冷戦にもサラッと警鐘を鳴らす社会派の歌詞。泣きのメロディ、重厚かつ美しいファルセット・コーラスのサビ、歌いまくるギター・ソロ、ピアノやストリングスの抒情が詰め込まれた、正に隠れた名曲でした。
80年前後に興ったポンプ・ロックに含まれるらしいですが、そのあたりはよく分かりません。とにかく唯一のオリジナル・アルバムは再評価されて然るべきクオリティがあります。
この放送回のゲスト、故 松原みきさんが紹介した2曲は本当に私の琴線に触れまくりで、もう一曲の「ELP / 奈落のボレロ(ロンドン・フィル競演バージョン)」はスタジオ・オリジナル・バージョンよりも、他の数あるELP名曲群よりも、一番聴いたかもしれません。
それにしても長年探し求めていた曲を、それをオンエアしたラジオ番組丸ごと聴けてしまった奇跡。一気に当時にタイム・スリップした気分を味わえたひと時でした。