2012年11月5日月曜日

Genesis Revisited II / Steve Hackett


ジャケットアートに関していくつかの書き込みを見かけたが、僕自身、宮城で震災に遭った一人としては、少々キツい絵柄だ。収録曲「A Tower Struck Down」のイメージだそうだが、この曲はジェネシスではなくてハケットのソロから。「Genesis Revisited」なのに、それで良いのか? ハケットさん。
(追記:先日テレビを見ていて気づいたが、高潮の時に浸水するヴェネツィアのサン・マルコ広場の鐘楼ですね。それにしたって、こんな水の入り方はなかろうに。)
ブックレットには収録曲をモチーフとしたアートワークが他にも複数収められていたが、なぜこれをフロントカバーに持ってきたのだろう?
日本盤は別のアートワークが用意される、という記事も見たが、現時点ではまだ確認できていない。この人のアルバム・ジャケットは前妻キム・プーアが手がけたものをはじめとして、不気味で趣味が悪いものが多いので、改善を求む!

それにしても2枚組。Supper's Readyもフルスケールで再現していて、かなりボリュームがある。「幻惑のブロードウェイ」からの曲が大曲を挟むように配置されていて、そのレイアウトが、同じ2枚組だった「幻惑〜」の雰囲気を想起させる。
ゲストも多彩。おなじみジョン・ウェットン、弟ジョン・ハケット、フィル・コリンズの息子、マリリオンのギター、元It Bitesのフランシス・ダナリー、最近のハケット・バンドからはロジャー・キング、元Kaja goo gooのニック・ベッグスなどなど、30名前後のサポートの元で完成した作品となった。

内容はというと、殆どの曲はオリジナルの雰囲気を堅実に踏襲している。それが現在の演奏技術、録音技術、多彩なメンバーの個性で味付けされて、安心して聴いていられる。
正直ヴォーカルは「ここはピーターじゃないと」と思う瞬間が多くあるが、それは無理な願いというところ。
amazonのレビューでも見かけたが、ジェネシスでは久しく聴けなくなっていた、かつてのトレードマーク、12弦ギターの音もたっぷりと堪能できる。

今回はハケットのソロも数曲リメイクされているが、ジェネシスの楽曲群と同じディスクに収められると、それらは曲によっては弱く聴こえてしまうし、2枚組にして盛るほどやるべき事だったのか?という疑問も感じた。1枚ものの通常版も出るというが、このアルバムを買う人といえば、殆どの人が2枚組を選ぶであろう事が予想できるだけに、ちょっと複雑な気分になる。ハケットのソロ作は個人的に愛聴してきたが、本作に関してはジェネシスの曲と並べなくても良かったんじゃないか?と感じた。

'96 年の初来日時、会場が暗転したとほぼ同時にWatcher of the Skiesのメロトロン(のサンプラー)が響き渡った瞬間、鳥肌が立ったのを思い出す。
あのライブでは、既に本家ジェネシスでもピーター・ガブリエルでも聴く事が叶わなくなっていたClassic Genesisが再現された事、I Talk to the WindやThe Court of the Crimson Kingでイアン・マクドナルドのフルートを聴けた事が何より嬉しかったが、同時にハケット本人のソロ曲が少ししか聴けなかったのが寂しかった。
アルバムはジェネシス・ナンバーで固めてもらって、ライヴでは自身の曲もガンガンにやって欲しい。


それにしても彼も既に60歳を越えているというのに、髪の毛フサフサ若々しいのは何故でしょう。ピーターもフィルもツルピカ爺さんになってしまったというのに。。。
そしてギターの音色は同世代のギタリスト達と比べても若く、演奏技術はますます磨きがかかっている。

2012年10月27日土曜日

ASIA

先日BSの伊藤政則の番組で、ASIA特集が放送された。オリジナル・メンバーで再結成されたのは喜ばしい事だし、できるだけ長く頑張って欲しいと思っているけど、再結成後のアルバムは殆ど聴いていない。(鳥と虎は買いました)
僕にとってのASIAはALPHAまで。ASTRAも'85年当時はかなり聞き込んだけど、その後まで長く繰り返して聴ける作品ではなかった。

だからジェフだけ残って、なんだか分からなくなってからの作品群は全くノータッチ。
それがオリメンに戻ってようやく霧が晴れたような気分ではあるけれど、どうも僕自身が若かりし頃のように夢中にはなれず、二歩も三歩も引いたところで傍観しているような今日この頃です。

