2015年9月12日土曜日

ASIA・ALPHA



私が初めて買った音楽専門誌「ミュージック・ライフ」1983年7月号(だったかな?)。
PILが来日して、ジョン・ライドンが表紙の号に、エイジアのセカンド・アルバム「ALPHA」リリース直前、スティーヴ・ハウ インタビューが掲載されていました。

すでに手許にないので記憶でのお話になってしまいますが、このインタビューは興味深かったのでけっこう鮮明に覚えています。

インタビューアは、イエス時代にはメイン・コンポーザーのひとりとして活躍したスティーヴが、エイジアではあまり作曲していないことに触れました。
それに対して彼は、自身をデラニー&ボニー時代のクラプトンになぞらえ、エイジアではいちギタリストとして気楽に楽しんでいる、という趣旨の返答をしていました。

そこまでは良かったのですが、インタビューアは次に余計な一言を・・・。
「ジョン・ウェットンはあなたの曲を『エイジアには向いていない』と言っていましたが?」
これにはスティーヴもムッとした様子で反論。「自作曲の多くは自分の中で暖めているから、殆どオープンにしていない」という感じで返していました。

あの当時、直後に起きたお家騒動は、このインタビューが引き鉄になったんじゃないか??・・・と、中学生だった私は邪推したのでした。

今は、ALPHA製作時にウェットン/ダウンズの曲がゴリ推しされたのは、ファーストからカットしたヒット曲に倣ってゲフィン・レコードが指示したことや、リリース直後のゴタゴタの原因の一つとしてジョン・ウェットンが酷いアル中状態だったことなど、崩壊に向かういくつかの要因が明らかになっていますが、スティーヴとジョンの確執のきっかけは、あのインタビューにあり!と、私は今も密かに思っています。
確か英米の他誌記事転載ではなく、ミュージックライフ独自のインタビューだったと記憶しています。

ALPHAは私の洋学体験の初期、アルバムを買うのも大変な子供時代に手にした1枚なので思い入れはあります。当時はレコードプレイヤーを持っていなかったためカセットテープで購入、それが幸いして「Daylight」(カセットのみのボートラで、EP「Don't Cry」c/w 曲)も聴けました。

今となってはファーストよりも聴く機会はぐっと少ないですが、たまに通しで流すと懐かしい記憶が蘇ってきます。
極上のポップソング「Don't Cry」で幕を開けるこの作品、ファーストとの比較は今も当時も避けられず、その観点ではどうしても見劣りしてしまいますが、ただそれだけで切り捨てるのは勿体ない好盤です。
惜しむらくはプロダクション。キーボードの音に埋め尽くされたバッキングは当時「音の壁」などと評されましたが、全体にリバーブがかかっている印象で各楽器の分離が悪く、演奏の魅力が埋没してしまっているのが本当に勿体ない。
スティーヴ・ハウとカール・パーマーの、良い意味でハチャメチャなエゴイズムが抑えられてしまっているのも残念。
全ての楽曲はウェットン/ダウンズで、多少一本調子な印象も否めませんが、それでも多くの美メロを楽しめます。
個人的にはヒット・シングルを含むA面よりも、地味ながら憂いに満ちた名曲が並ぶB面に魅力を感じます(当時はA面がα、B面がβと名付けられていました)。

部活のない夏休みの午後、自室で仰向けになって窓から顔を出し、このアルバムを聴きながら遥か上空に光る旅客機に思いを馳せた思春期を思い出す、そんなクッサイ1枚です。

2015年9月5日土曜日

Steve Hackett - The Cinema Show/Aisle of Plenty (4.sep.2015 Stockholm)


スティーヴ・ハケット 2015のツアーは、昨年までの「Genesis Revisited」以上に見どころ満載のようですね。
「Acolyte to Wolflight with Genesis Revisited」と銘打たれた通り、ソロワークとジェネシス・クラシックスが山盛りです。
ソロからは「Spectral Mornings」「Ace of Wands」「Clocks」などが披露され、ジェネシス・ナンバーも昨年までの選曲から一新されています。
「Get'em Out by Friday」まで演奏されてるなんて!

