年末年始の休暇を利用して、これまで仕事に追われてできなかった事を少しずつ進めています。大体は掃除ですが、その間にいろいろ音楽を楽しんでいます。
Yessongsの映画版(VHS)を初めて買ったのは、僕がまだ高校生だった'80年代の中頃でした。確かその当時は国内版が発売されておらず、ボロい厚紙の装丁の輸入版を西新宿の輸入レコード店で購入しました。箱の端々から灰色の紙が剥け出ているようなパッケージでしたが、けっこう高かったように記憶しています。
かつては本当によく観たこのビデオも、何度か転居を重ねるうちに引越の梱包からほどかなくなってしまい、最近はビデオデッキもなくなって、気付けば十数年はご無沙汰の状態になっていました。
そんなYessongs、amazonでBlu-ray Discが出ている事を知り、懐かしさもあってこの年の瀬に、ついポチッとしてしまいました。
1972年12月、英国はレインボー・シアターで撮影された本作は、ライヴ・アルバムの『Yessongs』とは「Close to the Edge 危機」とエンドロールで使われた「Würm」の2曲だけ同じ音源ですが、他は異なる演奏です。
製作陣にスティーヴ・ハウのお兄さん(Editor: Philip Howeとクレジット)が関わっている関係か、全体的に彼にスポットライトが当たっているような印象ですが、この時期だからこそ、それで全く正解だったといえると思います。(エンドロールでのメンバーのクレジットでも、普段ならJon Andersonとなるべき一番上にSteve Howeが来ています。)
今やテンポは落とすは運指はもたつくはで、全くダイナミズムもカッコ良さも感じられないハウさんですが、'70年代後半には米Guitar Player誌で5年連続ベスト・ギタリストに選出され、殿堂入りしたほどの実力と人気を兼ね備えていたギタリスト、しかも「危機」リリース直後のライヴですから、もう脂ノリノリの時期の貴重な勇姿を観る事ができます。
そしてみんな若い!クリスはおばちゃん顔ですがスリムで背が高くて、アクションひとつひとつがサマになってるし、リックも長身スリム、サラッサラのブロンドヘアーをなびかせています。キラキラマントを羽織ってリリース前の「ヘンリー八世」を披露、この時期に合わせて「ジングルベル」を挿入するサービスも。ジョンはゆらゆらしながら唄い、そっけないMCを所々に挟み、近年のお茶目さやサービス精神はまだ持ち合わせておらず、ナイーブな雰囲気を漂わせています。
見た目の変化はスティーヴが一番大きく、最近の姿はただただ「お爺ちゃんだなぁ」としか思えなくなってしまいましたが、この映像の中では一番ロッカーなんじゃないか?というステージ・パフォーマンスを魅せてくれています。
ギターのポジショニングこそ非常に高い位置にしていますが、ロン毛を振り乱して頭を振りながら、ボーダーレスなフレーズの数々を「これでもか!」というくらいにブチ込んでいく姿には惚れ惚れしてしまいます。
この時期のイエスは、曲が長かろうが変拍子入れようが意味有りげな歌詞だろうが、完全にロックですね。音楽がドライブしています。
オーディエンスもヘッドバンギングしてるし、アドレナリン放出、カタルシス爆発パワーが漲っています。
改めてこの映像を観て、アラン・ホワイトが入った事でより分かりやすいロックらしさが出たようにも感じます。I've Seen All Good Peopleの後半「Good People」なんかは顕著で、ビル・ブルーフォードが叩いていたアルバム・バージョンやドイツの音楽番組「ビート・クラブ」でのスタジオ・ライヴでは、リズムが「いなたい」というか野暮ったさがありましたが、アランが叩く「Yessongs」や「Classic Yes」のボーナス盤で聴けるライヴ・ヴァージョンでは、単純なリピートのこのパートが見事にグルーヴしています。
個人的にはビルのドラムの方が好きですし、この時期にもしビルが残っていたらという妄想も見果てぬ夢としてありますが。。。(Roundaboutでのスネアとバスドラを入れるタイミングには、未だにゾクゾクします。またABWHライヴでのAll Good Peopleは素晴らしかった)
また、'70年代ならではのライヴ用アレンジも良いですね。「And You And I」の出だしは12弦アコギではなくてスティールギターから始まったり、「Roundabout」もアコギを使わずエレキ(フルアコ)で一曲通したり。
僕が知る限りではAnderson Bruford Wakeman Howe辺りから、ライヴでもオリジナル・アルバムの再現に注力するようになったと思いますが、1曲の中でギターを取っ替え引っ替えするよりも、ライヴのノリで押し切るこの感じの方が好きですね。
僕はブートを聴かないのでこれ以外に同じような演奏があるのかは知りませんが、「Yours is no Disgrace」では後半のフォーク/カントリー調にテンポダウンするパートがカットされ、スティーヴの即興ソロパートからそのままエンディングのコーラスパートに突っ込んでいくアレンジになっていて、これも初めて聴いた当時はシビれました。「The Yes Album」のLPをカセットに吹き込む際に、同じ展開になるようにレコード針とカセットデッキをいじって必死に調整したアホな思い出もあります。
このBD。5.1chになったとはいえ、元の音が音なのでそこは致し方なしといったところですが、映像はきれいになりましたし、最近のクリスとスティーヴ、そしてロジャー・ディーンのインタビューも収録されていて、それも非常に興味深く観る事ができました。ジョンやリックにも登場して欲しかったけど、現状では難しかったんでしょうね。
僕が2歳の頃のイエスの勇姿、41年前のクリスマス・ライヴです。劇場公開は'75年との事。そして僕が最初にこれを観てから25〜26年は経っていますが、やっぱり色褪せないですね。