そんな状態で見た冒頭のテレビ。凄い4人が集まっているのに、どうも盛り上がらない。
横で見ていた嫁さんは、もちろん彼らに関する知識もなく、いろいろ茶々を入れてくる。

「この人はバック・トゥ・ザ・フューチャーのドクでしょ?」= スティーヴです。

「お爺ちゃんのニオイがしそうだね」=スティーヴです。

「前歯がスキッ歯だね。大きいイボもあるね」=スティーヴです。

「トップギアの人?(きっとジェイムズ・メイ)」=ジェフです。

「眉毛が離れているね」=カールです。

「ナニ人? デカイから米人かと思った。英人には見えない」=ジョン & ジェフです。

ライヴ映像を見て
「(僕が)行きたいって言ってたけど、行かなくて良かったね」
(確かにスカスカの音で、ライヴならではの疾走感も無いように聴こえました・・・)

合間にはファースト・アルバム限定BOXのCMが何度となく挿入され・・・。
「このジャケさぁ・・・ダサいよね?」

僕の中では今まで「あのロジャー・ディーンの作品」という頭しかなかったので、これまでこのアートワークがダサいという考えに及んだ事がなかった!

「ロゴもさぁ・・・ん〜、なんかテトリスみたいでダサいよね?」

ええ!!テトリスのロゴもロジャー・ディーンですから!!

「え〜そうなの!?、アタシ凄くない?」

ええ、ええ、スゴイですね。

確かに映画「40歳の童貞男」の部屋にも、あのドラゴン・ジャケが額縁入りで飾ってありました。ダサさの象徴なんでしょうかね。

ライヴには行かないし、新作もあんまり聴かないけど、僕にとっては「詠時感〜時へのロマン」は忘れられない名作です。CMの限定BOXもかなり前に予約しました。
そういう形で彼らを応援していきたいと思います。


2012年10月12日金曜日

Krautrock初体験!

今更ながら、Can, Neu!, Faustの音楽に触れ、衝撃を受けている。


'90年代初頭にThe Jusus and Mary ChainやMy Bloody Valentineなどを聴いた時に感じた、ノイズと反復リズムが織りなす陶酔感は、なんと!その20年前には既にドイツで提示されていた。

僕が最初にドイツのロックに触れたのは、もう20年近く前になると思う。
確か輸入レコード店で、Canの「Ege Bamyasi」のCDを買ったのが最初だった。

しかしその出会いは、不幸なものだった。タイミング...
今で言うクラウトロックは、その当時は「ジャーマン・プログレ」というような紹介のされ方が一般的だった。いずれにしてもどっちも既に過去の遺物ではあったが、当時ブリティッシュ・プログレに血道を上げていた僕には、「Ege Bamyasi」はそれらと同列にして聴ける類いの音楽ではなく、すぐに棚の肥やしと化して、それ以来この2012年まで全く聴く事がなかった。当時の僕の頭にあった「プログレ」という規格・様式の外の音だった。
そしてその1枚きり、ドイツものはKraftwerkでさえも、聴く機会がなかった。

その後、僕はCDショップで働いていた関係上、1ジャンル(しかも形骸化した)に固執するワケにもいかず、当時流行った前述の英インディーズや米オルタナティヴ、それらのルーツとなったVelvet Underground、Lou Reed、The Stooges、グラム・ロック、NY & UKパンク、その他いろいろヘビメタ以外は極力偏食せずに聴くようになった。
今はCDショップの職も辞して10年以上になるので、新しい音楽に貪欲になる事もないが、ハッと思い立って未聴のジャンルに少し手を伸ばしてみると、たまに想像以上の感動や衝撃に出会う事もあり、それが楽しい。

以前、受け入れられなかったCanをはじめとして、60末~70年代ドイツの音楽にこうもハマれたのは、かつてCDショップ店員として商品知識を掘り下げていった経験が大きいと思う。
ずっと英プログレだけの頭のままだったら、僕はクラウトロックを理解できなかった。
クラウトロックは、言葉として矛盾している「プログレというジャンル」には決して収まらないし、その音からはむしろVelvet Undergroundと同様に、パンク / オルタナティヴ、またはクラヴ・ミュージックの祖としての大きな存在感が感じられる。

そして2チャンネル録音や、テープコラージュ、回転数の上下で曲を使い回すなど、ロー・ファイな制作環境・手法を取りながらも、既に40年経った今も斬新に聴こえる音楽たち。
彼らはみんな時代を数十年先取りしていたし、天才だったに違いない!!

