2022年12月17日土曜日

ブログタイトルを変更しました。

1980年に突入しようという頃、後に名プロデューサーとなったTrevor Hornは、Bugglesというユニットで「ラジオスターの悲劇 / Video Killed the Radio Star」を唄い、MTV時代の幕開けを告げました。


2000年にはそのパロディで「ビデオスターの悲劇 / Internet Killed the Video Star」なんていう動画が一部で話題になりました。


唐突なイントロですが、ブログタイトル変更のお知らせです。

Windowsではまだ辛うじて残っていますが、MacやiPhoneからiTunesが消え去ってから、もうかなりの時間が経過しています
このブログは超不定期で、年単位で放置してしまった闇実績もあり、タイトルは既に使っていない、古い「iTunesで聴いています!」のままでした。

開設してから今に至るまで、私の音楽に向き合うスタイルも変わり、今では殆どディスクを買う事はありません。そもそも「iTunesで~」というタイトルで始めた事からも、私が物質的なコレクター道から足を洗った事、オーディオにも拘っていない事をお察し頂けるかと思います。まぁ、MacもPCも良い音で再生してくれるし、Bluetoothスピーカーも良い音鳴らすので、それで充分です。

近年はサブスクもSNSもかなり充実していて、メジャーどころだけでなくニッチな音源も殆どAppleMusicやSpotyfy, AmazonMusicなどで聴けてしまうし、ブートレグ音源やレア映像もYouTubeを彷徨っていれば、だいたい見つかります。
ユーザーにとっては利便性が飛躍的に上がった一方で、楽曲提供側のアーティスト、作家にとっては受難の時代とも聞きます。CDは売れず、サブスクでリリースしてもアルバム単位では聴かれず、各サービス企業側に取られるマージンも小さくなく、ライブ収益だけが頼りだという話しも。最近になって、ようやくコンサートも普通に興行されるようになってきましたが、この2年前後はコロナ禍で大変でしたし。

CD/レコード・ショップに行く醍醐味は、本来の目的とは別の、思いも寄らない発見がある事だと思います。ジャケ買い、試聴、店員さんのレコメンドPOPなど…。
ですが、街中のCD店はめっきり減ってしまいました。1990~2000年代初頭にかけては、CDショップ黄金期。複数の外資チェーン企業が、首都圏だけでなく地方都市にも隈なく出店していきました。その影響で、特定の層向けに全振りしていない「普通の」個人店は駆逐され、国内企業のチェーン店も苦戦を強いられた側面があります。ただJ-POPのバブル期でもあったので、外資と国内企業の共存が可能な時期でもありました。

そして今は外資/国内企業のチェーン店ともに、首都圏の旗艦店以外はほぼ撤退し、ほそぼそと続けている店もアニメ、アイドル、K-Popに特化して、以前のようなあらゆるジャンルを発見できる場ではなくなってしまいました。

サブスクやYouTubeは探し物に簡単に辿り着く利便性がある反面、想定外の発見という楽しみは殆どありません。僅かに「あなたにおすすめ」的な誘導をしてくれるので、探し物に近い範囲での微妙な発見があるのが、せめてもの救いでしょうか。

今は何でしょうね…「Subscription Killed the CD Store」とでもいう感じでしょうか…。
かくいう私は、まんまとその潮流に乗っている訳です。まだちょっと早いかもしれませんが、終活の準備という事で、これ以上物を増やさないように心がけています。

2022年12月14日水曜日

今さらELP

Still...You Turn Me On 個人的には「恐怖の頭脳改革」に収録のスタジオ・ヴァージョンよりも、アコギ弾き語りライヴ・ヴァージョンの方がグッときます。(この動画、Gregがくっちゃくっちゃしながら唄っているのが気になりますが…笑)

