2014年12月24日水曜日

Pink Floyd / Endless River


Pink Floyd最終章。
2005年のLive 8での再集結以降、バンドとロジャー・ウォーターズが少しずつ距離を縮め、互いのソロ活動にゲスト参加するなどロジャーを含めての再結成の期待がありましたが、それは叶いませんでした。
今回の作品はリチャード・ライト存命時、「Division Bell」セッションのアウトテイクを素材とした、彼に捧げたアルバム。すなわちロジャーとの関係が最悪だった時期のマテリアルな訳ですから、ロジャーは必然的に参加しないという事になったのでしょう。

そういえばリチャードが亡くなった当時、ロジャーのWebサイトは無数のキャンドルが灯された壁紙だけとなり、しばらく何の情報も発信されませんでした。彼のリチャードへの哀悼の意の深さ、友情、もしかしたら過去の仕打ちに対する後悔の念など、さまざまな想いがそのような表現として表れたのかもしれないと当時は感じ、私は何の情報もないロジャーのサイトを何度も訪れたものです。
それでも、今回は彼の参加叶わず、残念です。

彼らの存在があったからこそ産まれた「プログレッシヴ・ロック」というジャンルではありますが、私はPink Floydを(良い意味で)プログレとは考えていません。
とてつもなく巨大な存在。音響にもとことん拘った、超上質なポップ・ミュージック。社会の矛盾を鋭い切り口で暴き出す批評性を備え、それが風化しない普遍性を保ち続ける稀有な存在。それがPink Floydなのだと思っています。

バンドの精神はシド・バレットからロジャー・ウォーターズへ引継がれた中で、当然変化していきました。アシッドでサイケデリックな方向から、風刺的な批評性と時に攻撃力の高いコンセプトが、その時代時代の社会を抉り取っていきました。
そのようなグループの精神はロジャーのものだったため、彼が脱退した後の2作品には音楽以外の部分でPink Floydである必然性が感じられなかったのも事実です。

しかし最近になってデイヴ・ギルモアとロジャー・ウォーターズは和解して、ロジャーのThe Wall再現ライヴでもデイヴが客演していますし、ニック・メイスンは元々どちらとも仲良くやっていました。
それを考えると、今出すなら3人でやって欲しかったという想いは拭いきれません。その場合は「対」のアウトテイクなんて使わずに、3人で新しく作って欲しかったですし、リチャードの追悼という事なら、もっと早くにやって欲しかったとも思います。
Live 8での4人の再集結は2005年の事でした。そしてシドは2006年、リチャードは2008年に亡くなっています。

昨年亡くなった、ヒプノシスのストーム・ソーガソンの事まで考えての事だとすれば、それはもう仕方ないですが...

タイミングとしては??と思うところ多々ありますが、それでも本作は最終作と銘打たれている以上、冷静な評価は捨てても良いような気がします。感傷に浸っても良いと思います。リチャード、デイヴ、ニックのインストゥルメンタルに身を任せ、唯一歌付きの最終曲「Louder Than Words」で泣けば良いのです。


このリリースを機に「狂気 / The Dark Side of the Moon」が全米13位にまで再浮上したと聞きました。

真に偉大なPink Floyd、さようなら。。。