Neu!のオープニング・ナンバー「Hallogallo」の、ちょっとワウを効かせたギターの気持ち良いカッティングは十数年前、スティーヴ・ヒレッジ率いるSystem 7に、印象的にサンプリングされていた。その曲「Interstate」は当時大好きでよく聴いていたが、こんなに時を経てから元ネタに出会うとは。。。



2012年5月11日金曜日

Cinema Show

Genesis 1973年のスタジオアルバムSelling England By the Pound(邦題:月影の騎士)に収録されているCinema Show。
この曲の後半を占めるインストゥルメンタル・パートは、堪らなくカッコイイ。
と同時に、いくつかのバージョンを聴く中で、Genesisというバンドそのものやメンバー個々の「その後」を象徴しているようにも感じてしまう、なんとも言えない曲だ。



このパートは、本当に魅力的なアンサンブルを聴かせてくれる。
トニー・バンクスのアープ・シンセサイザーが唄い、フィル・コリンズのドラムが7/8拍子という変則リズムをグルーヴさせ、マイク・ラザフォードが小気味好いカッティングを奏でる。
しかしどういうワケか、この時期サウンドの要であったはずのリード・ギター、スティーヴ・ハケットは、前半のヴォーカル・パートが終わるとハケてしまい、ヴォーカルのピーター・ガブリエルも、当時のインスト・パートでは得意としていたフルートも聴かせず、何もしていない。(フルートが合う曲でもないが。)
後に大成功を収めた3人の形態で演奏している、初めての曲(パート)。
「月影の騎士」アルバム自体が、コリンズのヴォーカル曲もあったりして、後のGenesisを暗示する要素が鏤められている。

ライヴ映像を見ると、ハケット在籍時でも彼はこのパートでは引っ込んでしまっている。
そして1976年当時、サポート加入していたビル・ブルッフォードは、コリンズとのダブル・ドラムで多いに魅せてくれるが、彼は後にこんな事を言っていた。
「クリムゾンはイエスをバカにしていたし、イエスはジェネシスをバカにしていた。そして俺はその全てに属した事がある」
なんとも自嘲的なコメントだし、バカにしていたのは実際に渡り歩いたアンタだけなんじゃないの?とも思ってしまうが、そう言いながらもそれぞれのバンドで最高のパフォーマンスを残している。
彼のGenesisでの短期活動は、後に自分のジャズ道の資金繰りのために、節操無くビジネス・セッションをこなしていく姿勢の、最初の一歩だったようにも思えるが、まだセッション・マンに成り切らずに、バンドの一員としての主張が感じられる。


最後に、僕のお気に入りのカバー・バージョンを2つほど。


こちらは数年前に、アップしていた本人がアカウントごと消し去ってしまったものだが、最近になって他の誰かが改めてアップしてくれている。
ライヴ盤「Seconds Out」バージョンを土台に、1台のシンセでアープ、オルガン、メロトロンと、キーボードパートの全てを再現し、ライヴで端折られた音をも補完している。





こちらはグランドピアノでのカヴァー。David Myersという人を知りませんでしたが、GenesisのカヴァーなどでCDをリリースしているピアニストだそう。
他の曲も聴きましたが、どれもリリカルで心地よく聴けます。

2012年4月27日金曜日

実家からアナログ盤を回収

先日、初めてクルマで実家に帰りました。
往復800kmの距離なので、帰省の機会を作るのもなかなか億劫。最近は東京への出張時に、休みを合わせられればちょっと立ち寄る程度でした。
今回はふと思い立ちクルマを使ったのですが、そのおかげで長年気にかかっていたアナログ盤の回収ができたワケです。

僕がビニール盤を買っていたのは80年代。その当時に70年代のものを買っていたのですが、当然全てリイシューものです。でもゼッペリンやフロイドなんかはちゃんとギミックが再現されているし、大体は見開きで大仰なアートワークが楽しめたりしたもんです。

この頃思っていて、奥さんと笑っていた事がひとつ。
「クリムゾン・キングの宮殿」の内ジャケに描かれた肉塊のおっさん、バナナマンの日村に似てません? 有名な表の顔じゃなくて、内側の丸いおっさんです。



奥さんはクリムゾンなんて、てんで聴かないんですが、僕がgoogle画像検索で教えたら「ウケるーっ」っつってました。

日村さんは最近、差し歯で歯並びが良くなって、ちょっとクリムゾンおっさんから離れてしまいましたが。