アルバムのリードトラック2曲「Cut from the Stars」「All Connected」を事前に何度か聴いて、イメージはできていました。2021年の前作「The Quest」に近い、なんとなく良いんだけど、全体的に印象が薄い、そしてSteve Howeのソロ作に近い、良くも悪くもアットホームな感じ、とでも言うんでしょうか…。
Steveは1970年代黄金期のYesにおいて、重要なソングライターだった筈なんですが、作曲にプロデュースにと活躍している「The Quest」「Mirror to the Sky」の2作に関しては、微妙な気持ちにさせられます。彼のソロ作を聴いているような、ちょっと欠伸が出そうな感じ。 やはりJon Andersonという相棒がいたからこそ、当時はSteveの素材がより輝いたのかもしれませんね。 最近読んだJon Andersonのインタビューで、記者が「私にとって、あなたとSteveはProg界のジャガー&リチャーズ。コンビ復活を望みます」と懇願するように伝えていたのが心に残っています。
通算23作目のスタジオ・アルバムという事ですが、数えてみると合わない…。 ABWH、スタジオ作とライヴ混合のKeys to Ascension 1&2、Buggles Yesを再現するために理不尽に追い出されたOliver Wakemanが編纂したミニ・アルバム「From a Page」なんかも含めるのかな??
1. Yes(1969) 2 Time and a Word(1970) 3.The Yes Album(1971) 4. Fragile(1971) 5.Close to the Edge(1972) 6.Tales from Topographic Oceans(1973) 7. Relayer(1974) 8. Going for the One(1977) 9. Tormato(1978) 10. Drama(1980) 11. 90125(1983) 12. Big Generator(1987) 13. Union(1991) 14. Talk(1994) 15. Open Your Eyes(1997) 16. The Ladder(1999) 17. Magnification(2001) 18. Fly from Here(2011) 19. Heaven and Earth(2014) 20. The Quest(2021) 21. Mirror to the Sky(2023)
23作目とするための候補…(何だコリャ・笑) ・Anderson Bruford Wakeman Howe(1989) ・Keys to Ascension 1(1996) ・Keys to Ascension 2(1997) ・keystudio(2001) ・Fly From Here - Return Trip(2018) ・From a Page(2019)
ケッサクなのは、最後の約5分(50:22あたりから)。「Going for the One~究極」のイントロに合わせ、Steve, Chris, Alanが揃ってピアニカを吹き、Rickがその指揮者をやっている場面。4人とも真面目にふざけているのが、とても微笑ましく、サイコーに面白い!
レコードにはピアニカの音なんて入ってませんでしたよね??(笑)
その直前の場面(43:34あたり)では、とても珍しいSteveとChris二人による、息抜きアコースティック・デュオも! Bob DylanとEverly Brothersのメドレーを、よれよれコーラスで弾き語っています。 途中でSteveがギターをChrisに任せ、本に目を落とし、ページをめくりながらテキトーに唄ったりと、リラックスしたじゃれ合いのようで、とてもレアな一幕を楽しめました。
Yesファンの多くは、フェイヴァリット・ナンバーに「危機~Close to the Edge」「悟りの境地~Awaken」「燃える朝焼け~Heart of the Sunrise」などを挙げ、もしかしたら私くらいの世代(アラフィフ)だと「ロンリー・ハート~Owner of a Lonely Heart」という人も少なからずいるかもしれません。
私も全部好きです!
当時中学一年生で、まだロックもポップスもよく解っていなかった時の事です。プログレもハードロックも、パンクもニューウェイブも何も知らず、ただ「洋楽」ってカッコいいなーと思っていた時代です。 1980年くらいからFMのチャート番組を毎週聴くようになって、その番組で「Heat of the Moment」を最初に耳にしました。当時のこの曲の第一印象は、普通に「良いね~」という程度でした。2ndシングル「Only Time Will Tell~時へのロマン」を最初に聴いた時のインパクトの方が強烈で、イントロのシンセ・サウンドにすっかりやられてしまい、なけなしの小遣いでアルバムを買わなければ!と、一大決心をするに至りました。そして1982年はずっと、ASIAとTOTOばかり聴いて過ごしました。
- Heat of the Moment
Steve Howeらしからぬパワーコードで始まるこの曲は、シンプルなポップロックに聴こえますが、いろいろ凝った要素があります。 先ずヴァース・パートは3拍子と4拍子を組み合わせた変拍子になっていますが、それを全く感じさせない自然さが素晴らしい。 そして、ASIAというバンド名に説得力を付けるためなのか、日本の楽器、琴も使われています。 曲の構成、キー、コード進行は、Geoff Downesが在籍したBuggles「Video Killed the Radio Star(ラジオスターの悲劇)」から持って来ていますが、上記の変拍子の導入や、ギター・オリエンテッドなロック・サウンドによって、簡単にそうとは分からないようになっているのは流石!非常に巧妙に作られたポップソングです。