Lucky Man 代表曲のひとつとして挙げられる事も。Gregが初めてギターを手にしたティーン時代に書いた曲としても有名です。

今さらですがELP、しかもGreg Lakeのアコースティック小品にハマっています。密度の高い甘い声、哀愁と優しさ漂うメロディ、アコギの調べ。ELPといえば3人ともが個性と才能に溢れた集団でしたが、特にKeith Emersonに耳目が行きがちなユニットでもありました。ワイルドなパフォーマンスと演奏という点では、Carl PalmerもKeithと競っていましたね。そんな中で若干控えめな印象ではありますが、Greg作の小品も実に味わい深く、もう一つの大きな魅力です。

今なぜ改めてELPを聴こうと思ったかと言えば、前エントリーのASIA in ASIAを観賞したのがきっかけ、としか言いようがありません。あの来日公演は、直前のJohn Wetton → Greg Lakeというフロントマンの交代劇があり、当時 音楽雑誌などの評判は、決して良いものではなかったと記憶しています。特に急遽助っ人加入を余儀なくされたGregの粗探しばかり取沙汰されていました(美青年が肥えた、歌詞を覚えられずプロンプターを見ながら唄った、このライヴが終わったら直ぐに脱退してしまった、など)。
埼玉の片田舎に住み、ライヴに行けなかった当時中学生の私は、約40年の時を経て遂にその全貌に触れる事ができました。実際には80年代にレンタル・ビデオで観ましたし、最近もYouTubeで観る事も出来たのですが、映像も音質もリマスターされた作品に触れ、単純に「Gregスゲー」となったわけです。

 私にとって1970年代のプログレ全盛期は、全て1980年代以降の後追いです。80年代の私はほぼ学生期。小遣いを貯めたりバイトをしてレコードを買っていました。当時は貸しレコード屋なんていう店も流行っていましたが、16歳くらいまで家にはヘボいラジカセしか無かったので、殆ど利用しませんでした。それに、同時代の話題作、ヒットチャートも欠かせなかったので、旧作は2~3ヶ月に1枚程度、所謂名盤と呼ばれる作品を買うのがやっとでした。ただ、当時はテレビもFMラジオも洋楽番組が沢山放送されていて、古い音や映像に触れる事ができたので、それらから受けた影響も大きなものでした。

そんな私が後追いターゲットとして最優先したのはYes。次いでKing Crimson, Led Zeppelinでした。その当時から音楽雑誌では、10年~15年前の作品を「名盤」として紹介してくれるコーナーもあったので、Pink Floyd, Genesis, Rushなどは、そんな感じでピックアップされたものだけを買って聴いていました。

こうして歳を取ると10~20年前、ヘタすりゃ30年前ですら、つい最近のように感じますが、10代にとってのその差は、とてつもなく大きな隔たりに感じられたものです。だって、物心もついていないガキンチョ、もしくは生まれてすらいない時代の話ですからね。

でELPなのですが、結局レコード時代には1枚も買う事がありませんでした。TV放送されたいくつかの映像には感動しましたし、FMエアチェックした曲も少なからずありました。その当時は、Keith Emersonが音楽を担当した映画「幻魔大戦」のテーマ曲も、ラジオでよくかかっていた記憶があります。ともあれ、ELPをしっかり聴いたのは、CD化された90年代にようやく、という感じです。


これはDeep Purpleにも通じるものがあって、特に背伸びしたい10代男子にとっては、ELPとDeep Purpleはちょっとおバカに感じられたのです(笑)。私は結局いまに至るまで、どのバンドでも歌詞を深堀りする事など殆どしないおバカのままなのですが、若かりし頃はちょっと賢くニヒルに感じられる雰囲気が好きだったのだと思います。だから、この偉大な2バンドに関しては、後にCDを買ったものの、1枚もレコードを持たず仕舞いで終わってしまいました。

それでも、10代の頃からの、ELPのお気に入りの曲は幾つかありました。

コレとか


コレとか(結局、私はコープランドの曲が好きって事かな?)

この管弦楽共演版は、1985年にFMで聴いて以来、ずっと好きなヴァージョンです。

KeithもGregも2016年に他界し、私は彼らのライヴを一度も観る事ないまま、機会は永遠に失われてしまいました。遺された音源を聴き続ける事も大切ですが、生の演奏は可能な限り体験しておいた方が良いですね。

2022年11月18日金曜日

ASIA in ASIA ~ Live at the Budokan Arena Tokyo Japan 1983



 このライヴは私にとっては因縁深い事件でした。1983年、中二の秋、人生で初めて行きたいと思い、行けなかったライヴ。

後に出たビデオは高額で買えず(ほぼ同じ年代に出たYes / 9012Liveを選んでしまいました!どちらも¥10,000以上!学生には厳しい価格設定でした)、レーザーディスクは再生ハードさえ買えず、高校に上がってから懐かしのレンタルビデオで1度だけ観て、そこから悠久の時を経て、最近になってやっとYoutubeで再会できたライヴ。

これに行けなかった事で、私の初コンサートはこの5年後のYes ~ Big Generator Tourとなり、その後もYesの来日には何度も足を運びましたが、ASIAは結局ただの一度も観ないまま、John Wettonが他界してしまいました。この時だけスポット参加したGreg Lakeも既に鬼籍入り...

そして約40年の時を経て、ようやく手にしたこのボックスセット、我が家のBlu-rayレコーダーが故障したままなので、画も音もレストアされたという映像はまだ観る事ができていません…

しかし、です‼

MTVが総力を結集し世界中に衛星生中継した12/7、その前日の12/6のオンボード音源が2枚のCDとして収められ、その音質、演奏ともに最高すぎて、それだけで既に『刻への浪漫(敢えて中二っぽい当て字・笑)』を味わう事となりました。

封入特典も豪華で、当時の若々しいメンバーの写真を使ったポストカード、コンサートチケットやバックステージパス、パンフレットの復刻版まで入っています。くどい繰り返しですが、行けなかった私としては最高のパッケージです。

今のように情報が簡単に入らなかった当時は、音楽雑誌だけが頼りでした。そこには評論家の好みであったり、故意か不意か誘導的な感情の文体であったり、実際に体験できなかった読者は、それを読んで想像するしかありませんでした。

来日直前に参加オファーのあったGreg Lakeの後評判は、あまり良いものではなかったと記憶しています。ですが、このCD2枚を聴いて、良くやった!!と拍手を送りたくなりました。John Wettonよりキーが低いために、楽曲そのものを彼の声域に合わせなければならなかったそうですが、脂が乗っていた当時の演奏を聴いていると、歌もアンサンブルも素晴らしいし、テンポも良いし、下げたキーはさほど気になりません。

映像に収められなかった2度目のアンコール「Cutting it Fine」は、確かにギターイントロが終わった直後に不自然な転調が見られますが、「ん?」と感じたのはそこくらいです。
この2度目のアンコールのセトリは、長らく謎に包まれていたそうです。既出&今回レストアされた映像作品は、当時の生放送に合わせた状態のまま最初のアンコールSole Survivorで終了します。
2ndアンコール最終曲は、アルバムから洩れたのが不思議なほどの名曲Daylight。Cutting it Fineからの流れも感涙モノです。

Greg LakeはELPも含め、遂に一度も観ることなく他界してしまいました。
John WettonはAsiaで観ることは叶いませんでしたが、1996年のSteve Hackett and Friendsで観られましたし、その際はアコースティック・アレンジのHeat of the Momentを聴く事ができました。
存命メンバーの中ではCarl Palmerだけまだ一度も観ていません。
Steve爺さんはABWH以降、老いの進捗を確認するように何度も観てきました(私は彼の長男Dylanと同い年ですが、共に老いたと言うべきか。笑)。
GeoffはYesで3度ほど。Drama, Fly from Hereはとても好きな作品ですが、彼はやはりAsiaの印象なのでYesで観ても有り難みが...笑。

まだ聴き込んだと言えるほどではありませんが、一番驚いたのは、メロトロンが意外なほどふんだんに使われていた事です。Geoffのキーボードといえばシンセが第一に思い浮かび、加えてオルガンとピアノを印象的に使うという認識でした。
Steveのギターも太く、速く、よく言われるモタりも、まだ「タメ」としてカッコよく感じられる程度で、なかなか聴けないくらいロックしているのがイイ!
Carlの走るドラムは疾走感を持ってグイグイ牽引していくのがとても気持ち良い!
そしてGreg!前任者のJohnとはKing Crimsonの先輩後輩の関係でもあり、歌唱、ベースプレイ、存在感は全く遜色ありません。歌詞を覚えきれず、プロンプターで表示させていたそうですが、そんな情報要った?っていうくらい朗々と歌い、自分のものにしているように聴こえます!プロですね〜!

rrrrRock no Youi, Iidesuka⁉︎ (Are you ready to Rock’n’Roll!?)

2021年10月15日金曜日

Genesis Piano Project / フル・アルバム・リリース!!

この数年、YouTubeで観られるライヴ映像に、ハマりにハマったのが、このGenesis Piano Projectです。

Angelo Di LoretoとAdam Kromelow, 二人のピアニストによるユニットで、これまではライヴとYouTube配信で活動してきました。

そんな彼らですが、遂にフル・アルバムがリリースされました。

収録曲はもちろん全曲Genesisのカヴァー。2nd「侵入」から7th「静寂の嵐」までの楽曲から選曲されています。

Apple Musicでは10/10にフル・アルバムの配信がスタート。その少し前には「サルマシスの泉」が先行配信されていました。

The Fountain of Salmacis

レコーディング場所はなんと!

Genesisのオリジナル・メンバーが、学び育った寄宿制学校「Charterhouse」にて実施されたとの事です。YouTubeで数曲、その様子を観る事ができます。

Firth of Fifth / Supper's Ready

Stagnation

YouTubeでしか体験できていませんが、彼らの魅力はライヴと思っていました。
オリジナルへのリスペクトが強く感じられる、最小限のアレンジによる再現力、きらびやかなのに邪魔にならない高い演奏技術による装飾。そしてライヴならではの胸アツなドライヴ感と、二人の阿吽の呼吸には舌を巻くばかりでした。

彼らの神髄はライヴにある、と思うのは今も変わりありませんし、今回のアルバムもオーディエンスが居ないだけで、ほぼライヴなのだとは思います。
ただやはり、スタジオ録音と同義の作品として制作したのでしょう。いままで公開されていた映像での演奏に比べると、よりきっちり纏めてきた印象があります。
ただそれは全く悪い意味ではありません。
1曲1曲に、一音一音により没入できる仕上がりになったように感じます。

彼らの音楽を聴いていると、Genesisの音楽性の高さを再認識させられますし、ピアノ曲になっても全く違和感なく、すんなりと耳に、心に入ってくるのを感じます。そして特に、Tony Banksの作曲能力の高さに唸らされます。
Genesisは、特にプログレ期にあってはPeter Gabrielの圧倒的存在感や、今もその音楽を継承し続けているSteve Hackettの存在にスポットが当たりがちです。それは勿論間違いではないですし、私もメンバーのソロ・キャリアに関してはPeterとSteveばかり追いかけてきました。

GenesisのピアノカヴァーはGenesis Piano Projectだけでなく、さまざまなピアニストによってリリースされてきましたが、それらを聴いて改めて思ったのは「Tony Banksすげー!」でした。彼の才能があったからこそ、ピアノ曲としても受け継がれ続けているのだなぁ、と思います。

最後に、彼らの演奏の中でも白眉と思う、イタリアでのライブ映像を貼って締めにしたいと思います。
Cinema Show (Pt.2)

2021年10月3日日曜日

Yes / The Quest

なんだかんだ言って、めちゃめちゃ楽しみにしていた7年ぶりの新譜です。

10/1 に日付が変わった0時、直ぐにApple Musicにアクセス。4時近くまでリピートして聴き込みました。そして3日経つ今も、時間があれば聴いています。とはいえ、まだ印象が固まりません。スルメ・タイプの作品かもしれません。

