2023年12月8日金曜日

海洋地形学の物語 50周年

大名作「Close to the Edge ~ 危機」に続く6枚目のスタジオ作品が、12月7日にリリース50周年を迎えました。

この作品はいまだに物議を醸すというか議論を呼ぶというか、話題が尽きないですね・笑

私は…どちらかというと…今は殆ど聴く事がありません。
ただ、聴かないといえば3rdから「トーマト」まで同様に、今はどれも殆ど聴きません。

1st, 2ndは気軽に聴けるので、「オールディーズ」括りのプレイリストにけっこうな曲数を入れていました😊

3rdからトーマトは、十代の頃にそれこそレコードが擦り切れるほど聴いてきたので、今敢えて聴く気にならないという感じでしょうか。

その中で敢えて格付けしてしまうと、本作はやはり下の方になってしまいます。
繰り返しますが、「若い時に擦り切れるほど聴いてきて」の、個人的評価ですよ。

もしライヴのセトリに本作から2曲以上含まれていたら、たぶん行かないと思います。
貴重なライヴの時間を、40~80分も本作に費やされてしまったら、と思うとゾッとします。
「神の啓示」か「儀式」どちらか1曲だったら、或いは抜粋で「Leaves of Green」あたりを演ってくれたら嬉しいですけどね。

3rd~危機までは、絶対的存在として脳内記録されていて、Relayerと究極はそれに次ぐプライオリティがあります。正直に言えば海洋もトーマトも、めちゃめちゃ記憶・記録されています。
この辺りが複雑なファン心理とでも言うんでしょうかね~😅

上記までで「ドラマ」を外したのは、クラシック・イエスの中で今も聴く機会が多くあるからです。
私のリアルタイム初作品は「90125」なのですが、ドラマは私の中でとても不思議な存在です。


話を海洋に戻すと、ジョン&スティーヴのアイディアの源泉となったパラマハンサ・ヨガナンダ「あるヨギの自叙伝」を数年前に5千円近い価格で買いましたが、途中で面倒になって読了できていません…。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」ジャケにもひょっこりコラされているグルなんですよね。
リックのカレー事件は、このコンセプトに対するブラック・ジョーク的な意味もあったのかなぁと邪推してしまいます・笑


「こわれもの」時代のアウトテイク「All Fighters Past」

最近知ったのですが「こわれもの」時代に、既に一部の元曲となったものを作っていたんですね。「神の啓示」の終盤近く、ジョンのゆったりした歌が聴きどころのパート。
その原曲はビルの硬質なドラムがステキな疾走感溢れるロックで、海洋の一部となったバージョンとは全く異なる印象ですが、メロディと歌詞はそのまま転用されています。
そしてリックのオルガンによるバッキングは、リズムをほんのちょっと変えて「シベリアン・カートゥル」で再利用されています。
ライノ・リマスター以降の再発は全く手にしていないのですが、スティーヴン・ウィルソン・リミックス・バージョンのBTらしいですね。


2024年のツアー・スケジュールが続々発表されていますが、日本はまだ出ていません。
Classic Tales~と銘打たれているので、海洋演っちゃうのかなー予感もしますが、2024年はRelayer 50周年だから、コロナで中止になったRelayer再現でお願いします!

グレッグ・レイクの命日

あまり真面目に聴いてこなかったグループ、Emerson Lake & Palmer.

プログレ全盛期から十数年遅れの後追い世代ではありますが、五大バンドの中で唯一、1枚もレコードを買わなかったバンドです(後年、CDで揃えました)。

そうはいっても私の十代はMTVと並んでFMラジオも全盛期。ラジオで大体の音楽は聴けました。
そうして聴いてきたELPの曲にも、少なからずお気に入りはありました。
ただ、長年「その程度」だったのです…。
キースのキーボード超絶技巧&パフォーマンス(オルガンをガタガタ言わし、ナイフぶっ刺す)が楽しいバンド、クラシックのロック的再解釈が興味深いバンド、という認識でしかありませんでした(あとカールのドラムがくるくる回る伝説とか・笑)。

グレッグがKing Crimsonのロバート・フリップと同じギターレッスンを受けていたという逸話は当時から知っていましたが、ELPの中にギターを用いた愛すべき曲が幾つもある事を知ったのは、ずっと後の事です。
というのも、クリムゾン時代からベース兼リードボーカルというのが彼の肩書でしたから、つまみ食い程度だった当時の私の聴き方では気付けませんでした。

12弦のアコギによる繊細なアルペジオと、温かみのあるバリトン・ボイスが心地よく、ここのところはELPといえば彼の曲ばかり聴いています。

「Still...You Turn Me On」「Lucky Man」も、スタジオバージョンよりも、弾き語りライヴ・バージョンにアツくなります。




2016年は3月にキースが、そして闘病しながらキースの自死を悲しんでいたグレッグは12月に病に負けてしまった、ELPにとっては大変な年でした。

彼が遺したクリスマスの名曲を聴いて、故人を偲びましょう。

2023年5月20日土曜日

Yes新作 Mirror to the Skyを聴いた

アルバムのリードトラック2曲「Cut from the Stars」「All Connected」を事前に何度か聴いて、イメージはできていました。2021年の前作「The Quest」に近い、なんとなく良いんだけど、全体的に印象が薄い、そしてSteve Howeのソロ作に近い、良くも悪くもアットホームな感じ、とでも言うんでしょうか…。

前作のリードトラック「The Ice Bridge」は、イントロがELPぽいとか、作者の一人Geoff Downesが、ライブラリ上の手違いで他者の作品を誤用してしまったとかあったけれど、非常にフックの強い、期待感のある1曲ではありました。

その所為で、アルバムを通して聴いた時に、肩透かしを食らってしまったというのはありましたが。

本作はそんな事もなく「ああ、こんな感じね」と、変な意味で『安心できる』仕上がりです。
トピックとしては…
・前作に続き、オーケストラ導入
・プロデュースも前作に続きSteve Howe
・リード・トラック2曲はBilly SherwoodとJDの共作(All~ではSteveもクレジット)
・Geoffは作曲に殆ど関わらず、演奏面でも目立たず
・作詞・作曲にJon Davison大活躍
・CDの2枚目に相当する3曲含め、Steve Howe作の割合高い

個人的にはあまり歓迎できない要素も少なくありません。これまで現ラインナップに批判的なSNSコメント(ほぼ海外)に対して否定的だった私ですが、今さら彼らの主張が分かる気がしてきました。ジョーーーーン(A)、カームバーック!!!

Billyと新メンバーJay Schellenについては好意的に見られますが、Steveがイニシアティブを持ち続ける事と、JDにクリエイティブ面を任せる比率が高い事、Geoffが働かない事が、今のYesをつまらなくしている大きな要素に思えてなりません。

Steveは1970年代黄金期のYesにおいて、重要なソングライターだった筈なんですが、作曲にプロデュースにと活躍している「The Quest」「Mirror to the Sky」の2作に関しては、微妙な気持ちにさせられます。彼のソロ作を聴いているような、ちょっと欠伸が出そうな感じ。
やはりJon Andersonという相棒がいたからこそ、当時はSteveの素材がより輝いたのかもしれませんね。
最近読んだJon Andersonのインタビューで、記者が「私にとって、あなたとSteveはProg界のジャガー&リチャーズ。コンビ復活を望みます」と懇願するように伝えていたのが心に残っています。

70年代もギター弾きまくりだったけれど、同時にベースもキーボードもドラムも同じくらい主張が強かったから、出来上がった音楽がスリリングだったのだと気付かされます。今のメンバーじゃキャリア差もあり、そうはできんのでしょう。

通算23作目のスタジオ・アルバムという事ですが、数えてみると合わない…。
ABWH、スタジオ作とライヴ混合のKeys to Ascension 1&2、Buggles Yesを再現するために理不尽に追い出されたOliver Wakemanが編纂したミニ・アルバム「From a Page」なんかも含めるのかな??

1. Yes(1969)
2 Time and a Word(1970)
3.The Yes Album(1971)
4. Fragile(1971)
5.Close to the Edge(1972)
6.Tales from Topographic Oceans(1973)
7. Relayer(1974)
8. Going for the One(1977)
9. Tormato(1978)
10. Drama(1980)
11. 90125(1983)
12. Big Generator(1987)
13. Union(1991)
14. Talk(1994)
15. Open Your Eyes(1997)
16. The Ladder(1999)
17. Magnification(2001)
18. Fly from Here(2011)
19. Heaven and Earth(2014)
20. The Quest(2021)
21. Mirror to the Sky(2023)

23作目とするための候補…(何だコリャ・笑)
・Anderson Bruford Wakeman Howe(1989)
・Keys to Ascension 1(1996)
・Keys to Ascension 2(1997)
・keystudio(2001)
・Fly From Here - Return Trip(2018)
・From a Page(2019)