さて、最新ライヴ映像で見つけた「Cinema Show」ですが、スティーヴのソロワークで取り上げられるとは、正直、信じられませんでした。
映像は昨日の9月4日、ストックホルムでの演奏。

以前のエントリーでも書きましたが、この曲は確かに、屈指の名曲のひとつに数えられると思います。私も大好きな曲です。
だけどかなり露骨にトニー・バンクスを中心とした、後期トリオ用の曲だと思うのです。
ピーターも居た5人時代の曲にもかかわらず、です。

トリック・オブ・ザ・テイル時代のライヴ映像(下に貼っておきます)でも、後半のトニーのソロパートは、フィル・コリンズとマイク・ラザフォードを従えたトリオの演奏になっています。マイクはギターのカッティングからベースラインまで独り占めです(笑)。
途中のブレイクからスポットを浴びるのは、正規メンバーのスティーヴ...ではなく!、助っ人ヒーローのビル・ブルーフォード。
このパートではスティーヴの姿はどこにも見当たりません。

まぁでも、最新の映像ではスティーヴが楽しそうにマイクのギター・パートを演っているし、ロジャー・キングも若干危ないけれどトニーをトレースしているし、何よりオーディエンスが喜んでいるので、良いのかな。
コーダはジェネシスのライヴバージョンと違って、スタジオ・アルバム「月影の騎士」の流れを踏襲しています。

今回のツアーで日本に来てくれたら最高なんだけどなぁ!
ソロワークの集大成と、前回と異なるジェネシスナンバーを生で聴きたいです。
2012年の暮れからずっとツアーしていますが、その間に追加・変更で演奏された楽曲の数々が魅力的すぎて、たまらんです。

2015年9月4日金曜日

Yes Live 11th Dec 1974 Boston King Biscuit Flower Hour Broadcast



クリス・スクワイアが亡くなり、当初は闘病中の代役として擁立する予定だったビリー・シャーウッドが正式にベーシストとして加入、TOTOとのジョイントツアーを進めている模様のYes。
クリスへのトリビュートとして、このツアーを無事に成功させて欲しいものです。

音楽というものは、やはり原初の体験が強烈なインパクトをもたらし、脳ミソにビターンッと記憶されますね。
今回YouTubeから引っ張ってきたLive音源は、私が中学生時代FMエアチェックしたものと同音源。オンエアされたのは'82〜'84年頃の事だったと思います。
残念な事にこれまでの複数回の転居で、録音したカセットテープは紛失してしまいましたが、当時本当に聴きこんだので、演奏の細部にわたる記憶が甦るように呼び起こされてきました。

オープニング「火の鳥」のテープに合わせてドラム、パーカッションがド派手に入り、ベース、メロトロン、エレピ、そして「タッターッター、タッタッ!」というコーラス(これもテープかな?)と華麗に繋がっていく「Sound Chaser」。
私が初めて聴いた「火の鳥」オープニングがコレでしたので、その後で知る事になる定番の「Siberian Khatru」オープニングに馴染むまで、けっこう時間がかかってしまいました(笑)。

パトリック・モラーツ期は'74〜'76年と長く、ライヴ音源が豊富にあるので(スタジオ作が1作なのが残念!)、YouTubeでいくつか聴き比べてみましたが、現時点でこのオープニング・アレンジは「King Biscuit Flower Hour」の音源でしか見つけられないので、私が中学生の頃に聴いたのはこれで間違いないでしょう。

これを耳にした当時の私は、リアルタイムで大ヒットしていたASIAを入口に70'sに興味を持ち始めたばかりで、Yesは解散状態か「90125」を出して華々しく復活を遂げた直後、そんなタイミングでした。
彼らの音楽はラジオで数曲聴いただけ、アルバムはまだ1枚も持っていませんでした。

オープニングの「火の鳥」から、次々と繰り出される超絶な構成と演奏の楽曲の数々に、とてつもない衝撃を受けました。
ある意味このライヴ音源が、私にとっての「Yessongs」かもしれません。

Yesのギタリストって、その時代時代のイニシアティヴを掌握して「音楽の中心」になっているのがダイレクトに伝わりますが、「バンドの中心」ではない事は、これだけの時を経ると分かりますね。
スティーヴ・ハウ、トレヴァー・ラビン、それぞれ大きな原動力でバンドを動かし、存在感も抜群でしたが、それは全てYesという器の中でのこと。その器はジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアだったんでしょうね。