2013年12月30日月曜日

Yessongs Movie- 40th Anniversary Special Edition


年末年始の休暇を利用して、これまで仕事に追われてできなかった事を少しずつ進めています。大体は掃除ですが、その間にいろいろ音楽を楽しんでいます。

Yessongsの映画版(VHS)を初めて買ったのは、僕がまだ高校生だった'80年代の中頃でした。確かその当時は国内版が発売されておらず、ボロい厚紙の装丁の輸入版を西新宿の輸入レコード店で購入しました。箱の端々から灰色の紙が剥け出ているようなパッケージでしたが、けっこう高かったように記憶しています。
かつては本当によく観たこのビデオも、何度か転居を重ねるうちに引越の梱包からほどかなくなってしまい、最近はビデオデッキもなくなって、気付けば十数年はご無沙汰の状態になっていました。

そんなYessongs、amazonでBlu-ray Discが出ている事を知り、懐かしさもあってこの年の瀬に、ついポチッとしてしまいました。

1972年12月、英国はレインボー・シアターで撮影された本作は、ライヴ・アルバムの『Yessongs』とは「Close to the Edge 危機」とエンドロールで使われた「Würm」の2曲だけ同じ音源ですが、他は異なる演奏です。
製作陣にスティーヴ・ハウのお兄さん(Editor: Philip Howeとクレジット)が関わっている関係か、全体的に彼にスポットライトが当たっているような印象ですが、この時期だからこそ、それで全く正解だったといえると思います。(エンドロールでのメンバーのクレジットでも、普段ならJon Andersonとなるべき一番上にSteve Howeが来ています。)
今やテンポは落とすは運指はもたつくはで、全くダイナミズムもカッコ良さも感じられないハウさんですが、'70年代後半には米Guitar Player誌で5年連続ベスト・ギタリストに選出され、殿堂入りしたほどの実力と人気を兼ね備えていたギタリスト、しかも「危機」リリース直後のライヴですから、もう脂ノリノリの時期の貴重な勇姿を観る事ができます。

そしてみんな若い!クリスはおばちゃん顔ですがスリムで背が高くて、アクションひとつひとつがサマになってるし、リックも長身スリム、サラッサラのブロンドヘアーをなびかせています。キラキラマントを羽織ってリリース前の「ヘンリー八世」を披露、この時期に合わせて「ジングルベル」を挿入するサービスも。ジョンはゆらゆらしながら唄い、そっけないMCを所々に挟み、近年のお茶目さやサービス精神はまだ持ち合わせておらず、ナイーブな雰囲気を漂わせています。
見た目の変化はスティーヴが一番大きく、最近の姿はただただ「お爺ちゃんだなぁ」としか思えなくなってしまいましたが、この映像の中では一番ロッカーなんじゃないか?というステージ・パフォーマンスを魅せてくれています。
ギターのポジショニングこそ非常に高い位置にしていますが、ロン毛を振り乱して頭を振りながら、ボーダーレスなフレーズの数々を「これでもか!」というくらいにブチ込んでいく姿には惚れ惚れしてしまいます。

この時期のイエスは、曲が長かろうが変拍子入れようが意味有りげな歌詞だろうが、完全にロックですね。音楽がドライブしています。
オーディエンスもヘッドバンギングしてるし、アドレナリン放出、カタルシス爆発パワーが漲っています。
改めてこの映像を観て、アラン・ホワイトが入った事でより分かりやすいロックらしさが出たようにも感じます。I've Seen All Good Peopleの後半「Good People」なんかは顕著で、ビル・ブルーフォードが叩いていたアルバム・バージョンやドイツの音楽番組「ビート・クラブ」でのスタジオ・ライヴでは、リズムが「いなたい」というか野暮ったさがありましたが、アランが叩く「Yessongs」や「Classic Yes」のボーナス盤で聴けるライヴ・ヴァージョンでは、単純なリピートのこのパートが見事にグルーヴしています。
個人的にはビルのドラムの方が好きですし、この時期にもしビルが残っていたらという妄想も見果てぬ夢としてありますが。。。(Roundaboutでのスネアとバスドラを入れるタイミングには、未だにゾクゾクします。またABWHライヴでのAll Good Peopleは素晴らしかった)

