2012年5月11日金曜日

Cinema Show

Genesis 1973年のスタジオアルバムSelling England By the Pound(邦題:月影の騎士)に収録されているCinema Show。
この曲の後半を占めるインストゥルメンタル・パートは、堪らなくカッコイイ。
と同時に、いくつかのバージョンを聴く中で、Genesisというバンドそのものやメンバー個々の「その後」を象徴しているようにも感じてしまう、なんとも言えない曲だ。



このパートは、本当に魅力的なアンサンブルを聴かせてくれる。
トニー・バンクスのアープ・シンセサイザーが唄い、フィル・コリンズのドラムが7/8拍子という変則リズムをグルーヴさせ、マイク・ラザフォードが小気味好いカッティングを奏でる。
しかしどういうワケか、この時期サウンドの要であったはずのリード・ギター、スティーヴ・ハケットは、前半のヴォーカル・パートが終わるとハケてしまい、ヴォーカルのピーター・ガブリエルも、当時のインスト・パートでは得意としていたフルートも聴かせず、何もしていない。(フルートが合う曲でもないが。)
後に大成功を収めた3人の形態で演奏している、初めての曲(パート)。
「月影の騎士」アルバム自体が、コリンズのヴォーカル曲もあったりして、後のGenesisを暗示する要素が鏤められている。

ライヴ映像を見ると、ハケット在籍時でも彼はこのパートでは引っ込んでしまっている。
そして1976年当時、サポート加入していたビル・ブルッフォードは、コリンズとのダブル・ドラムで多いに魅せてくれるが、彼は後にこんな事を言っていた。
「クリムゾンはイエスをバカにしていたし、イエスはジェネシスをバカにしていた。そして俺はその全てに属した事がある」
なんとも自嘲的なコメントだし、バカにしていたのは実際に渡り歩いたアンタだけなんじゃないの?とも思ってしまうが、そう言いながらもそれぞれのバンドで最高のパフォーマンスを残している。
彼のGenesisでの短期活動は、後に自分のジャズ道の資金繰りのために、節操無くビジネス・セッションをこなしていく姿勢の、最初の一歩だったようにも思えるが、まだセッション・マンに成り切らずに、バンドの一員としての主張が感じられる。


最後に、僕のお気に入りのカバー・バージョンを2つほど。


こちらは数年前に、アップしていた本人がアカウントごと消し去ってしまったものだが、最近になって他の誰かが改めてアップしてくれている。
ライヴ盤「Seconds Out」バージョンを土台に、1台のシンセでアープ、オルガン、メロトロンと、キーボードパートの全てを再現し、ライヴで端折られた音をも補完している。





こちらはグランドピアノでのカヴァー。David Myersという人を知りませんでしたが、GenesisのカヴァーなどでCDをリリースしているピアニストだそう。
他の曲も聴きましたが、どれもリリカルで心地よく聴けます。