BS-TBSの名曲を辿る番組「Song to Soul」で、かつて取り上げられましたが、本人たちや制作時の関係者の証言は、とても興味深かったです。 ・ゲフィン・レコードからアルバムを牽引するリードトラックが欲しいと言われ、最後の最後に作った。 ・復活請負人のA&R, John Kalodnerが、歌詞作りに難航していたJohn Wettonに対して、言葉のアドバイスをした。(Kalodnerは後にWetton/Downesの作曲チームをゴリ押しして、結果ASIAの成功を縮小させた人物だと思っているので、個人的には良い印象がありません) ・John Wettonのたっての願いで、バック・コーラスも含めた全てのヴォーカルをJohnひとりで録った。 ・一聴してシンプルに聞こえるイントロのコード・ストローク・ギターは、さまざま異なる機材を通した多重録音で作られた。
Steve HoweとJohn Wettonの共作曲。元ネタはSteveがYes加入前の1968年に活動していたBodastの「Come Over Stranger」。この曲の後半に登場するアルペジオが、One Step Closerではイントロからヴァースにかけてメイン・フレーズとして使われています。 Bodastは、レコード会社倒産のあおりを受け、完成したアルバムを世に出せなかったので、ASIAの一部としてでも日の目を見る事ができたのは何よりです。(Bodast自体も後年に、CDでもサブスクでも聴けるようになって、実はYesの名曲群でもSteveのアイディアが転用されました) 歌がマズいSteveですが、ここではJohnとハモりながらリード・ヴォーカルを取っています。 このデュエットは全く違和感なく、素敵に聞こえるから不思議! 因みにBodastの元曲は、Small Facesのようなモッズ・サウンドで、これはこれで違う魅力があります。
- Time Again
全員の共作によるA面ラスト。 ヘヴィーなユニゾンによるリフがオクターブを上がっていくイントロは、SteveとGeoffにとっては前作にあたるYes「Drama(1980)」のMachine Messiahを彷彿とさせます。 また、ヴォーカル・パートに入ってからのCarlのドラミングは、ELPのFanfale for the Common Man(庶民のファンファーレ)を想起させるシャッフル。それぞれのキャリアを総括したような、とてもカッコいい1曲です。
Heat of the Momentシングルのカップリング曲で、アルバム未収録。後に12インチEP「Aurora(1986)」や、コンピ盤を含む幾つかのCDに収録されました。 ハープシコードの印象的な音色から始まる、愁いを帯びた名曲ですが、アルバム収録曲とは確かに毛色が違うのも分かります。 JohnとSteve共作の、忘れてはいけない1曲です。
Jeff Beck, David Crosbyの訃報を受けて、このエントリーを書きかけのまま保留しているうちに、高橋幸宏さん、鮎川誠さん、TelevisionのTom Verlain、そしてタラちゃんの声でお馴染みの貴家堂子(さすがたかこ)さんとほぼ同時に、Burt Bacharachの訃報が。 今年は年初から、エンタメ巨星のお召し上げが激しいです…
私が好きなYesは、その初期にThe ByrdsやBufallo Springfieldをカバーしていました。バーズを最初に耳にしたのはMTV番組で流れた古い映像の「So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star」 次にYesの1stに収録のカバー曲「I See You」 その後にテレビで放送されたアトランティック・レコード40周年コンサートでのCSN「Suite: Judy Blue Eyes」 そうやって辿っていくうちにバーズを集め出し、CSN&Yを聴いて、という流れでした。 Yesが影響を受けた音楽として聴いているうちに、好きになったアーティストの一人です。 2015年の東京国際フォーラムでのCSN来日公演は圧巻でした。
- Tom Verlaine - Jan/28/2023
Televisionを初めて聴いたのは1992年の再結成アルバム「Television」でした。
その頃の私は、中学生の頃から始まったプログレ求道を一旦停止し、当時隆盛したオルタナティヴ・ロックに傾倒していました。それらのルーツを遡る作業も並行していたのですが、まだVelvet UndergroundとLou Reed, David Bowieに着手したばかりで、NYもUKもパンクにまで辿り着いていませんでした。
ポップ・ミュージック、映画音楽の巨匠も、先日他界してしまいました。 私は彼の音楽をほんのさわりだけ聴きかじった程度の超ニワカですが、それでもいくつか記憶に残る好きな作品があります。 「Dionne Warwick / Say a Little Prayer(小さな願い)」は暫く、彼の作品とは知らずに楽しんでいました。とてもポップでキャッチ―なのに、変拍子が多用されていて、それに気付くと「トリッキーな作りだなぁ」と思うけれど、ただのポップソングとして楽しめる事が大前提になっている。とても高度な構成を聴き手に気付かせない、インテリジェンス溢れる音楽家でした。 1990年代前半、渋谷系と言われる小さなムーヴメントがあり、そこで彼の音楽が持て囃されたのを覚えています。その中で一番印象に残っているのは「007/Casino Royale」のサウンドトラック。 映画は未見ですが、007シリーズのパロディで、本シリーズとは一線を画すものらしいです。 パロディらしい、キッチュかつコミカルにデザインされた音楽は、それでも上品でお洒落、楽しさに満ちたものでした。