2023年3月11日土曜日

ほっこりできる「究極~Going for the One」セッション1976


YouTubeにアップされているフル・バージョンは、なんと6時間58分という長さで、流石にそれを開くのは躊躇ってしまいました。

上に貼ったのはその冒頭、約1時間分のPt1。
彼らの幸せな時間を垣間見られて、とてもほっこり、そして爆笑させて貰いました。

とにかくRick Wakemanが最高です。
現在もイギリス本国では、コメディアン要素の強いタレントとしてTV出演しているというだけあって、若かりし頃からセンス・オブ・ヒューモア炸裂です!

めちゃめちゃシリアスな名曲「Awaken~悟りの境地」のクライマックス(上記映像の16:50あたり)、パイプオルガンとクワイアの荘厳な響きに合わせ、肉の塊(ビーフジャーキー?)を無表情で頬張り、口に押し込んだり。
これは当時Rick以外のメンバーが菜食主義だった事に対しての、いたずら心(皮肉、嫌味と言うには、カワイイ)だったのでしょうか(笑)。

ケッサクなのは、最後の約5分(50:22あたりから)。「Going for the One~究極」のイントロに合わせ、Steve, Chris, Alanが揃ってピアニカを吹き、Rickがその指揮者をやっている場面。4人とも真面目にふざけているのが、とても微笑ましく、サイコーに面白い!
レコードにはピアニカの音なんて入ってませんでしたよね??(笑)

その直前の場面(43:34あたり)では、とても珍しいSteveとChris二人による、息抜きアコースティック・デュオも!
Bob DylanとEverly Brothersのメドレーを、よれよれコーラスで弾き語っています。
途中でSteveがギターをChrisに任せ、本に目を落とし、ページをめくりながらテキトーに唄ったりと、リラックスしたじゃれ合いのようで、とてもレアな一幕を楽しめました。

Steveの自伝を読みましたが、2017年ロックの殿堂入りの際のお下劣&長尺スピーチ含め、Rickに対してかなり攻撃していましたし、Chris, Jon, Alanに対してもところどころでチクチク言っていたのは、なんとも寂しい限り…。
離婚する夫婦も沢山いるわけですし、こんな蜜月が永く続くのは逆に稀なのかもしれませんね。

この頃はまだ、Jon以外は20代だったんですよね。
私はYesのYも知らない、小学1年生でした。

2023年3月10日金曜日

Yes / Cut from the Stars 20230310新曲ですよ


うーん…。
Billy SherwoodがChrisらしさを一生懸命再現しているのかな。
ファースト・インプレッションはそんな感じです。

2023年3月9日木曜日

Yes New Album / Mirror To The Sky


5月19日に新作リリースのアナウンス!
前作「The Quest」が2021年10月でしたので、約1年半ぶりというハイペースです。

少し前に専属画家(とか言っちゃって😅)のRoger Deanが、FaceBookで新作用アートを動画で公表し、一気に盛り上がりを見せたのですが、こんなに早くアナウンスされるとは。
定番のロゴは70年代のようなシンプルなグラデーション、タイトルはClose to the Edgeを彷彿とさせながらも、よりシンプルに整理されたバブルフォントでデザインされています。

そして明日3月10日には、先行トラックの配信が。
(現時点で、曲名は未発表のままです)

ライヴをメインに長年サポートを務めていたJay Schellenを、正式メンバーに迎えての初の作品となります。

スタジオ・アルバムとしては2014年の「Heaven and Earth」がChris Squire、2021年の「The Quest」がAlan Whiteと、続けてクラシック・メンバー達の遺作となってしまいました。
最後に残るSteve Howeは、70年代から続けている菜食主義のおかげでしょうか、その容貌に反して(失礼!)バリバリ健康そうですが、元気に頑張って欲しいものです。

オリジナル・メンバー不在のラインナップに、各SNSのオフィシャル・アカウントには、未だ否定的コメントが多いですが、私は現在のラインナップに不満はありません。強いて言えば、スタジオ盤の魅力は弱まっていると感じますが、最近足を運んだライヴはとても満足できるものでした。
もはやクラシックの楽団のように、ブランドとして続けていっても良い気がしてきています。

2023年2月28日火曜日

実はそのままでは弾けないRoundabout(スタジオ・ヴァージョンのお話し)

 Roundabout、良いですよね~。
もう聞き飽きたなんて人もいるかもしれませんが、私は初めて聴いた約40年前から、Yesナンバーではイチバン回しているかもしれません。

Yesファンの多くは、フェイヴァリット・ナンバーに「危機~Close to the Edge」「悟りの境地~Awaken」「燃える朝焼け~Heart of the Sunrise」などを挙げ、もしかしたら私くらいの世代(アラフィフ)だと「ロンリー・ハート~Owner of a Lonely Heart」という人も少なからずいるかもしれません。
私も全部好きです!