また、'70年代ならではのライヴ用アレンジも良いですね。「And You And I」の出だしは12弦アコギではなくてスティールギターから始まったり、「Roundabout」もアコギを使わずエレキ(フルアコ)で一曲通したり。
僕が知る限りではAnderson Bruford Wakeman Howe辺りから、ライヴでもオリジナル・アルバムの再現に注力するようになったと思いますが、1曲の中でギターを取っ替え引っ替えするよりも、ライヴのノリで押し切るこの感じの方が好きですね。

僕はブートを聴かないのでこれ以外に同じような演奏があるのかは知りませんが、「Yours is no Disgrace」では後半のフォーク/カントリー調にテンポダウンするパートがカットされ、スティーヴの即興ソロパートからそのままエンディングのコーラスパートに突っ込んでいくアレンジになっていて、これも初めて聴いた当時はシビれました。「The Yes Album」のLPをカセットに吹き込む際に、同じ展開になるようにレコード針とカセットデッキをいじって必死に調整したアホな思い出もあります。

このBD。5.1chになったとはいえ、元の音が音なのでそこは致し方なしといったところですが、映像はきれいになりましたし、最近のクリスとスティーヴ、そしてロジャー・ディーンのインタビューも収録されていて、それも非常に興味深く観る事ができました。ジョンやリックにも登場して欲しかったけど、現状では難しかったんでしょうね。

僕が2歳の頃のイエスの勇姿、41年前のクリスマス・ライヴです。劇場公開は'75年との事。そして僕が最初にこれを観てから25〜26年は経っていますが、やっぱり色褪せないですね。







2013年12月19日木曜日

Genesis Revisited:Live at Hammersmith / Steve Hackett




※2014.1.21 その後何度か映像を見直し、CDも聴き込んで、少し追記・編集をしました。

国内盤の発売は遅かったですね。本日ようやくamazonから到着しました。
国内盤特典は...折り畳み紙ジャケ、歌詞/対訳カード ...以上。
輸入盤を買った人のレビューか何かで「I Know What I Likeでエラー」というのを見かけましたが、国内盤でもイントロで一瞬映像が止まってしまう症状が認められました。
DVD2枚目のインタビューには翻訳字幕もないので、この内容であれば10月にリリースされていた輸入盤で全然良かったかも。

来日公演でのチッタに比べると数倍は大きいハコの、伝統あるロンドンはハマースミス・アポロ。
一階席/二階席ともにみっちり満員御礼の公演を、ノーカットで収録。
おじちゃんおばちゃん率が高い客層、曲間の至る所で「Supper's Ready !!」リクエスト、そのSupper's Ready中盤での「a flower?」の合いの手、The Musical Box終演後のメチャ盛り上がりなど、6月の来日公演を彷彿とさせるオーディエンスのレスポンスに微笑ましくなりました。ファンの沸点はどこでも似たところにあるもんですね。
ただやはり地元、スティーヴが「Sing along」と言えばみんな唄うし、スタンディングオベーションも多くの曲の演奏後に起きていました。
日本でも初日、Moonlit Knightの際に「Sing along」と言われましたが、我々日本人は唄えませんでした。そして2日目、3日目にはもう言ってくれなくなっていました...。

他に特記できる点としては、おそらくコスト的な問題で来日時には持ち込まなかった、背面のLED3面ディスプレイ。今回の映像化で全貌が確認できると期待していましたが、バンドのパフォーマンスを邪魔しない程度の抽象的な、曲のストーリーに沿ったイメージ映像といった感じでした。
Youtubeで見た別日程のReturn of the Giant Hogweedでは、ギタリスト2人のコミカルなCGアニメが流れていましたが、今回見た中にはそういった路線の画はありませんでした。(このセットリストにHogweed無いですしね)
また、ライティングも巧みに制御された見応えのある演出がなされていて、こちらも地元ならではのアドバンテージだったのでしょう。ライティングの華麗さと言えばジェネシスの専売特許でもありました。ド派手になりすぎた本家とは比ぶべくもありませんが、この規模にふさわしい照明がショウに華を添えていました。