オリジナル・メンバーは3人生存していますが、現ラインナップには含まれません。

残念には思いますが、個人的には現メンバーに不満はありません。

Jon Anderson復帰を望む声は絶えませんが、いろいろ無理なのでしょう。

Bill Bruford & Tony Kayeも、本人たちの状況や意思としても無しです。

ギターのSteve Howeがプロデュース。Geoff DownesやBilly Sherwoodという、プロデュース業に長けたメンバーがいる中、遂に最長老がYes作品の総監督を務めました。

全11曲中、Steve作が6曲(Jon Davisonとの共作1曲含む)。そのためか、彼のギターはかなり楽しめます。時としてライヴで感じるようなヒヤヒヤもなく、名演を聴けます。エレクトリックは70年代中期を想起させるような緊張感や抒情性がありますし、幾つもあるSteveのトレードマーク「ペダルスティール」「ポルトガル・ギター」なども随所で印象的に響き渡っています。

アコースティック・ギターも冴えていて、澄んだ音色が響くさまは、かつてのWindom Hill作品のようです。

通して聴いた印象として、先行配信の「The ice Bridge」は、結果として他人の曲を転用したモノ、という事もあって異質だったという事。エッジが効いていて、キーボードも大活躍で、リードトラックとして否が応にも「Yes復活(何度目のコピーだ)」の期待感を煽る佳曲でした。

ですが、配信第二弾「Dare  to Know」で「ん?」となり、アルバム全体としては、そちら側の印象が強い、とても穏やかな作品として世に出ました。

そういう意味では前作「Heaven and Earth」の延長線上にあると言えるかもしれません。また、Billyがいる影響か(良い意味です)「Open Your Eyes」「The Ladder」、はたまた彼のバンドWorld Tradeとの近似性を感じる箇所も少しあります(The Western Edgeが顕著です)。

個人的に印象的だった曲を下記に綴ります。

- The Ice Bridge: 

作者問題も含め、過去のエントリーで書きましたので、今回は別の切り口で。

Cパート「Interaction」で繰り広げられるギターとキーボードのインタープレイは、本作一番の聴きどころではないでしょうか。

うろ覚えですが、2003年頃のライヴで繰り広げられた「South Side of the Sky」での、Steve & Rickの応酬を思い出します。

また、曲の骨組となったキーボード・パートは丸っきりFrancis Monkman / The Dawn of an Eraですが、JonDが作った歌メロは完全なオリジナリティがあり、そのクオリティも歌唱も最高です。

- Leave Well Alone: 

琴のような弦楽器のイントロはGTR「Here I Wait」を思い出します。

SteveはASIA「Heat of The Moment」で琴を実際に使用していたので、この曲でも使っているのかもしれません。

SteveとJonDが低いテンションで、ダーク&トラディショナルなメロディをユニゾンで歌うさまはミステリアス(笑)。

そしてCパートの"Wheels"は、Würm (Starship Trooper) 再び!という曲でした。もっとスロウ&メロウ、そして三拍子のワルツですが、3コードのギターインスト・パートという点で「Würm pt.2」と言ってもよさそうです。

- Mystery Tour: 

曲名の通りThe Beatlesに言及しており、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの名や彼らの曲名だけでなく、ブライアン・エプスタイン、ニール・アスピノール、マル・エヴァンズといった重鎮関係者の名前まで出てきて、音の方では「Strawberry Fields Forever」でお馴染みのメロトロン(フルート音)も出てきます。

この曲と次曲「Damaged World(Steve 作/歌)」を聴いたとき、単なるイメージなのですが、かつてのスーパー・グループ「Traveling Wilburys」が頭に浮かびました。気の抜けた軽快さというか、Yesもそういう季節に来ているんだなぁ、というか…。2曲ともSteveの曲です。