「Roundabout」は、Yesのアンセムとも言える名曲ですが、どういうワケかフェイヴァリットに推すのが少し気恥ずかしい風潮もある気がしています。
ですが、私は声を大にしてRoundaboutが大好きだと言いたい(笑)。

その理由は…

1)見事なまでの起承転結。

2)その後、数々の名曲を世に送り出したAnderson / Howeコンビの初出曲。

3)アコギが基盤の曲なのに、Chris Squireのブリブリ・ベース名演。

4)スネアとバスドラムの、タイミングをずらしたトリッキーな演奏。

5)Rick Wakemanが参加して初めて制作セッションに携わった1曲。
 (もう1曲はHeart of the Sunrise)

6)コーラスワークが素晴らしい!(ラストの多重録音もステキ)

特に(4)のBill Brufordのドラミングの魅力は抗い難く、甲高いスネアが「そこは入れへんのかい!そこは入れるんかい!」となって、いつ聴いても新鮮な気持ちにさせてくれます。
中間部では性急なサンバ的展開を繰り広げ、ポリリズムのような複雑さをサラッとこなしているのもアツい!
世に出ているライヴ・バージョンの殆どはAlan Whiteなので、Billを堪能できるRoundaboutのライヴ版は本当に少ないです。


短命に終わったスピンオフ、ABWH。Billが奏でるFragileとCTTEに涙。

さて、タイトルについてなのですが、スパニッシュなイントロ後の最初のギター・リフは、全てアコースティック・ギターのハーモニクス音(倍音)によって奏でられています。
問題のコード進行は以下2パターン

1)メインリフ
Em / F#m / G / F#m / G / F#m / Em

2)ブリッジ(Gメジャーのサビ前)
Am / Bm / C / Bm / C / Bm / Am


上記どちらも全てのコード(3音)がナチュラル・ハーモニクスで鳴らされているのですが、1本のギターでそのまま演奏するのは不可能なんです。
Emは普通のチューニングで12フレットで出せますが、他のコードは全てチューニングを変えないと出せません。
(1)のGもハーモニクスで出せますが、3音の高低配列で言うと、正確ではありません)

50年以上前、現代のようにデスクトップでパパッとできるような事ではありません。
おそらくSteve Howeが1ストロークごとにチューニングを変えて鳴らしたのを録って、後で編集したのではないでしょうか??
テープの切り貼り職人とも言われた Eddie Offord (Engineer / Producer)の成せる技だったのかもしれませんね。

Steveはライヴにおいてメインリフのみ、12フレットの123弦、7フレットの234弦、12フレットの234弦(または5フレットの234弦)で代用していますが、音の配列が異なるし、7フレットのハーモニクス音はF#mではなくDなので、スタジオ・バージョンとは異なる響きになってしまっています。
(2)に至ってはレギュラーチューニングでは全く出せないので、普通のストロークで弾いていますね。


Steve Howe本人によるレクチャー。かなり昔の映像ですが、やっつけ感(笑)

後のヴァースでは普通のコードストロークで弾いていますが、どういうワケかコードを変えています。

Em / F#m / G / F#m / G / F#m / Em

が本来の進行で、特に変調している訳でもないのに、響きが似ている下記で弾いています。

Em / A / Bm / A / Bm / A / Em

Trevor Rabinは、通してEm / F#m / Gで弾いていて、音としてはそれでも違和感はありません。(彼の場合は、Steveのスタイル自体を壊すので、それが違和感ですが…)

この辺りはきっと、Steveが練りに練って作ったんでしょうね。
ギター・コードにちょっと耳を澄ませるだけでも、奥が深いRoundabout。

最近は各楽器の音だけを抽出したYoutubeコンテンツもいろいろアップされているので、時間がある時に改めて向き合ってみようと思います。

Bill(ds)→Chris(B)→Steve(G)→Rick(Key)→Jon, Chris, Steve(Vo&Cho)
の順番で各パートだけ聴けます♫