セットリストは流れ的には来日時とほぼ同じながら2曲多く、スティーヴの1stソロからShadow of the Hierophant、ジェネシス「静寂の嵐」からEleventh Earl of Marが演奏されています。
また、ゲスト参加も豪華。
・ニック・カーショウ:Lamia
・ジョン・ウェットン:Afterglow
・スティーヴ・ロザリー:Lamia
・アマンダ・レーマン:Shadow of the Hierophant / Entangled
・ジャッコ・ジャクスジク:Entangled

参加ゲストの担当した曲はアルバム「Genesis Revisited II」に沿ったものです。
ニック・カーショウは80年代に洋楽に馴染んだ世代としては懐かしい名前です。Lamiaでの歌唱はアルバム以上に感動的です。
彼のヴォーカルからギター・ソロに移行するとスティーヴ・ロザリーが登場、ハケットとのギターバトルシーンが魅せ場の一つでもあります。
アマンダ・レーマンは、原曲よりキーを下げてはいるものの、オリジナルで唄っていたサリー・オールドフィールドにも見劣りしない歌声を披露、またギタリストとしてもしっかりスティーヴのサポートをしていました。
Entangledでは、次期クリムゾン・メンバーのジャッコ・ジャクスジクがリード・ヴォーカルを務め、アマンダとナッド・シルヴァン、ギャリー・オトゥールと、リードを取れる3人がコーラスを担当したため、スティーヴはギターに集中していました。来日時はこんなにゲスト連れて来れないから、コーラスに加わっていましたもんね。

ジョン・ウェットンは1996年、最初のGenesis Revisited時はフロントマンとして活躍しましたが、今回はスペシャルゲストとしての1曲のみ。その頃と比べると体格も大きく変わりましたね。トニー・バンクス作のAfterglowを朗々と歌い上げました。彼とジェネシスの直接の関係性ってないと思いますが、スティーヴのジェネシス企画では毎度しっくりハマりますね。今回のステージでは長年の友情が垣間見えて、微笑ましいシーンがありました。
そういえば彼らはスティーヴ・ハウとはうまくいかなかった2人ですね。むむぅ。

見た目、体格で驚いたのはスティーヴ・ロザリー。
マリリオンは全く聴いてこなかったので、正直どんな人かも知りませんでしたが、大きい赤ちゃんのような巨漢ですね。ギターがとても小さく見えました。

それはさておき。
こうして改めて鑑賞すると、このGensis Revisitedという企画は本当に素晴らしい!
「かつてのメンバーによる懐古ビジネス」という斜めの見方も、もしかしたらあるのかもしれません。そんな側面があったとしても、これだけのクオリティで提供されて、間違いなく楽しめるのですから、全く問題ありません。
それにジェネシスという振幅の大きいバンドにあっては、スティーヴの存在がなければ、もはやCDで聴くしかなかったであろう初期のマテリアルが、こんなにも躍動感溢れる形で息を吹き返したのだから、懐古どころかむしろ新鮮ですらあると思います。

特にピーター在籍時のライヴを体験できたのって、ヨーロッパとアメリカの僅かな人たちだけでしょうし、フィル時代になって演らなくなってしまった曲も多いでしょうから、今回あの曲、この曲を初めてナマで聴けた!!という人が沢山いるんじゃないでしょうか。

そして、キーボードのロジャー・キング。スティーヴ関連のエントリーでずっと書き忘れていましたが、この人は重要です。淡々としていますが、このバンドの要ですね。Firth of Fifthは、トニー・バンクス本人もライヴではイントロのピアノソロを端折ってましたし、前Revisited時のジュリアン・コルベックも同様で、更には間奏のシンセソロ部分も全く異なるアレンジになって、バンドの即興パートになったりしていましたが、ロジャーはイントロ、間奏のシンセソロどちらもしっかり忠実に聴かせてくれました。
トニー・バンクスを再現するスキルを持ち、かつスティーヴの盟友として活動する。長年の苦労が報われるビジネス・パートナーですね。
これだけ聴かせてくれると「In the Cage」「Cinema Show」あたりも聴きたいと思ってしまいますが、Cinema Showはスティーヴの存在が小さい曲だから難しいかな。。。

10月、ワールド・ツアーの最終地としてイギリスに戻った一行は、セットリストをリニューアルし、The Return of the Giant Hogweed, The Fountain of Salmacis, The Carpet Crawlersを演奏したそうです。この時期の公演も、これまた伝統のロイヤルアルバートホールのものがソフト化される予定と聞いています。待ち遠しいですね。

以下はYoutubeにアップされているオフィシャル映像。本作からの抜粋です。



Rock and Roll Hall of Fame 2014

ロックの殿堂 2014がつい先日発表され、2010年のジェネシスに続いてピーター・ガブリエルが選出されました!