Yesは初期メンバーは特に、The Beatlesの影響下にありました。1stアルバムでは「Every Little Thing」を、後のライヴでは「I'm Down」のカヴァーが演奏されてきました。Alan WhiteはJhon Lennonのソロ作で仕事をしています。Steveも過去のインタビューで、何度もThe Beatlesに言及していたのを読んだ記憶があります。

CD2は3曲全てSteve作(1曲はJonDとの共作)という情報があったので、リリース前はいつものSteveのギター・ソロ的な「おまけ」かなと思っていましたが、蓋を開けてみると本作では意外にもギター・インスト曲がなく、全曲がバンド・アンサンブルでした。

SteveとJonDが、単独、共作合わせてそれぞれ6曲提供。GeoffとBillyはJonDとの共作でそれぞれ2曲だけ。この2人は作曲面/演奏面ともに、もっとしゃしゃり出ても良かったんじゃないか、とも思います。Alan Whiteもそうです。在籍歴は誰よりも長いのだから…。

ドラムに関しては、Alanはどれだけ叩けているのか、Jay Schellenとの割合など気になるところですが、正直分かりません。


総評としては、Steveのカラーが強く、彼のソロ・アルバムをYesとして仕上げた、という印象が少なからずあります。ただ、Yesは過去にもそういった経緯の作品があるグループなので、それでも良いのかもしれません。

新バンドだった筈の「Cinema」を、Yes再結成に寄り切った「90125」。

Billyと作っていたChrisのソロ・プロジェクトを転用した「Open Your Eyes」。

Bugglesの積年の恨みを晴らした(笑)「Fly From Here」(および ~Return Trip)。

今回はコロナ禍で、英米に分かれているメンバーの行き来も難しい中、作品として昇華させたSteveが頑張ったという事ですね!


良作と思いつつも、いまだ私なりの評価が定まらない本作をしっかり受け止めるために、過去作も少し聴き直しています。

・Heaven and Earth (2014)

・Tormato (1978)

雰囲気が似ているこの2作品を知り直す事で、何か見えるような気がしていますが、久しぶりにTormatoを引っ張り出したら、過去に見えなかった部分が色々見えてきて、改めてTormatoの良さを知る、という結果になりました(笑)。

2021年9月1日水曜日

Yes / Dare to Know

 


まもなくリリース予定のNew Album「The Quest」から、9/1に2曲目「Dare to Know」が配信されました。

今回はSteve Howeひとりの作詞作曲。良くも悪くも実にSteveらしい、まろやかな曲です。オーケストラも導入されて、インスト部分だけ聴いているとムード音楽のようです。

ギター類はふんだんに使われています。エレクトリック、アコースティックは当然の事、ペダルスティール、マンドリンも聴こえてきます。
ただ、円熟味というかなんというか、前面に出る感じは全くなく、Steveによる弦楽器のオーケストレーションがベースにあって、そこにバンドの音と管弦楽を乗せた、そんな感じの曲です。

キーボードは先行曲「The Ice Bridge」と異なり、かなり控えめ。うっすらとオルガンの白玉が聞こえる程度です。

そして、Steveのヴォーカルもふんだんに(笑)入っています。
Jon Davisonとの、オクターブが違うユニゾンです。
彼のヴォーカルは誰かと一緒だと悪くはないのですが、あまり前面に出てしまうと、いただけません。今回はギリ良しとしましょう(笑)。

Steveは誰かとタッグを組んだ時やプロデューサーが他に居る時の方が、コンポーザーとしての才能が発揮されるように思います。ひとりでは起きえない化学反応とでも言うのでしょうか...
Yes初期、Jon Andersonと作ったRoundabout (こわれもの), Close to the Edge (危機), Awaken (究極) などは不朽の名曲となりました。John Wettonと作って一緒に歌ったOne Step Closerも、ASIAとしては地味な1曲かもしれませんが、実に良い曲です(元アイディアはSteveがYes前に在籍したBodast時に、既にありましたが)。
Steveひとりの作でも、Trevor HornプロデュースのHour of Need (フライ・フロム・ヒア)は、素朴ながらとても良い仕上がりだったと思います。

