Yesで言えばStarship Trooperの「Würm」、Genesisだったら「Supper's Ready」の「Apocalypse 9/8」、Steve Hackettの「Shadow of the Hierophant」にも通ずる繰り返しのトリッピーな「麻」力が、壮大なスケールで展開されます。
一方、単純に音楽の総合力で一番だったのは、今でもパトリック・モラーツの「Story of i」だったと思っていますが、彼の作品は果たしてYesの1ピースか?と考えると少し違う気がしますね。
スティーヴの「Beginnings」は、アレは別の楽しみですねw
ファンの贔屓目かもしれませんが、冒頭曲の「Doors of Sleep」やラストの「Break Away It All」なんかはメロディ・メーカーとしての才能を発揮していると思います。
しかしスティーヴの場合は歌がアレなんで・・・オーストレイリアァ〜♪
1972年12月、英国はレインボー・シアターで撮影された本作は、ライヴ・アルバムの『Yessongs』とは「Close to the Edge 危機」とエンドロールで使われた「Würm」の2曲だけ同じ音源ですが、他は異なる演奏です。
製作陣にスティーヴ・ハウのお兄さん(Editor: Philip Howeとクレジット)が関わっている関係か、全体的に彼にスポットライトが当たっているような印象ですが、この時期だからこそ、それで全く正解だったといえると思います。(エンドロールでのメンバーのクレジットでも、普段ならJon Andersonとなるべき一番上にSteve Howeが来ています。)
今やテンポは落とすは運指はもたつくはで、全くダイナミズムもカッコ良さも感じられないハウさんですが、'70年代後半には米Guitar Player誌で5年連続ベスト・ギタリストに選出され、殿堂入りしたほどの実力と人気を兼ね備えていたギタリスト、しかも「危機」リリース直後のライヴですから、もう脂ノリノリの時期の貴重な勇姿を観る事ができます。
この時期のイエスは、曲が長かろうが変拍子入れようが意味有りげな歌詞だろうが、完全にロックですね。音楽がドライブしています。
オーディエンスもヘッドバンギングしてるし、アドレナリン放出、カタルシス爆発パワーが漲っています。
改めてこの映像を観て、アラン・ホワイトが入った事でより分かりやすいロックらしさが出たようにも感じます。I've Seen All Good Peopleの後半「Good People」なんかは顕著で、ビル・ブルーフォードが叩いていたアルバム・バージョンやドイツの音楽番組「ビート・クラブ」でのスタジオ・ライヴでは、リズムが「いなたい」というか野暮ったさがありましたが、アランが叩く「Yessongs」や「Classic Yes」のボーナス盤で聴けるライヴ・ヴァージョンでは、単純なリピートのこのパートが見事にグルーヴしています。
個人的にはビルのドラムの方が好きですし、この時期にもしビルが残っていたらという妄想も見果てぬ夢としてありますが。。。(Roundaboutでのスネアとバスドラを入れるタイミングには、未だにゾクゾクします。またABWHライヴでのAll Good Peopleは素晴らしかった)
また、'70年代ならではのライヴ用アレンジも良いですね。「And You And I」の出だしは12弦アコギではなくてスティールギターから始まったり、「Roundabout」もアコギを使わずエレキ(フルアコ)で一曲通したり。
僕が知る限りではAnderson Bruford Wakeman Howe辺りから、ライヴでもオリジナル・アルバムの再現に注力するようになったと思いますが、1曲の中でギターを取っ替え引っ替えするよりも、ライヴのノリで押し切るこの感じの方が好きですね。
僕はブートを聴かないのでこれ以外に同じような演奏があるのかは知りませんが、「Yours is no Disgrace」では後半のフォーク/カントリー調にテンポダウンするパートがカットされ、スティーヴの即興ソロパートからそのままエンディングのコーラスパートに突っ込んでいくアレンジになっていて、これも初めて聴いた当時はシビれました。「The Yes Album」のLPをカセットに吹き込む際に、同じ展開になるようにレコード針とカセットデッキをいじって必死に調整したアホな思い出もあります。
他に特記できる点としては、おそらくコスト的な問題で来日時には持ち込まなかった、背面のLED3面ディスプレイ。今回の映像化で全貌が確認できると期待していましたが、バンドのパフォーマンスを邪魔しない程度の抽象的な、曲のストーリーに沿ったイメージ映像といった感じでした。
Youtubeで見た別日程のReturn of the Giant Hogweedでは、ギタリスト2人のコミカルなCGアニメが流れていましたが、今回見た中にはそういった路線の画はありませんでした。(このセットリストにHogweed無いですしね)
また、ライティングも巧みに制御された見応えのある演出がなされていて、こちらも地元ならではのアドバンテージだったのでしょう。ライティングの華麗さと言えばジェネシスの専売特許でもありました。ド派手になりすぎた本家とは比ぶべくもありませんが、この規模にふさわしい照明がショウに華を添えていました。
セットリストは流れ的には来日時とほぼ同じながら2曲多く、スティーヴの1stソロからShadow of the Hierophant、ジェネシス「静寂の嵐」からEleventh Earl of Marが演奏されています。
そして、キーボードのロジャー・キング。スティーヴ関連のエントリーでずっと書き忘れていましたが、この人は重要です。淡々としていますが、このバンドの要ですね。Firth of Fifthは、トニー・バンクス本人もライヴではイントロのピアノソロを端折ってましたし、前Revisited時のジュリアン・コルベックも同様で、更には間奏のシンセソロ部分も全く異なるアレンジになって、バンドの即興パートになったりしていましたが、ロジャーはイントロ、間奏のシンセソロどちらもしっかり忠実に聴かせてくれました。
トニー・バンクスを再現するスキルを持ち、かつスティーヴの盟友として活動する。長年の苦労が報われるビジネス・パートナーですね。
これだけ聴かせてくれると「In the Cage」「Cinema Show」あたりも聴きたいと思ってしまいますが、Cinema Showはスティーヴの存在が小さい曲だから難しいかな。。。
10月、ワールド・ツアーの最終地としてイギリスに戻った一行は、セットリストをリニューアルし、The Return of the Giant Hogweed, The Fountain of Salmacis, The Carpet Crawlersを演奏したそうです。この時期の公演も、これまた伝統のロイヤルアルバートホールのものがソフト化される予定と聞いています。待ち遠しいですね。