Yesファンの多くは、フェイヴァリット・ナンバーに「危機~Close to the Edge」「悟りの境地~Awaken」「燃える朝焼け~Heart of the Sunrise」などを挙げ、もしかしたら私くらいの世代(アラフィフ)だと「ロンリー・ハート~Owner of a Lonely Heart」という人も少なからずいるかもしれません。
私も全部好きです!
当時中学一年生で、まだロックもポップスもよく解っていなかった時の事です。プログレもハードロックも、パンクもニューウェイブも何も知らず、ただ「洋楽」ってカッコいいなーと思っていた時代です。 1980年くらいからFMのチャート番組を毎週聴くようになって、その番組で「Heat of the Moment」を最初に耳にしました。当時のこの曲の第一印象は、普通に「良いね~」という程度でした。2ndシングル「Only Time Will Tell~時へのロマン」を最初に聴いた時のインパクトの方が強烈で、イントロのシンセ・サウンドにすっかりやられてしまい、なけなしの小遣いでアルバムを買わなければ!と、一大決心をするに至りました。そして1982年はずっと、ASIAとTOTOばかり聴いて過ごしました。
- Heat of the Moment
Steve Howeらしからぬパワーコードで始まるこの曲は、シンプルなポップロックに聴こえますが、いろいろ凝った要素があります。 先ずヴァース・パートは3拍子と4拍子を組み合わせた変拍子になっていますが、それを全く感じさせない自然さが素晴らしい。 そして、ASIAというバンド名に説得力を付けるためなのか、日本の楽器、琴も使われています。 曲の構成、キー、コード進行は、Geoff Downesが在籍したBuggles「Video Killed the Radio Star(ラジオスターの悲劇)」から持って来ていますが、上記の変拍子の導入や、ギター・オリエンテッドなロック・サウンドによって、簡単にそうとは分からないようになっているのは流石!非常に巧妙に作られたポップソングです。
BS-TBSの名曲を辿る番組「Song to Soul」で、かつて取り上げられましたが、本人たちや制作時の関係者の証言は、とても興味深かったです。 ・ゲフィン・レコードからアルバムを牽引するリードトラックが欲しいと言われ、最後の最後に作った。 ・復活請負人のA&R, John Kalodnerが、歌詞作りに難航していたJohn Wettonに対して、言葉のアドバイスをした。(Kalodnerは後にWetton/Downesの作曲チームをゴリ押しして、結果ASIAの成功を縮小させた人物だと思っているので、個人的には良い印象がありません) ・John Wettonのたっての願いで、バック・コーラスも含めた全てのヴォーカルをJohnひとりで録った。 ・一聴してシンプルに聞こえるイントロのコード・ストローク・ギターは、さまざま異なる機材を通した多重録音で作られた。
Steve HoweとJohn Wettonの共作曲。元ネタはSteveがYes加入前の1968年に活動していたBodastの「Come Over Stranger」。この曲の後半に登場するアルペジオが、One Step Closerではイントロからヴァースにかけてメイン・フレーズとして使われています。 Bodastは、レコード会社倒産のあおりを受け、完成したアルバムを世に出せなかったので、ASIAの一部としてでも日の目を見る事ができたのは何よりです。(Bodast自体も後年に、CDでもサブスクでも聴けるようになって、実はYesの名曲群でもSteveのアイディアが転用されました) 歌がマズいSteveですが、ここではJohnとハモりながらリード・ヴォーカルを取っています。 このデュエットは全く違和感なく、素敵に聞こえるから不思議! 因みにBodastの元曲は、Small Facesのようなモッズ・サウンドで、これはこれで違う魅力があります。
- Time Again
全員の共作によるA面ラスト。 ヘヴィーなユニゾンによるリフがオクターブを上がっていくイントロは、SteveとGeoffにとっては前作にあたるYes「Drama(1980)」のMachine Messiahを彷彿とさせます。 また、ヴォーカル・パートに入ってからのCarlのドラミングは、ELPのFanfale for the Common Man(庶民のファンファーレ)を想起させるシャッフル。それぞれのキャリアを総括したような、とてもカッコいい1曲です。
Heat of the Momentシングルのカップリング曲で、アルバム未収録。後に12インチEP「Aurora(1986)」や、コンピ盤を含む幾つかのCDに収録されました。 ハープシコードの印象的な音色から始まる、愁いを帯びた名曲ですが、アルバム収録曲とは確かに毛色が違うのも分かります。 JohnとSteve共作の、忘れてはいけない1曲です。
Jeff Beck, David Crosbyの訃報を受けて、このエントリーを書きかけのまま保留しているうちに、高橋幸宏さん、鮎川誠さん、TelevisionのTom Verlain、そしてタラちゃんの声でお馴染みの貴家堂子(さすがたかこ)さんとほぼ同時に、Burt Bacharachの訃報が。 今年は年初から、エンタメ巨星のお召し上げが激しいです…
私が好きなYesは、その初期にThe ByrdsやBufallo Springfieldをカバーしていました。バーズを最初に耳にしたのはMTV番組で流れた古い映像の「So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star」 次にYesの1stに収録のカバー曲「I See You」 その後にテレビで放送されたアトランティック・レコード40周年コンサートでのCSN「Suite: Judy Blue Eyes」 そうやって辿っていくうちにバーズを集め出し、CSN&Yを聴いて、という流れでした。 Yesが影響を受けた音楽として聴いているうちに、好きになったアーティストの一人です。 2015年の東京国際フォーラムでのCSN来日公演は圧巻でした。
- Tom Verlaine - Jan/28/2023
Televisionを初めて聴いたのは1992年の再結成アルバム「Television」でした。
その頃の私は、中学生の頃から始まったプログレ求道を一旦停止し、当時隆盛したオルタナティヴ・ロックに傾倒していました。それらのルーツを遡る作業も並行していたのですが、まだVelvet UndergroundとLou Reed, David Bowieに着手したばかりで、NYもUKもパンクにまで辿り着いていませんでした。
ポップ・ミュージック、映画音楽の巨匠も、先日他界してしまいました。 私は彼の音楽をほんのさわりだけ聴きかじった程度の超ニワカですが、それでもいくつか記憶に残る好きな作品があります。 「Dionne Warwick / Say a Little Prayer(小さな願い)」は暫く、彼の作品とは知らずに楽しんでいました。とてもポップでキャッチ―なのに、変拍子が多用されていて、それに気付くと「トリッキーな作りだなぁ」と思うけれど、ただのポップソングとして楽しめる事が大前提になっている。とても高度な構成を聴き手に気付かせない、インテリジェンス溢れる音楽家でした。 1990年代前半、渋谷系と言われる小さなムーヴメントがあり、そこで彼の音楽が持て囃されたのを覚えています。その中で一番印象に残っているのは「007/Casino Royale」のサウンドトラック。 映画は未見ですが、007シリーズのパロディで、本シリーズとは一線を画すものらしいです。 パロディらしい、キッチュかつコミカルにデザインされた音楽は、それでも上品でお洒落、楽しさに満ちたものでした。