一方でAbilene (トーマト / Don't Kill the Whale, c/w)は、とてもユルユルで、アルバムから弾かれシングルB面が関の山、というような曲でした。彼のソロ・アルバムも特に歌モノは、同じような雰囲気が多いように感じます。
この新曲は…申し訳ないのですが、どうもコッチ寄りの気がしてなりません。
アレンジやプロダクションはとても頑張った跡が見られますが、曲がユルくて魅力に乏しい…。

The Ice Bridgeは、パクリ問題(解決済み)や、シンセ音の古臭さなどを差し引いても、エッジの効いた聴きごたえのある曲でしたので、Dare to Knowには、アルバム直前に少しがっかりさせられてしまいました。

2021年8月10日火曜日

Yes / From a Page

このミニアルバムは、すっかり見落としていました。リリースは2019年です。

2021年7月に配信された新曲「The Ice Bridge」をAppleMusicで探していた際、ジャケット・アートの色合いが似ていたために間違えて聴いたのが、きっかけでした。

2011年のFly From Hereに際し、原曲に携わったDramaラインナップに近づけるため、Geoff Downesが復帰。そのあおりを喰らって弾き出されてしまったRickの息子Oliver Wakeman(公式にはそんなアナウンスはありませんでしたが、どう考えてもそうとしか…)。

Oliver在籍時には残念ながらスタジオ・アルバムの発表はありませんでしたが、2015年のChris逝去に端を発し、お蔵入りだったChris存命時のスタジオ音源をOliverが仕上げてくれたようです。

2010年のFly From Hereセッションで作られた4曲という事ですが、殆どがOliver作曲だったからなのか、アルバムには収録されませんでした。しかしいずれも、実にYesらしい佳曲が並んでいます。何よりOliverの演奏がお父さん譲りで、それだけで「Yesだなぁ」と感じられます。ミニモーグやオルガンの音色も良いですし、リリカルなピアノが本当に素敵です。

作詞作曲の実績も残せず、声色のためだけに利用された感の強いBeoit Davidも、良い仕事をしています。「The Gift of Love」では作曲者の一人としてクレジットもされています。Jon Andersonにそっくりな声を出したかと思えば、少し太いオリジナリティのある歌声も披露しています。特にOliverが2013年にGordon Giltrapと共同名義でリリースしたアルバムにも収めた「From the Turn of a Card」での歌声は、JonAともFly From Hereで披露された声とも違い、Oliverのピアノとのデュエットがとても美しい名曲に仕上がっています。

僅か4曲のミニアルバムですが(抱き合わせのLive from Lyonは置いときます)、Yes本来の魅力のひとつ、「歌モノ」としても三声ハーモニー、リードとバッキングの掛け合いなどが随所に見られ、基本要素をしっかり取り込んでいるのが解ります。

Steveのギターも、スタジオでは良い意味で個性を発揮してYesらしさを演出していますし、Chrisのベースは控えめな印象ですが、バッキング・ヴォーカルの存在感でYes印をしっかり刻んでいます。

ここまで書いて、もはやYesに求める事はProgressではないなと、改めて思いました。ライヴだったら(期待できませんが)70年代のようなドライヴ感を、スタジオだったら良い楽曲、良いアレンジ、そしてYesらしさを再現して欲しいと思います。私が思うYesらしさとは、各楽器の高い演奏技術、ジャンルを超えた音楽性、美しいメロディと厚いハーモニー、トリッキーなのに自然に聴かせてしまう構成力、そして意味不明な歌詞(笑)

そういう意味でOliverは、(もしかしたら古参メンバーよりも)Yesらしさとは何かを理解した上で、この4曲を仕上げたのだろうな、というのがよく解る作品です。

因みに在籍していてもいなくても、よく絡んでくるBilly Sherwoodは本作では何処にもクレジットされていないようですが、そこはかとなく彼の香りを感じるのは私だけでしょうか…