Yesはたまに、通して聴く気になれない作品を出す。過去では「Keys to Ascension」のスタジオ録音の部分などは、全く面白く感じられなかった。
11月の来日を前にした新作「Heaven and Earth」も通して聞くのはかなり辛い。
なんとヌルい音の垂れ流し。。。
老練とか円熟とかそういう類いの良いものでは決してない。どちらかと言えば、才能の枯渇、老人のお戯れとしか思えない、意味不明なユル〜い音楽。
作曲には一番若いヴォーカリストのジョン・デイビソンが8曲中7曲に携わっているが、彼はもしかしたら今流行のマイルド・ヤンキーなのかもしれん(笑)。それにしてもこのアメリカ人なりのイエスの解釈がこれで、歴代メンバーも「うんうんそうそう、わかってんじゃーん」なんつってこの音楽を作ったとしたなら、Yesはもうおしましだ。
エッジも立っていないし、影もない。それは最近のジョン・アンダーソンもそうだったかもしれないが、光と影、熱と氷、そういったコントラストがあってこそイエス。もしかしたらそれもファンの勝手な「こうであれ」なのかもしれないが...曲の長さとかそんな様式よりもポップさの中に潜む鋭さがあってこそイエスなんじゃないかと、今作を耳にする度に思う。
これはCruise to the Edgeの甲板で、日光浴をしているデブのジジババための音楽で、ロックですらない。僕はそう思う。
来日公演では「こわれもの」「危機」を再現するらしいが、ビルもリックもジョンもいないのにソロ曲集結の「こわれもの」?? どうすんの〜?
正直、チケットは手配してしまったものの、来日公演には全く興味がなくなってしまった。こちとらチケット代だけじゃなく、旅費もバカにならんのじゃい。
せめて「Fly From Here」くらいのクオリティなら、「こわれもの」「危機」のアンコールとかでやってくれた時に、ほんのちょっとは盛り上がろうものの、「Heaven & Earth」は残念ながら全く聴き込む気になれない。Liveで演って欲しくない。
ここで比較論はしたくないが、Steve Hackettは、演ってる音楽こそ'70年代の古いものではあるが、彼の紡ぎ出す音は完全にロックだ。テクニックや感情などギターに乗せる音色はますます磨きがかかり達人の域に達しているが、それを駆使して、エッジーなノイズをまき散らし、過去の名曲たちを完全に再現しているようでいて、微妙な破壊活動を繰り広げている。
あのギター・プレイは、仮にジェネシスが再結成した場合は、絶対にボリュームを落とされるか、Mixの段階で消されてしまう類いのものだ。(かつてのSeconds Outがそうだったように)
という事で、果敢にも新作を出したYesよりも、過去の素材をネタにライヴ盤を出しまくるSteve Hackettの方に、よりロックを感じた私でございました。
追記:9/4
やっぱりジェフ・ダウンズが「ただ居るだけ」のような環境では、Yesのキーボードとしては全くもって足りない。前作はトレヴァー・ホーンがいて「Buggles」としての存在感が出ていた。それが良いか悪いかはリスナー次第だが、少なくとも今作よりはトレヴァーに個性を引き出してもらっていた。彼がYes Soundに影響をもたらせるとすればトレヴァー・ホーンがいる時に限定される、というのが本作を聴いて判明した。それがない状態で作曲・演奏に関わるとASIAになってしまうので、それは絶対にやめて欲しい。その結果として殆ど作曲に関わらず演奏もほどほどな本作を聴く限り、やはりウェイクマン・ファミリーの誰かとか(オヤジが一番だけど)、ハレンチなイゴール君とか、可能性は無いだろうけどパトリック・モラツとか、もっと我を出せる人にキーボードをやって欲しいなぁ。