All Inductees By Year: 2014

殿堂入りしたアーティストは上記のWebにありますが、主立ったところはこちら。
・キッス
・ニルヴァーナ
・ホール & オーツ
・リンダ・ロンシュタット
・キャット・スティーヴンス

その他パフォーマー以外では、ビートルズのマネージャーとして知られるブライアン・エプスタインなどが殿堂入りしました。


今回イエスもノミネートされ、ネットのファン投票では4位に付けていたのですが、残念ながら殿堂入りならず...、同じく3位に付けていたディープ・パープルも残念でした。


イエスもパープルも長い歴史と偉大な功績がありますが、「現時点」での立ち位置や影響力などを考えると、厳しいんでしょうか。。。

何はともあれPG、おめでとうございます!

2013年12月12日木曜日

Lou Reed / Metal Machine Music

ルー・リードは前職の先輩に教えてもらって、一時本当によく聴いた。そのきっかけは、もう22〜23年前になる。今でもiTunesにかなりのアルバムを読み込ませてあり、いつでも聴けるようにしてある。もともと僕自身がギター/インストの趣向が強かったせいで、歌詞の世界にはそれほど深く入り込む事ができなかったが、ロック・ミュージックの神髄とも言える感覚は、ルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽を聴く事で身をもって覚えた気がする。

 彼が亡くなった事を教えてくれたのも、その先輩だった。 この数年間、先輩とは年賀状のやり取りくらいの細い繋がりになってしまっていた。虫の知らせなのかどうか、たまたま最近になってメールでの交流が復活した矢先の事だった。
10/28(米時間10/27)の朝、先輩からメールで知らされて大きな衝撃を受けた。
ちょうど夫婦で旅行に出た日の出来事だった。その晩 僕は旅先で、持参したMacのiTunesライブラリから「Berlin」と「Live in Italy」を選んで、続けて聴いた。「Berlin」はレクイエムとして、「Live in Italy」は前を向くためのカンフル剤として、自分なりにそれぞれふさわしいと思っての選択だった。

後日webで見る事ができた奥さんのローリー・アンダーソンの手記は、涙なくしては読めなかった。悲しいという感覚よりも、とても深くまで理解し合った二人の別離の瞬間が、映像となって脳内で再現され、「日曜の朝」の様子が心に迫ってくるようなテキストだった。 パティ・スミスやメタリカのラーズのテキストも、ただ美化するだけじゃない、本当に近くにいた人たちならではの親しみに溢れていた。

 彼のアルバムの中で唯一、今まで手を出せなかったのが今回のタイトルにある「Metal Machine Music」だった。 初CD化された際に「全編ギターノイズ」「契約を履行するための悪ふざけ」「本人も認める失敗作」など真偽不明な予備知識が入ってきて、以来ずっと及び腰になっていた。
そしてようやく聴く覚悟ができたのだが、確かにこれはすごいモノには違いないと感じた。ただ、普通の感覚で評価すべきものでもなさそうだ。
 聴けるか聴けないかというと、僕個人としては聴ける作品だった。
ただし、心のコンディション次第だし、全編連続で聞き通すのは至難。 メロディもリズムもなく、リフやソロもなく、もちろん唄もない。
幾重にも織り重ねられたギターノイズの音像は、壁というよりも港から眺める大海を想起させる。砂浜や岸壁ではなく、港から見る海。背には摩天楼という、個人的な、勝手なイメージ。 フィードバックの高音はカモメの鳴き声のように聞こえる瞬間もあり、金属的な尖った断片はさざ波に揺れながら反射する日光のように煌めいている。
 導入部のインパクトはファウストの「クラウトロック」にも通じるものがあるが、異なるのはそれが全く反復せずに延々LP2枚分続いていく事。

 ニューヨークの詩人と言われたルー・リード。ギター・ノイズだけで紡いだこの作品もまた、聴くものそれぞれのイマジネーションを刺激し、詩的情景を提供してくれたのだと思う。