その直後のUnion事変で大きく失望し、「Yesはもういいかな…」と思うようになっていました。(とはいえそう簡単に離れる事も出来ず、Union@武道館には行きましたし、アルバムもずっとフォローし続けていますが) せっかくFragileとClose to the Edgeのメンツ80%が揃って、その上Tony Levinもパーマネントでサポートしていて、次作「Dialogue」も完成間近というのに、
1st「Leasure」の頃は、シューゲイザーのノイズと、ダンサブルなマンチェスター・サウンド(Happy Mondays, Stone Rosesなど)を合わせたような、ウマい音を出していました。 次作「Modern Life is Rubbish」から始まった彼らのブリットポップ期に、Peter Gabriel時代のGenesisと重ね合わせて見る事が多くありました。 中産階級のお坊ちゃまで、賢くヒネていて、意識的に英国臭くしているところとか。フロントマンがイケメンなのにかなりハッチャけてるトコとか、ギタリストが黒縁メガネで演奏がトリッキーなトコとかも(笑)。
My Bloody Valentine / Only Shallow(1991)
シューゲイザーのラスボスが彼らMBVでした(The Jesus and Mery Chainと双頭ですね)。このアルバム「Loveless」は、もはや説明不要の90年代の超名盤。私も発売日に買って、何度も何度も繰り返し聴きました。敢えて一言で説明すると「ギターノイズのウォール・オブ・サウンド」でしょうか。ダビングしたテープを車でかけていたら、同乗していた当時の彼女に「このテープ伸びてるの?」と言われました(笑)。
本作は何故買ったのか全くもって解らないのですが、大当たりだった1枚です。 カナダのハードコア・パンク・バンド5作目。実は彼らも、70年代末から活動を始めています。音楽もビジネスも肥大化した恐竜バンドへのアンチテーゼであったUKパンク勢と異なり、彼らも上記のFaith No Moreも、プログレからの影響を受けているところが実に興味深いです。まぁ大体、見え隠れする要素はヘヴィー&ダークなKing Crimsonなんですけどね。
Chemical Brothers feat. Noel Gallagher / Let Forever Be(1999)
初期Genesisのライヴや未発表音源を編纂するにあたり、90年代まで活躍したTony Banks(key,g), Mike Rutherford(b,g), Phil Collins(vo, ds)に加え、1970年代にグループを去ったPeter Gabriel(vo)とSteve Hackett(g)も一堂に会しました。それがきっかけとなり、名作「The Lamb Lies Down On Broadway~眩惑のブロードウェイ(1974)」から、この1曲がリメイクされました。プロデュースはTrevor Horn。メインボーカルはPeterで、コーラスおよびクライマックスの1節をPhilが担当しています。Genesisはこの時をきっかけに、何度もプログレ期の5人で復活か!? と期待を持たせますが、結局はいつものトリオで2回、大規模コンサート・ツアーをやって終わりました(2007と2021~2022)。でもそれが彼ららしいし、5人で再結成して陳腐になってしまう事を避けているようにも思います。Philも健康問題を抱えて、ヴォーカルはともかく、もはやドラムは叩けないでしょうしね。
シブがき隊を好きでもなんでもなかったのですが、彼らの「Zokkon命」でパクられていると知り、野次馬根性で興味を持った1曲(笑)。当時は家にラジカセしかなかったので、カセットテープでアルバムを買うのが殆どでしたが、何故か本作はレコードで持っています。リアタイでは次作(1983年)からの「(You Can Still)Rock in America」「Sister Christian」の方が、より多く耳に入ってきたのを覚えていますが、その後ハードロックやLAメタルには全く興味が湧かなかった私でした。
The Cars / You Might Think(1984)
カーズはこの少し前の「Shake It Up(1981)」から知っていましたが、80年代を代表するのはやはりこの曲でしょう。凝りに凝って、しかもおバカなMVは当時かなり話題になりました。教室で友達同士でこのアルバム「Heartbeat City」を貸し回ししたのを思い出します。
「Close to the Edge」直後の全盛期、滞在時にJon&Steveで「Tales from Topographic Oceans」の構想を練ったという1973年の初来日時、私はまだ3歳の幼児。それから実に15年もの時を隔てた2度目の来日公演が、私にとっては人生初のライヴ体験となったわけですが、残念な事にかなり記憶が薄れてしまっています。
なんといっても全盛期メンバーの4/5が揃った事、特に「Close to the Edge」をレコードに残したものの、一度もライヴ演奏せずに去ったBill Brufordが戻ってきたのは、私のような若輩ファンにとっても奇跡の出来事に思えました。 Billは正に字義通りのProgressiveを体現するドラマーでしたので、彼が連れてきたTony Levinのサポート含め『ただの懐メロで終わるワケがない』という期待感もありました。
ABWHの既発ライヴ作品「An Evening of Yes Music Plus」は、既知のとおり病欠したTony Levinに替わって、Billのもう一人の盟友Jeff Berlinが参加しています。そのため、フルタイムでサポートしていたTony参加音源の方がレアになってしまっています。 指に長い「とんがりコーン」を装着したり、チャップマン・スティックを駆使した先進的な演奏には、本当に痺れましたし、シモンズのデジタル・ドラム要塞を縦横無尽に操るBillとのコンビネーションも最高でした。